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いつか歩み寄れる日もあるだろう by プーチン(2)

2016-09-02 20:56:23 | 太平洋情勢乱雑怪奇

プーチン大統領と安倍首相がウラジオストクで会談したと7時のNHKが伝えていた。

なんて言ったか忘れたけど、記者の態度からは日本様は会ってやってんだよ、露助にさ、という感じがどこか漂う報道だったと思った。

しかし、成り行きから考えて、私は、日露関係については、対話しよう対話しようと持ちかけているのは日本の方だ、ってな感触を持ってるんですが。

で、今回の話はここ。

安倍首相、プーチン大統領と会談 経済協力や領土問題
http://www.asahi.com/articles/ASJ925S7RJ92UTFK01G.html

安倍晋三首相は2日夕、ロシア極東のウラジオストクを訪問し、プーチン大統領と会談した。極東のエネルギー開発や産業振興など経済協力のほか、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の進め方などについて意見を交わす。

 

前から何度も書いている通り、ロシアは、平和条約の交渉をするという態度だしそういう文言でずっと来てる。が、日本の報道だけが、ロシアと来ると、領土問題が~とまず来て、文言を見ていても絶対にそれを見出しに持ってくる。

こうなってくるとジャーナリズムとか報道じゃなくて、日本の場合、すべての報道は重要案件については、昔軍部が検閲していたのと同様の仕様なんだろうなと前から思ってるけど、今回もそうだなと思った。

で、プーチンはこれに先立って、ブルームバーグ紙とインタビューをしている。

プーチン露大統領:北方領土問題で妥協点見いだせる-インタビュー
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-09-02/OCUKNS6KLVRL01


プーチン大統領はインタビューで、「われわれは領土の取引はしない」が、ロシアは「日本の友人らとこの問題の解決策を見いだしたいと強く望む」と発言。ロシアが現在、中国との間で築いているのと「同じぐらい強い信頼関係」を日本とも構築できれば、「われわれは何らかの妥協点を見いだせる」と語った。

  同大統領は1956年の日ソ共同宣言によって4島をめぐる対立はほぼ解決していたものの、「日本側がその順守を拒否し、その後ソビエトが基本的に無効にした」ことで状況が変わったと指摘。両国は解決に向け「1956年ほど近づいてはないと私は考えるが、いずれにせよ、われわれはこの問題に関して対話を再開した」と説明した。

 

クレムリンのサイトにこのインタビューのスクリプトが載っているんだが、それによれば、領土問題を振ったのは、実はブルームバーグのインタビュアーの方。

インタビュアーが、ウラジオには日本の安倍首相も来るが、大きな経済協力のかわりにクリル諸島の一つを取引するんですかね、その準備はあるんですか、と尋ねた。

するとプーチンが、次のように答える。パラグラフ2つ文なので試訳しよう。

私たちは領土を取引したりはしません。日本との平和条約の締結は確かに重要な問題で、私たちは日本人の友人たちと一緒にこの問題の解決策を見つけようとしていますが。

1956年に、私たちは条約に署名し、驚くべきことに、ソビエト連邦最高会議と日本の議会の両方がそれを批准しました。しかし、日本はその実行を拒否し、またソ連は、要するに、後に条約の枠組みの中で達したすべての合意を無効にしました。

 

何年か前、日本側がこの問題の議論の再開を尋ねてきて、私たちは中途半端に会談しました。過去2、3年は日本側の主導で接触は完全に凍結されました。私たちの側からの働きかけではありません。

一方、現在の私たちのパートナーたちは、この問題に関する議論の再開に関する熱意を表明してきました。交換とか売るとか、その種のことは何にもありません。これは、どちらの当事者もがっかりしたりせず、どちらの当事者も自分が勝ったの負けたのと感じないようにするような解決を模索している、ということです。

原文はここ。

http://en.kremlin.ru/events/president/news/52796

 

で、その後、日露両国は1956年と比べてどれぐらい近いのかとインタビュアーが尋ね、プーチンは、1956年により近くなっているとは思わないと語っている。

あと、ロシア大統領とロシアの首相の間でも常に議題になっている、という言い方も含まれている。これは意味深。

で、解決については、

解決を見つけるなら、よく考えて、よく準備しないといけない。何度も言っている通り、解決は、ダメージを引き起こすような原則じゃなくて、2国間の長期的な関係の発展のためになるような条件を作っていく原則に基づくようなものじゃないと、という言い方もしている。

 

と、プーチンの話を読む限り、わ~いって感じで勇んでる感じは特にないですよね。やっぱり、前にも書いた通り、2014年8月あたりに、日本が流れをぶっちぎったあたりで、多分親日派っぽいグループは相当に痛手を受けてるのかもしれないって気もする。

だから、また対話を再開したいとかいったって、日本は、一旦何かあれば、また、アメリカが言う通りの話に「はい、はい、当然です」と手のひらを反すわけだし、という懸念があるからこそ、長期的に考えようと言っているんじゃないでしょうか。さらに、今般の場合は、オマケに「クリミアは北方領土と同じなのだ」と誰も頼みもしないことをヨーロッパに行って宣言してきた外務大臣が出てきたりもするわけだしね。岸田、お前のことやねん。

ロシアからしたら相手の出方を見ながら、うかうか乗るまいと思っているって感じだろうなと想像。

日本の側も、経済協力とかいっても乗り気な企業は限定的なまま、なのじゃないかと想像。つまり、現状二国間は停滞しているって感じじゃないんですかね。だから、ロシア向けの省庁を作るとかいうびっくり話は、それぐらいしかやることがないからやった、みたいな感じじゃなかろうかと想像してる。
 

■ 第二次世界大戦がらみ

話がそっちに行ってしまったけど、それよりも、上のブルームバーグの日本語版の記事がある種巧妙に抜いている話に私は気が向きますです。

それは、日露の領土問題と露中の領土問題を比べた下り。

インタビュアーがまたちょっと挑発的なことを言い出して、ロシアの極東側の領土は、欧州側のと比べて気になってないんじゃないの、だって2004年には中国に領土渡したでしょ、そんなことカリーニングラードでできるの?という。

すると、プーチンが、私たちは別に領土を引渡したわけではない。そもそもこれの解決には40年もかかってる。で、最終的に一部をロシアに一部を中国にしたまでのこと、と応じ、その上で、

 

しかしながら、日本と私たち、中国と私たちの領土問題には根本的な差異があります。一体なんでしょう? それは、日本の問題は第二次世界大戦の結果であり、第二次世界大戦に関する国際的な文書に規定されたものであるということです。それに対して中国との国境問題は、第二次世界大戦ともなんらかの軍事紛争ともなんの関係もありません。

 

と言っている。

これって、上のブルームバーグにも、日本で出てる報道にもないか、微妙に曲解して書かれている。

さらにいえば、一昨年から去年にかけてポツダム宣言がどうしたこうした問題が日本中で駆け巡ったことがあったけど、これは本当に珍しかった。日本の世論、ジャーナリズムは本当にこの問題を話題にしない。カイロ宣言なんて無効だみたいなことを言って見たりもするしね。それならそれで議論を起こせばいいんですがそんな風にも展開しない。

で、これを言う時プーチンは、第二次世界大戦の戦勝国であり、かつ、現在の国際秩序を規定している国連組織の常任理事国の一角であるロシアの代表者として言っていると思うわけです。

つまり、ここを、2国間で、いいよね、いいよね、なんかちょっといろいろあるけど、では済ませられないのだ、と言っているも同然だと思うのね。

で、それはアメリカ、中国も同様でしょう。

 

さらにいえば、1月にはドイツがこの問題について結構ちゃんとした報道もしていたぐらいで、勘繰れば、あちこちに密かに日本の絶望的なまでの後ろ向き具合をどうしたもんか、と思っている人たちがいるのかも。

ドイツDW紙、日本とロシアの北方領土問題を取り上げる

どうしてこうなるのかといえば、日本には、どうやって戦争を終わらせたのか、そしてその帰結として、どうやって日米安保体制に突っ込んでいったのかを絶対にこじ開けたくない人たちがいる、ってことなんだろうと私は思ってますです。

 

というわけで、4月に書いたこととあまり変わらないような気がするので、(2)にしてみた。

いつか歩み寄れる日もあるだろう by プーチン

 


 

日米開戦の正体――なぜ真珠湾攻撃という道を歩んだのか
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祥伝社

 

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)
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2 コメント

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『利権と二人三脚の太陽政策』 (ローレライ)
2016-09-03 07:25:57
『エネルギーリンク』はイランがトルコなど周辺国と『利権と二人三脚の太陽政策』の手段として展開しているので『ロシアと極東周辺国』でも実行されると『ロシアの平和』に貢献するだろうですね。
返信する
そうそう (ブログ主)
2016-09-03 19:17:14
そうだと思います。

でも、そもそも日本は全体としてロシアとの関係で平和を望んでないのではないでしょうか。100年越しの洗脳を甘くみてはいけないのではないのかしら。

だからず~っと、いつかあいつらは弱るのだ、その時とびかかろうという、この姿勢が解除されないから長期プランに乗り出そうという気がない、と。
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