いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

C型肝炎問題のその後

2009年04月18日 14時13分48秒 | 社会全般
さて、一方にとって都合の良い報道というのは容易に実行できる。

フィブリノゲン投与、1割が肝炎感染=初期症状7割「早期治療を」-厚労省研究班(時事通信) - Yahooニュース

(一部引用)

研究班が記録の残る医療機関を2年間かけて調べたところ、530施設の8799人で投与が明らかになった。このうちC型肝炎感染者は11.4%に当たる1006人(うち10人はB型肝炎と重複感染)だった。
 投与経路では、静脈注射の32.4%に対し、ほかの薬品と混ぜて使った「フィブリン糊(のり)」が43.7%。製薬会社の推計では、投与の多くが静脈注射によるものとみられていたが、結果は糊による感染拡大の可能性を示した。
 また、C型肝炎の感染者で、肝硬変や肝がんに進行したケースは8.8%だった。治癒18.9%のほか、無症候性キャリア18.5%、慢性肝炎51.1%と初期段階が約7割を占めた。

=====


記事からは「厚生労働省研究班」という名称だけが出てくるが、果たして専門家が集まって資料を調査した結果、何か新たな事実が判ったのか?というと、そういうことでもないだろう。

記者の印象なのか、研究班の指摘なのか、全く曖昧にして書いているのだが、『結果は糊による感染拡大の可能性を示した。』って、誰がそう言ったんですか?そう記述されているんですか?


そもそも、研究班のメンバーって、誰ですかね?どんな人たちなんでしょうか?肝炎や肝炎治療の専門家たちなのでしょうか?
「研究班」という呼び名が付いているからといって、臨床の専門家とかそういうわけでもないのではありませんか?

例えば厚生労働省:フィブリノゲン製剤投与後の418例の肝炎等発症患者の症状等に関する調査検討会のメンバーは、

 熊田博光(虎ノ門)
 中村仁雄(九大名誉教授)
 宮村達男(国立感染症研究所)
 八橋 弘(国立病院機構)
 吉澤浩司(広大)
 小池和彦(東大、中途参加)

ということで、肝炎の専門家はきちんと入っている。
この報告では、「フィブリン糊による感染拡大」についての示唆などでもあったのですか?


時事通信の記事でいう「研究班」というのは、私の勝手な推測で申し訳ないが(記事中には「何の研究班」ということを一切明示していないので)、恐らく「薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班」なんじゃありませんかね?
以下のメンバーらしいですよ。

 ◎堀内龍也(日本病院薬剤師会会長)
 ○磯部 哲(獨協大法学部)
 ○高木均(群馬大医学 病態制御内科学)
 ○津谷喜一郎(東大薬学 医薬政策学)
 ◇片平洌彦(東洋大社会学部 社会福祉学科)
 ◇松下一章(東海大代々木教学課)

(◎:主任研究者、 ○:分担研究者、 ◇:研究協力者)

因みに、この中で医師免許を有する者は何名いるのでしょうか?
別に、医師は絶対だ、とか医師の意見や判断が正しいとか、過信するわけではありませんが、報告の質とか視点ということでいえば、医師の側からのものではない可能性が高まるであろう、ことは判るでしょう。むしろ、非医療者とか一般人に近い立場ではないか、ということです。肩書きで差別したいわけではないですが、教学課の方って研究者なのかどうかも知りませんが、一体肝炎の何に詳しくてメンバーになっているのか、とは思いますな。


この研究班で一体何を明らかにできるのであろうか、何を明らかにしたいのか、ということが私にはよく判らない、というだけです。


記事を書く記者なのであれば、まずこの報告をじっくりと全部お読みになった方がいいでしょうな。

厚生労働省:第12回薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会資料


この研究班は「C型肝炎に関する医学的知見」を言えるようなものではないのではありませんか?
通信社や新聞の記者氏には、そうしたことすら考えられない、ということなのかもしれませんがね。いや、医学的に正しい事実を言える、というのであれば、それはそれでいいですよ。きちんと学術的な検証に耐えられればいいんですから。

普通に考えると、フィブリノゲンの静脈投与だけではなく、フィブリン糊の使用で「感染可能性」だけ考えれば、「有り得なくはない」ということでは。けれども、それが他の「静脈投与」や「輸血」の感染リスクに比して、ダントツで高いとか、圧倒的に高いとか、割と高いとか、そういう事実の指摘でもあるんですか?もしもあるなら、それは誰が指摘したのか、記者氏は明らかにできるはずです。研究班ですか?(笑)

記者というのは、数字だけ並べて何かの事実を言えると思っているのかもしれませんが、全然そんなことはないわけで。
研究班の報告の殆どは、これまでの資料に基づいて数字を並べたものが殆どなのではありませんか?それとも、何か新事実とか、新たな医学的知見とか、そういったものが得られたんでしょうか?


参考までに、「輸血」の感染源問題について、カタが付いたんでしょうか?
誰か、「輸血よりもフィブリノゲンの方が、感染リスクは高い」というような、新発見でもできたわけですか?


原告団は一律救済を強く主張していた時、大阪高裁の和解を拒否しましたよね?
厚生労働省の「責任所在を明らかにする」とか、「担当者の刑事責任を問う」とか、なぜ感染したのかを明らかにするとか、そういうことを主張していたわけですよ。

で、実際に、これら検討を経て、一体何が判ったんでしょうか?
「どうして感染したのかが判らない」ということでしょうか?

誰が悪者だったか判ったんでしょうか?
どの役人の責任でしたか?

無駄に労力を投入し、一部の人間たちだけに大金が転がり込んだだけ。欺瞞なのだよ。



時事通信社の記者にとっては、まあ都合の良い情報操作みたいなものなのではありませんかね。
数字だけ出せば、記事を読む一般人になど細かいことは判らんもの。あたかも既成事実であるかのように出せるのだ。記事を出すことによって、そういう印象を与えることは簡単なのだよ。
とんでもない世論誘導行為だろ。

記者氏には理解できないのだろうけれども、図表2-33というのがありますので、見るといいですよ。
輸血後肝炎の水準をグラフにしているのですが、これはあくまで参考水準です。目安の一つという程度でしかありませんけれど、でも時代の傾向というのは、おおよそつかめるであろうとは思います。

さて、ここではフィブリノゲンの投与には関係なく、輸血後肝炎の発症率は高かったのだな、ということが判るかと思います。80年代中頃まででも、14.3%という数字が出ている。検査導入直前期でも8.7%という水準である。1割で肝炎感染というのは、輸血単独でも起こり得るということでしょうね。そういうリスクと比して、フィブリノゲン製剤やフィブリン糊はどうなんでしょうか、という話であり、回答の得られた資料から、感染リスクを推定することは甚だ困難でしょう。一般外科や心臓外科などの記録がきちんと保存されている医療機関というのは、医療水準もそれなりに高く先進的な部分を実施している可能性はありますからね。「回答の得られた資料の数字」は実際の使用頻度や使用量に比例しているわけではないし、フィブリン糊の使用割合を正確に反映するものでもないですよ。

つまり、記事中にある数字だけからは、医学的には「何も言えない」という可能性が高く、そうなのであれば、殊更感染リスクを強調するかのような記事の記述は極めて不適切としか言いようがない。
「ラーメンはカレーライスより人気がある」という事実を記事に書く時、ある定食屋で行ったアンケート結果だけから一般的事実を指摘することなどできないであろう。それと同じだ。記者氏にとっては、このアンケート結果は正しい、と強情に言うかもしれないが、そんな調査結果には特別な意味はない。


薬害C型肝炎問題のまとめ

薬害C型肝炎問題のまとめ・2


参考までに、B型肝炎はかつて2%水準程度の感染者(キャリア等)が存在していた。かなりの高率だ。手術歴のない男性で、当然輸血経験や出産経験だってなくとも、ウイルス感染者は存在していた。垂直感染があるから、ということもあるが、普通に生きてきただけで感染していることはある、ということだ。C型肝炎になると、B型よりは感染可能性は低くなるであろうが、輸血などウイルスが大量に体内に入るような場合には感染してしまう可能性が高まる。これとて、昔に売血していたのは出産経験などない男性が多かったであろうが、輸血歴もなくフィブリノゲン製剤の存在してない時代だって、恐らくC型肝炎に感染していた人たちは大勢いた、ということなのですよ。そうじゃなければ、B型肝炎ウイルスの検査ができるようになってからも輸血後肝炎が高率で発生することなどないからだ。B型肝炎ウイルスの混じった血液の多くは排除されているにも関わらず、それ以外の肝炎ウイルスが存在しているが故に輸血によってC型肝炎に感染するのだよ。

じゃあ、フィブリノゲン製剤の無かった時代には、どうやって感染したんですか?
判るわけがないのだ。
感染原因なんて、ほぼ突き止められないに決まっている。
それなのに、何故感染したのか、誰に責任があったのかを明らかにする、なんてのは無理に決まっているのである。突き止められないのに、原因は薬害にあるので「賠償金を取れる」という矛盾した法的責任論なのだ。結果的に残ったのは、一部の人間たちだけが大金を手に入れることができ、幸運にも名前が記録に残っていた人は遺族にさえ支払われた、ということ。一方では、普通の肝炎患者たちの多くが大した支援も受けられていない、ということなのにね。今、病気の人よりも、既に病気で無くなった人の遺族の方が大事で、そちらには大金が支払われるのだそうだよ。


つまりは、欺瞞なのだ。
しかし、マスコミの記者たちには、そうしたことを考える能力もなければ、判断もできないのだ。あるのは、いいかげんな情報の垂れ流しと煽動だけ。ま、中間報告書をよく読むといいよ。たぶん理解できないだろうけど。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。