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NTTの行政訴訟

2006年05月01日 18時20分40秒 | 法関係
かつての公社時代から、本格的な民間企業へと脱皮していくことを表す出来事なのかもしれない。「親方日の丸」で巨大化した公社をスリム化して、度重なる人員削減も行ってきたNTTとしては、十分血を流した、ということだろう。他の民間企業の足音が確実に迫ってきては、とてもじゃないが「ノンビリ」してられない、ということだと思う。退職OBの「高額な年金給付」という問題が表事情なのだが、本質は共済組合の問題なのではないかと思っている。


Sankei Web 経済 NTT、企業年金減額却下で1日にも国を提訴

産経の記事より。

NTTは30日、退職者に対する企業年金の給付減額が認められないのは不服として、早ければ1日にも東京地裁に国を相手取った行政訴訟を起こす方針を固めた。厚生労働省が2月、退職者への年金給付額を減額する条件変更を却下した処分の取り消しを求める。
 NTTは、同省が条件変更の基準としている3分の2以上の年金受給者から受取額の減額について同意を得ており、厚労省の措置は企業年金の自主的・安定的運営を損なうなどと主張するとみられる。

 確定給付年金は、あらかじめ決められた給付額を、社員が退職後に年金の形で受給する。企業が拠出する掛け金は損金算入が認められ、税制面の優遇措置があるため、給付額の変更などは厚労省の承認が必要となる。

 NTTは昨年9月、退職者約14万5000人の企業年金について、1人月額1万4000円程度の減額を申請。だが厚労省は今年2月、「減額を承認するほどの経営悪化は認められない」と判断。退職者の企業年金減額を承認しない初のケースとなっている。




NTTは既に厚生年金に移行しているが、日本電信電話共済組合時代の事業主負担分が相当重いのだろうと思うのだが。これは単なる勘繰りにしか過ぎないので、定かではないけれども。そして、厚生労働省が「減額を認めなかった」というのも、「国家公務員共済」の都合ということなのではないかと思われる。それか、減額が認められれば、「既受給者の減額」が認められることになってしまうから、と。これを認めてしまえば、公務員の共済年金も減額が可能になってしまう、と。


公社時代の年金規定というのは、「国家公務員共済組合法」によって定められており、現在も公社時代の部分はそのまま適用されているのではないかと思う。それ故、企業側の負担が非常に重いことになる、ということだろう。だって、それまでは国庫から取ってくれば済んだ分を、企業(事業主)負担とすることにされてしまっているのだから。普通の民間企業に比べれば、その企業負担が過度に重すぎる、ということだろう。公務員共済の給付水準が「いかに高いか」ということを、NTTは身に染みて感じたのだろうと思う(笑)。

(因みに、国家公務員共済組合連合会には、衆・参議院共済組合もあるのだが、これは国会職員が加入ということなのだろうか?ちょっとよく判らないのだが。故に、公務員共済の減額には、議員繋がりで反対が多い、ということだろう。特に政治の世界からは引退した人々の。)


前に書いた記事が関連するので、挙げておきます。

恩給・職域加算の減額は憲法違反か?

恩給・職域加算の減額は憲法違反か?その2

恩給等の減額問題



多分処分を決めた時の、厚生労働省の判断では、

・企業負担が重いと言っても、黒字じゃないか=まだイケル
・旧法共済法で規定されていた電電公社時代に退職した「既受給者の財産権(笑)」を侵害する

ということだろうと思う。


松下電器の年金減額訴訟では、改廃規定の適用について、

経済環境(運用収益水準等)、運営主体(企業)の業績(黒字水準)も当然判断材料となるだけではなく、「現役従業員との著しい格差を生じるような場合」においても改廃規定適用となり得る、という判断を示していた。旧法時代には既に国家公務員共済組合法に改廃規定の条文は存在していたはずで、旧法での受給権者についてもその効力が及ぶと考えるのは妥当ではないかと思うが。


普通に考えて、年金制度という性質上、相当程度長期に渡り維持存続させる義務があるということから、「途中での制度変更ということも有り得る」、という契約なのであり、それが契約段階(受給権獲得時点?それとも保険料払込開始時点?)で全く予見できないという性質のものではない、ということだろう。何故なら、昔に払い込んだ高々1万円分が、数十年後には市場での運用収益を超えて給付されるのであり、物価上昇の影響などを勘案されて増額されてきたことは十分知りえるはずであろうな、と。しかも、そうした「増額変更の場合」には文句を言わず(笑)、減額された時だけ「制度変更はオカシイ」という異議申立てというのも変な話であろう。


それと、「憲法に規定する財産権を侵害するおそれ」というのは、多分、年金制度検討の中でも、公務員労組からの申入れでも出されていたようだ。どうやら霞ヶ関には「財産権侵害説」というのが、早くから蔓延していたらしい(これって、誰がそういう講釈を垂れているのかね?きっと公務員の中の誰かだろうけど。それとも法学者なの?)。その影響なのかどうなのか不明だが、自民党幹部も「憲法で保障する財産権の侵害で訴訟を起こされる」と言ってるらしいんだが、多分大臣経験者じゃないかと思うね。


国家公務員共済組合法では、受給権者が禁錮刑以上の刑に服する場合、「職域加算」部分の減額もしくは不支給決定ができることになっており(第97条)、既に受給権が発生していたとしても、その権利とは関係なく、減額が可能ですね。「財産権を侵害する」と主張する人々にとってみれば、まさに、「財産の没収」と同じような意味合いなんでしょうね。でも、それが本当に正しいのならば、国家公務員共済組合法の第97条は、違憲ということですよね?公務員の労組が議員に申し出ればいいのではないですか?「違憲だから、法律を変えてくれ」って(笑)。何でそう言わないのですか?公務員は。官公労と繋がりの深い民主党議員にでも、「違憲だから、どうしても変えてくれ」とか言えばよいではありませんか。


もし、第97条の規定が違憲とはいえない、という判断であるなら、「職域加算相当部分の減額は可能」ということですよ。で、年金受給権(減額反対派の言う「財産権」ですか)というのは、減額されたところで必ずしも「財産権は侵害されない」ということなのだと思いますよ。つまり、年金の減額決定というのは、合理的理由があるのであれば十分認められる、ということだと思いますね。それに松下電器の訴訟では、「労働の対価が観念できない部分(超過利息分)は、あくまで贈与的なものであり、その分が減額対象となったとしても問題ない」という判断なのです。


NTTの年金制度がどうなっているのかは知らないが(報道では確定年金と出てたけど、どうなんでしょ?)、給付減額を認めないとした厚生労働省の処分の取消を求める、ということで訴訟提起となったのでしょうね。まあ、当然だね。NTTとしては処分から今まで、対応をどのようにするか検討していたんでしょう。

でも、裁判というのは、やってみなけりゃ何とも言えない、という面もあるので、判らないですけどね。確定拠出年金ではないから、大丈夫のようにも思えるけど。




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