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インド太平洋戦略なるもの

2017-11-15 13:59:30 | 太平洋情勢乱雑怪奇

安倍ちゃん時代になってにわかに、インド、インドと騒いで、結果的に、インド・太平洋戦略なるものが語られているけど、実際問題何がどうなのかそんなに詰まった「戦略」には見えない。

で、日本、アメリカ、オーストラリア、インドが4角形になるというこれっすね。私は前から何べんも書いてますが、これって英連邦、という感じが強くてアメリカの戦略とさえ見えないって感じがするのね。

で、今回も微妙な感じだった。

日米豪首脳「揺るぎない結束」=インド太平洋戦略を推進

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017111300109&g=use

 

インド太平洋戦略を推進、と書いてあるのに、結束しているのは日米豪・・・。既にここがあれれ。

記事本文を読むと、

 【マニラ時事】安倍晋三首相とトランプ米大統領、オーストラリアのターンブル首相が13日午前、マニラで約40分間会談した。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の活発な海洋進出を踏まえ、「地域の平和と繁栄の確保を主導するため、日米豪の揺るぎない結束」を確認した。日米豪はインドを加えた4カ国の枠組みで、アジアからアフリカに至る地域の安定と成長を目指す「自由で開かれたインド太平洋戦略」の推進を目指す。

どこまで読んでも、結束しているのは日米豪で、インドが出てこない。

で、インドの元外交官のおじいさんBhadrakumar氏(アジアタイムスにコラムを持っている結構な有名人)のブログを読むと、インドは、別に叛旗を翻しているわけでもなんでもないが、合意文書などでコミットメントを避けた表現になっているという。

日本で出てる記事を見てもインドの姿勢が見えるようなものはないから、そんなところでしょう。

さらに、12月には、ロシア・中国・インドの3カ国の定例の会議があるのでそことの話し合いも考えているのかも、とあった。私の記憶では、多分12月には毎年ロシアとインドが会合を持つことになっていると思うので、そっちの調整も大きい。今回は、インドが軍事機密漏えい違反を指摘され、ロシアからガンガンに怒られているところなので、成り行きが注目される。

要するに、インド内で、アメリカ・日本の側に付こうとする派と、従来通りロシアとの緊密な関係をムダにすべきでない派が対立しているところ。

インドは、何事によらずゼロサムにしないでアクロバット的に行こうとすると思うので、今回もそうなるんじゃないですかね。

IPI(イラン・パキスタン・インド)のパイプラインとか、南北回廊とか、インドがロシアと喧嘩するとか、まず考えられない状況があり、さらに、中国との関係だって別に同盟組んで対立したいなんてまったく思ってない。

というわけで、こういう事情を考えると、「インド太平洋戦略」って何をしようというの?

多分、これで囲い込んだところから、インドとその周辺のインフラ整備をして、いわゆる一帯一路構想をくじこうという、対中国の日本側のアプローチらしい、という話も見え隠れする。「価値観を共通する」と出て来たら、それは中国、場合によっては中露とは異なる、という意志表明。

 インド太平洋戦略はインド洋と太平洋で法の支配や市場経済などの価値を共有する国が海洋安全保障やインフラ整備で協力する構想。日本と米国、インド、オーストラリアの4カ国が主導して戦略を進めることを想定している。

 安倍首相は日本政府が進める「質の高いインフラ投資」により、インドを中心とする南アジアの連結性を高める方針を表明した。道路網や鉄道の整備が念頭にあり、事業の具体化に向けた協力で一致した。

 

ところが、アメリカは、中国の関係で「価値観外交」はやめちゃった。トランプはこんなことを一度も言っていない。いろいろ問題はあるからそれは一対一でこれから考える、でも俺は習さんはエライ奴だと思ってるぜ、と言って帰ったわけでしょ(笑)。価値観違うからお前は敵だとかいう幼稚な冷戦モデル(オバマはまさしくこれだった)は使ってない。

ということで、インドなんかは、これは対中包囲網、or オバマのアジアシフトの時代は終わりのシグナルと捉えて、現在戦略練り直し中、だからコミットメントを避けたって感じでしょう。

 

シンプルにいって、そもそもこの「インド太平洋戦略」は何を目標にしているのかよくわからない。だけど、やたらに流行ってるセクターがある。それは軍事屋さん回り。インドはロシア製兵器に不満を持っているという記事が継続的に出てくる。ほんとかもしれないが、こういう出方をしたら、ああ何か意図があるんだな、ってなる。

だから、「インド太平洋戦略」の直近の目的としては、インドはロシアの軍装備品の最大のバイヤーなので、そこを切り崩して、西側の兵器を買わせるために使われた、とかいうのならとても理解できる。特に潜水艦、戦闘機あたりの高額のやつ。しかし、インド軍の装備を全部米製にできるとか、多分アメさんだってそこまで考えてないと思う。そんぐらい。

インドは遠くからみると海洋国っぽいけど、ユーラシアの内陸側に首都があって、アジアのディープな内陸と密接であるからこそ常に結構な波乱含みなんだから、海洋側のアプローチだけで見ることなんかできるわけないのもポイント。パキスタン、アフガニスタンで悶着があった時、オーストラリアだの日本が何の役に立つんだよ、でしょ。まず、モスクワ、北京は何と言っている、となるのが自然な場所。

まぁ、インド取ったら対中包囲網完成とか思いたくなる気持ちもわかるし、50年代のCIAはそうやってたわけでしょ。でももうそれで何がどうなるんだいという時代なの。

 

あと、インドを手がかりに日本が中国の一帯一路に挑む、みたいなのも妄想だと思うな。

ロシア・アゼルバイジャン・イランを繋ぐ南北回廊で、欧州側とインドが劇的に近くなる以上、欧州側がインドに投資しないわけもなく、かつ、ロシアがロシア影響圏(ユーラシア連合)のみならずトルコと戦略提携し、イランと異常に密接になっちゃった以上、この盤面を使って、何か、中国の意図を挫折させるとか、SCOを弱体化させるとか、大きく妨害するとかいう構想を画策するなどということは、ほぼ無理。

従って、インドを使って一帯一路構想を崩す、みたいなのは、海洋部分で何か・・・と言いたいところはあるけど、でもシンガポールも中国とフラットに付き合おうとしているし、まぁ妄想だと思う。そもそも、インドは全方位共存しか考えてないっしょ、そういうアクロバットが得意な国がらなんだし(笑)。

オマケに、最近はこんなことをするとロシアのロスネフチさんが言っているわけだすよ。イラン・パキスタン・インドを繋ぐIPIパイプライン。

 

というわけで、なんかこう、安倍ちゃんって何をしてきたんだろうと整理すると、the Westのためにひたすらロシアと戦って、壮絶に敗北したとしか思えないわけですが、なぜだか日本の報道環境では、日露は平和条約に向かっていることになっているのね。私はこれは、国民の特に右派を繋ぐためのカバーなのかなと疑ってる。

一方プーチンの方は、諸々面白くないこともあるだろうが、日露関係については来日時に「いつか歩み寄れる日もあるだろう」という現状認識を表明しているわけだし、そういう環境作りとして、一貫してサハリンどうですか、ウラジオいいですよと売り込んでいる。これはつまり、日本がそこに駒を置くしかないところまで持っていっているということなのかもしれない。

日本はといえば、何もトルクメニスタンに巨額の商売をかけずとも、インドに金もっていって大物ぶったりせずとも他に道はあり、アゼルバイジャンのパイププラインの行く末を心配するよりも、自分の領土のすぐ目先のパイプラインの心配をする方がずっと安かったという話になる、ということになるのではなかろうか。へんな人たち。

 

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『安倍はイラン訪問できない』 (ローレライ)
2017-11-15 16:13:31
『安倍はイラン訪問できない』『チャーバハール港、および関連プロジェクト(製鋼所、石油化学工場など)』日印がイランの港湾を共同開発、日本紙の「中国けん制」は誇張_japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-05/11/content_38428056.htm

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年5月11日
から☆『イラン政府は中印日韓がチャーバハール港、および関連プロジェクト(製鋼所、石油化学工場など)の建設に加わることを願っている。中国の対イラン直接投資額は現在、約3億5000万ドルに上るが、日本は約1億4000万ドルとなっている。インドはチャーバハール港の開発に200億ドルを出資すると称しているが、「十分な優遇を前提条件とする」という。』
イラン重要すぎ (ブログ主)
2017-11-15 16:38:47
政治的理由から日本はイランに大っぴらに肩入れできずにいる。
インドは日本にもっとチャーバハール開発に肩入れしてほしかったし、今もほしい。が、そこはイラン。
結局、チャーバハール開発を対中だ対中だと言い過ぎたのがまずかったのでは?

つか、日本はちょっとインドの煽りに担がれた側面もあると思う。インドというよりむしろイランを重視していった方が物凄い戦略的価値があったのにね、とかも思います。まぁ日本は場を静めるという能力が乏しいのでこういう場所でプレーするというのはもともと無理だったのかもしれないですが。でもちょっと残念。

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