エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

デジブック 『挑戦...カムイ岳』

2011年05月22日 | 山紀行 (日高山系)
デジブック 『挑戦...カムイ岳』        ※5/22 再更新しました・・

遥かなる日高の稜線へ・・・神威(カムイ)岳 (1756m)
(4泊5日計画で臨んだナメワッカ岳も天候に勝てず撤退・・・)

■ 山 行 日   2011年4月29日(金)~30日(土)   1泊2日
■ ル ー ト    戸蔦別川林道~カムイ岳北東尾根~カムイ岳 往復
■ メ ン バ ー
    夫婦登山 №14
■ 登 山 形 態   ツボ足&スノーシュー
■ 地 形 図   1/25000地形図 
              「札内川上流」「イドンナップ岳」「幌尻岳」「札内岳」

■ コースタイム 
<登り>
4/29   9:50  戸蔦別川林道ゲート前出発
       10:15  北東尾根取付き
       12:45  C1129
       15:10  C1488 テン場 C1
  (登り 北東尾根取付き~4時間55分)

4/30   8:30  テン場 C1出発
        9:20  カムイ岳肩(1680m)
       10:00  カムイ岳(1756m)頂上
  (登り テン場~1時間30分)
       10:10  下山開始
       10:35  カムイ岳肩(北東尾根分岐) ~10:45 休憩
       11:20  テン場
      (下り カムイ岳~1時間10分)

       12:30  テント撤収、下山開始
       14:57  林道出合(北東尾根取付き)
       15:35  登山口(ゲート前駐車帯)
   (下り 林道出合まで2時間27分)



カムイ岳頂上から望むエサオマントッタベツ岳と右奥遥かなるナメワッカ岳


★ リベンジ計画・・・

 昨年は4/28の出発。やはり4泊5日の計画で臨んだナメワッカ岳だった。
しかし、戸蔦別川林道の除雪は北東尾根から約8キロ手前までで先には多くの残雪があった。夜遅くに現地に到着するも天候は雪・・・翌朝には20cmを超える積雪で天候も雨に変わった。この後の天気予報も良くは無くこの場での停滞案もあったが、敢え無く計画は断念・・積もった雪にハンドルを取られながら無念の帰宅をした悔しい思いは今も記憶に新しい。

 何としても北東尾根を登り未踏カムイ岳とナメワッカ岳のピークを踏みたいと、この日からのリベンジ計画は始まっていた。


★ 悪い予報・・・

 2年連続GWの休暇を取り、まずは日程の確保は終えた。なのに天気予報は変わり易い天候と報じアタック予定の5/1と5/2のいずれも雨予報と最悪だった。ただ、4/29~30は晴れ予報だったので計画を決行し出来ればカムイ岳の登頂だけでも・・と出発した。直前の林道情報がMLで飛び込み「北東尾根取付きの約1キロ手前まで車が入れる」ことも後押しとなった。

★ ナメワッカ岳(1799m)・・・

ナメワッカ岳と聞いて「どこにある山」と分かる人は少ないと思う。
 登山道の無い遥かなる日高山脈の奥深い稜線に位置するその山は、あまりにもマイナーで登る山の対象から外れていると言うのが一般的かも知れない。登頂には幾つかの沢から登りハイ松の厳しい稜線上をひたすら歩くか残雪期に今回のような計画でやはり長い稜線を辿る方法しかない。どんなに健脚であろうと日帰り出来る山ではなくある程度沢登りの技術や雪山の経験が必要である。

 一般的な岳人(登山者)が憧れる遥かなる日高の山は、登山道のある「カムイエクウチカウシ山」や「ぺテカリ岳」そして「1839峰」が有名であるがここですら中級以上の登山技術と体力が勝負の山であり山中テント泊や小屋ベースの泊り山行が一般的である。ナメワッカ岳はその延長線上にある山で地図とコンパスを駆使しながら体力と我慢の勝負で臨む山である。日高にはそんな山が数え切れないほど沢山ある。


★ 山行記・・・

<計画>
 4/29 登山口から北東尾根1488付近 C1
 4/30 C1~カムイ岳を登頂しエサオマン肩付近でC2
 5/ 1 C2~エサオマン~ナメワッカ分岐~ナメワッカ岳 往復 C2にてC3
 5/ 2 C3~往路を下山
 5/ 3 予備日


4/29(金)
 自宅を6:10に出発。すぐに無料の高速に乗り十勝清水で降りる。そこから戸蔦別川林道出合まで1時間ほどで更に13キロほど進んで「びれい橋」を渡り600m程行くとゲートがあり登山口となる。9:13に着いた。自宅から僅か3時間である。
 広場には先行者と思われる3台の車が駐車してありゲートから先の林道には大勢のトレースがあって心強かった。
9:50 久々に背負った重装備のザックがすぐに肩に食い込み一抹の不安と共に出発する。残雪のトレース横に大きな熊のトレースと芽吹いたばかりのふきのとうを見て日高の春をすぐに感じ取った。
10:15 エサオマン橋を渡ってすぐに北東尾根の取付きに着く。残雪は少なく北斜面にかろうじて雪がある・・程度である。それでもトレースが導く踏み跡を登ればすでに階段状になっていて不安なく高度を稼ぐ事が出来たのは嬉しかった。
 自分たちのペースで一歩一歩登ると高度計も次第に700m、800mへと変化していることも嬉しかった。この急斜面をこの荷を背負ってよく登れるものだ・・と自分でも感心するほどだ。800mを過ぎる頃から斜面から顕著な尾根上に上がり残雪も次第に多くなる。30分に一度はザックを降ろし血流の止まった肩から上に栄養を戻す。1000mを過ぎると尾根全体にたっぷりの残雪があり斜度を増すように雪面を見上げてため息をもらす。
 12:45 C1129では、先行者のテン場跡があり「今日はここで止めようか」なんて言う発想も飛び出す。北風が強くみぞれ混じりの雪にザックとジャンパーを濡らす。上部はガスで見えなくなって「このまま登って大丈夫か?」と不安と弱気が頭一杯のエバだ。チーヤンは淡々と先行し足の止まった私を待っている。
「今日登っている先行者がこの先に居る」と思うと少しだけ勇気が湧いてきてまた足を前に進めることが出来た。
 14:45 1350mの平らな稜線に辿り着いた時は芯からホッとした感じで「もう登らなくてもいい」と安堵した。そう考えるとなんだか力が出て来て逆に足取りが軽く感じるのは私だけか・・。
 景色はあまり良くない。南正面にどっしりとした札内岳が頂上部を隠して確認出来、エサオマンはカールの一部が見える程度だった。風が一層強くなり早くテン場を探そうと思った。
そして15:10 地図上のC1488付近と思われる平らな場所を選んでテン場に決め、5時間以上背負ったザックを降ろす。

 幸い一時的か風は弱くなり絶好の設営タイムとなってくれる。大きさを決めスノーソーで切り込みを入れて雪のブロックを切り出す。ブロックを積み上げ、ある程度の高さと深さを決めたらテン場を平らに踏み固めていく。安着用のビールを雪に埋め最後にテント本体を設営した。
1時間ちょっと掛けて安住の中に潜り込む。

 16:40 安着の儀・・・冷やしたビールはあっという間に咽喉から胃袋へ 既定の一本がここで終了する。後はウイスキーで儀は続きチーヤンの食当で早々に夕食へと移行した。山で味わうビール一杯のためになんと重い荷を背負うのか「バカ」としか言えない。


★ 想定外・・・

 一向に収まらない強風と吹き上げるザラメ状の雪は想定外だった。予報では晴れのはずなのに・・。トイレで外に出るとかろうじて稜線が見えてカムイ岳の肩となる主稜線との出合直下に先行者のテントを確認した。きっとこことは比べようが無いほど風が強いだろうと想像出来る。テン場での一夜は眠ることが出来なかった。消灯後も風は一層強まりテントを叩くように雪がぶつかる。揺れるテントは音を立てテントごと飛ばされる恐怖さえ覚えた。朝までずっとこの調子である。遠くの波が少しずつ近寄づくような打ち寄せる風の音が聞こえる。少しずつ少しずつ近寄る音が大きくなったと思う瞬間、一気にテントに襲いかかった。ドドーンという津波に襲われたような衝撃が大きくテントを揺らした。一定の周期があるように繰り返し時にピタッと音が消える・・。

起床時間が過ぎても起きることは無く目を開けたり閉じたりして時間だけが過ぎていた。


林道ゲートと広場・・ここから約1キロで北東尾根取付き


北東尾根の取付き・・残雪は少なく笹も出ている


5時間を掛けて登って来た1400mの尾根上にて


地図上のC1488付近に張ったテン場・・


★ 決断のきっかけ・・・

4/30(土)
太陽が昇り明るくなると寝てばかりも居られない。
5:30には起きて恒例のコーヒーを落としまったりとした半分あきらめのモーコータイムだ・・・。朝食はレトルトのカレーヌードルとアルファー米でさっと済ませる。

さて、本日の行動はどうしよう・・・と思案している時、外で鈴の音が聞こえてきた。「人だ」と思いテントの入口を開けて顔を乗り出すと正面に男性が立っていて声を掛けると立ち止まってくれた。一見すると軽装な身なり、タイツに短パン姿、ザックも日帰り用で背中に輪カンが付いていた。自分たちには考えられない身軽さである。一言、二言挨拶を交わしたが風の音で聞き取れぬまま男性は行ってしまった。
後に下山途中で男性は私たちに追い着き再び挨拶をするとHYMLの会員で函館の長谷川昭一さんと判った。私たちの事もMLで見てエバ夫婦とバレてしまった。日帰りでエサオマンに行くと言う事だったがエサオマンの肩手前1700m付近で強風のため断念して戻って来たという。それにしてもすごい健脚である。またどこかの山でお会い出来たらと楽しみにしています。

 話は戻り、男性がテントを通過したのは7:00頃だった。
本日の行動を思案していた私たちだが、この強風の中でも下から登って来てここを通過し更に上に向かった人を見て刺激を受けたのは間違いない。
「登ってる人がいる以上自分たちだって登れる」と確信した。早々決断のきっかけを作ってくれたのは長谷川さんだった訳だ。

8:30 テン場を出発。



4/30 テン場を出発してすぐの北東尾根(背景は札内岳)


目の前に迫る札内岳(1895m)

★ 感謝・・・

 北東尾根は予想外に風は弱く順調に歩く事が出来た。快晴に近い天候で景色も文句のない絶景で迎えてくれた。念願の主稜線、念願のカムイ岳を踏む前に北東尾根から望める景色にすでに感動し「感謝」の気持ちで一杯だった。

途中で下山してくる女性3人パーティーと出会う。帯広労山のパーティーで北東尾根1600m付近にテントを張ったらしい。今日はエサオマンを往復して下山する予定だったらしいが主稜線の強風に耐えられず計画を断念しての下山らしい。見た目では分からないが主稜線上はかなりの強風と予想が付く。直下には別のパーティーのテントが張ってありすでに戸蔦別岳を目指して出発したという。そしてあの単独の男性(長谷川さん)はどこまで行けたのだろうと気になって来た。



北東尾根1550m付近(右にカムイ岳の東ピークが見える)


北東尾根から辿るはずだったエサオマンへの稜線を望む


北東尾根1550m・・森林限界、最後のダケカンバ


写真では分かり難いが稜線に雪煙を上げる強風

★ 絶景と初登頂・・・

 9:20 北東尾根から始めて主稜線の分岐に立つ。直下のテン場には戸蔦別岳へ出発したというパーティーの大型テントが張ってあったが、テン場として非常に適した場所でブロックの代わりに雪庇を利用して深く掘られていて壁はテントの上まで達していた。これならどんな強風でもテントに影響が無いと思った。

 主稜線から見た景色にまたまた感動する。
今日辿る予定だったエサオマンへの稜線は想像以上に細くアップダウンも多かった。果たして自分たちの重荷でこの稜線を歩く事が出来たかは未知の世界だ。それにしても遥かに長く見える稜線である。そして北東カールと北カールを従えたエサオマンは厳冬の厳しさを思わせる雪煙を常時吹き上げていた。その右奥に見えているのはあの「ナメワッカ岳」だと思う。弱小のエバ夫婦が臨める山ではないのか・・・手の届かないほど神々しく遠くに鎮座するナメワッカが愛おしく、そっとして置きたいとも感じてきた。

さて、気持ちを切り替えて目はカムイ岳に集中する。
予想通り風は半端ではない。しかし、手の届く目の前にカムイ岳の双耳峰がある。その向こうにはピパイロ岳を始め伏美岳、妙敷岳の稜線が戸蔦別川を挟んだ対岸に連なっている。突風と雪庇に注意しながら少しずつ近づくカムイ岳に鼓動が高まってくる。



待ち望んだ主稜線に立つチーヤンと背にカムイ岳


カムイ岳の初登頂を目指して・・・


立っているのがやっとの強風に耐え忍ぶ(背は北東尾根分岐と札内岳)


間もなくカムイ岳だ!!

10:00 カムイ岳 頂上
 三角点に手を触れて満面の笑顔で握手する。狭い頂上は強風で立っては居られないほど。南北に切れ落ちた鋭い稜線の小ピークにすぎないが抜群の展望は圧巻である。稜線の向こうには戸蔦別岳があり並んで主峰・幌尻岳がどっしりと鎮座している。北戸蔦別、1967峰もはっきりと望め360度の眺望に涙が出そうだった。
 写真は一人ずつしか撮れなかったが、思い出に残るいい写真が撮れたと思う。僅か10分間の滞在も長く感じて大満足の下山を始める。



4/30 カムイ岳初登頂のチーヤン


4/30 カムイ岳初登頂のエバ (強風で三脚が使えなかった)


カムイ岳頂上から幌尻岳(左)と戸蔦別岳

★ 撤退組続々・・・

 カムイ岳を下山する頃、戸蔦別岳の稜線上に何人かの人影を見る。近ずくパーティーの人数は7名だった。カムイ岳肩直下にテントを張ったパーティーが戻って来たのだろう。
また、日帰りで登って来たという地元帯広の2人パーティーはその分岐で出会って挨拶すると「ここで引き返す」と言う。「カムイ岳なら登れますよ」と伝えると「地元でいつでも来れるから・・」と贅沢も羨ましい返事だった。残るはエサオマンに向かっている函館の長谷川さんと東京から来たらしい3人組のパーティーが心配だ。こんなに天気が良いのに・・・と思うが想像を絶する強風は危険過ぎる登行で撤退の判断は止むおえない事なのだ。

 私たちがテン場に戻りテントを撤収していると撤退組が先に下山して行く。その頃快晴だった青空に少しずつ雲が広がり流れは早かった。明日は雨予報・・呑気に今日も泊まろうかと話していたのは今朝だったのに、今は撤退が正解と納得していた。



下山途中の北東尾根でようやくツーショット(背景はエサオマン)


無事、テン場に帰って来た・・・

★ 誓い・・・

14:57  林道出合
 たった1泊2日に終わった日高の山旅なのにすごく長い時間を山で過ごしていたように感じた。北東尾根を何度も振り返り、この急斜度の尾根を登ったなんて信じられない気持ちだった。今また登れと言われても絶対無理と即答できる。でも、来年もまたここに来るぞと誓わずにいられなかった。それはチーヤンも一緒のようで心強いことだ。

昨日芽吹いたばかりの「ふきのとう」はすでに花を開き林道の残雪も少なく感じた。それぞれの想いで下山して来た各パーティーの足跡がゲートの駐車場まで続き、私たちの車1台だけが残る静かな登山口に着く。

帰路は芽室町の新嵐山荘で汗を流し再び無料の高速で無事に帰宅する。




無事下山した二人の良い顔です・・・


最後の一枚は北東尾根をバックに撮りました

※ 林道情報を流してくれた「ツジノ」さん本当にありがとうございました。
驚異の健脚ぶりを見せてくれた初対面もHPをいつも見ていた函館@長谷川さん どうしてそんなに元気なのかいつかまた山でお会いしたら是非聞いてみたい質問です。

みんな 良くがんばりました。日高ありがとう・・・。


デジブックでも作って見ました・・・

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