木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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デザインの修行

2006年03月29日 | 工業デザインとは(相談室)
<写真> ホンダS800


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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デザインの修行---転職する若者に
25:【デザイン相談室】考え方5

 数回続けてお金の話をしましたので、今回はちょっと趣向を変えてみました。

 つい先日、就職して1年目のデザイナーから、転職の相談を受けました。

 今は、就職に第2新卒なんて言う枠ができたんですね。昔は、就職したら3年は頑張らないと駄目だ。仕事なんてもともと辛いものだから、一つの会社で3年我慢できないやつは、どこに行っても使いものにならない、なんて言っていたのに、今は1年目での転職を社会が勧めているような仕組みになっている。

 社会通念は、常に変わっています。そういえば、昔は「就活」なんて言いませんでしたよね。

 さて、新人の転職の相談の話です。(あ、これもデザイン相談室の回答になるのかなぁ?笑)

 私は、自分が5回も転職をしている人間なので、3年は我慢しなさいと言う話はできますが、転職を止める資格はありません。本人も3年は我慢する意味を十分わかっていながら、自分なりの言い分があります。それよりなにより、時代が第2新卒を認めているわけですから、転職が前提で、アドバイスをするしか相談に答えるすべがありませんでした。


「デザインは度胸」そして「説得ではなく納得」

 大学を卒業して一年目の若者は、見るからに押しが弱い。発言を聞いていても、あまり自信が感じられない。事務職などしていれば、謙虚ないい性格なのでしょうが、デザイナーとしてはちょっと頼りない。

 そこで、最初のアドバイスとして、「もっと、自分に自信を持ちなさい」と言いました。

 デザインは度胸です。お客さんにデザインの提案をするときに、まず、自分が良い、最高だと思っていなければ、相手に「納得」してもらうことができません。

 営業での提案は何でも同じかもしれませんが、デザインは特に、お客さんを「説得」するものではありません。このデザインはいいのだと、お客さんに「納得」してもらうものです。

 こちらから「説得」するのではなく、相手から「納得」してもらう。これは、なかなか難しいです。

 まず、自分が提案内容に得心がないことには、相手を納得させることなど、絶対にできません。もし、「納得」してもらえれば、きっとそのあとの仕事はうまく進むはずです。


たくさんいいデザインを見る

 では、自分が提案するデザインに自信を持つためにはどうしたら良いか。

 それには、「たくさんいいデザインを見る」。これしかない。

 デザイナーは資格のある商売ではありません。素人との違いは、いかにたくさんいいデザインのものを見てきたか。どれだけデザインのことを考えてきたか。それしかありません。

 そして、当たり前ですが、見るだけでは駄目です。見るだけならサルでもできる。

 デザイナーであれば、いいデザインを見て、そのデザインのどこが良いのか、自分なりの評価軸をもって、評価すること。最初は、なかなか難しいです。凄いデザインを目の前にしてしまうと、恐れ入ってしまって全部いいように感じてしまいます。

 でも、それではデザイナーにはなれません。そのデザインのどこが良いのか、どんな有名デザイナーだろうが巨匠だろうが、そんなことは関係ない。それらの作品の中で、自分が気に入った点、気に入らない点を明確に意識して、それがどういう理由かちゃんと解析する。

 いいデザインを見て、評価するというと評論家のようになってしまいそうですが、評論家はデザインを、時代性や地域性や市場性などさまざまな評価軸を持って、評価します。それに対して、デザイナーならば、自分の感性というたった一つの評価軸だけですべてのデザインを評価しなければなりません。

 そうやって、いいデザインを見て、ちゃんと評価をしていくと、いつの間にか自分の中に一本筋の通った評価軸が生まれてくる。そして、いいデザインの中から自分がいいと思う部分のストックがたくさんできる。このストックは、自分が気に入っているものばかりです。

 ここまでくれば、しめたものです。自分の頭の中には、いいデザインのパーツのストックがいっぱいあるわけですから、それを組み合わせれば、絶対にいいデザインになる(はずです。)

 このようなことは、やはりなるべく頭の柔らかいうちにやっておいたほうがいい。若いうちにいいデザインをとにかくいっぱい見て、それらのデザインのいいところだけストックする。そうすれば、きっといいデザイナーになれるはずです。


デザインの修行は誰でもできる

 というような話を、若者にしました。

 我ながら、いいことを言ったなあなんて思い、ここに書いてしまいました。(笑)

 でも、考えてみれば、上のような修行は誰でもできますよね。絵は描けなくても、自分なりのデザインの評価軸を持つことはできる。

 もし、御社の製品にデザインが必要だと思い、デザインの勉強が必要だと思ったら、是非上のようなことを実行してみてください。毎週1回デパートなどに行って、いろんな商品を見て自分で評価する。

 トム=ピータースは「デザイン魂」の中で、「クール」「ダサい」と書いたノートに、毎日「かっこいいもの」「ダサいもの」を列記なさいと書いています。そうすれば、デザイン評論家になれると。


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