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経済学理論バカへの挑戦状~6・極端な自由化はガンと同じ

2011年11月30日 17時10分05秒 | 経済関連
先日書いた記事で、個々の特徴を無視しているのが経済学理論であると述べた。

>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/3b32cceac6b303c023e4120527391035


書いていて感じたのは、そういう存在はまるで「ガン細胞」のようだ、ということだった。


通常、人体では各臓器や組織ごとに、機能や特徴が備わっている。肝臓は肝臓であるし、筋肉は筋肉の働きと構造を持っている、ということである。これは、社会と似たものだ。日本、アメリカ、ユーロのような組織は、別々な特徴を持っている。大きさも異なる。臓器とほぼ同じようなものだ、ということである。


勿論、同一の人体であるから、統一的ルールに従う部分は数多くある。だが、それでもやっぱり、脳は脳だし、心臓は心臓だ。同じではない。
心筋細胞と脳細胞では、異なるのだ。人間だって、職業は異なるのと何ら変わりがない。


細胞では、所属する臓器や組織の特徴を持つわけだが、元々は「幼若な」未分化細胞から始まる。人間の子供と一緒で、将来どんな職業の大人になるか、まだ決まってません、ということだ。これが未分化、ということだ。けれども、段々と周囲に馴染んで、分化が進むと特定の機能や特徴を持つ分化した細胞になるわけである。各臓器などの基本的機能や構造を支えるのは、こうした分化した細胞だ。

あたかも、人間の職業が、警察官、バスの運転手、農家、教師、みたいに「定まってゆく」ようなものなのである。社会を支えるのは、こうした職業人だ。細胞とよく似ているのである。

中には、一度特定の種類の細胞になっても、幼若化が起こって別な種類の細胞になったりするものもある。人体というのは、うまくできていて、困った時なんかに、そういうリカバリー機能が働くようにできているのである。だから、人間の転職みたいに、細胞も別なものに変化することもあったりする。こうした部分も、人間社会とよく似てるな、と感じるわけである。


経済学の想定している労働力というのは、言ってみれば「未分化細胞」という存在以外は認められていない。転職コストや移動コストというものが観念されていないので、誰でも何にでもなれて、同じように機能できる(働ける)、ということが前提とされているのだ。

そんな細胞は、人体には存在していない。社会全体が非常に幼若な時代(受精卵~発達途上、みたいな)くらいだと細胞種類は少なく、未分化な状態のものが多いということになるだろうが、それは原始的状態ということでしかない。高度に発達、分化した社会というのは、人体で言うところの成体みたいなものであるはずなのだ。そこには、未分化細胞は極々少数でしかないはずなのである。


しかし、細胞活動が極めて旺盛で、幼若化した状態の細胞というものも存在する。最たる代表例が悪性腫瘍だ。一般的にはガンの方が馴染みがあるだろう。ガン細胞の特徴というのは、まさに活動が活発であり、周囲のリソースを消費し、エネルギー消費が旺盛、増殖能が極めて強い(みるみる大きくなってゆく、みたいなことだ)のである。


通常の細胞というのは、近隣の細胞同士がぴったりとくっついて並んでいることが多く、簡単には移動できない。移動できないで、みんなと一緒に並んでいることが、細胞、組織や臓器の特徴を備えている、ということでもある。個々の細胞を見れば、ガン細胞よりは活動度が低いかもしれないが、組織全体となれば、効率的な働きをしてくれるのである。


移動制限の大きいのが多くの正常細胞であるが、ガン細胞は違う。転移できるのだ。遠く離れた場所に行くことができてしまう。周囲とは異なる中でも、自分勝手に活動し増殖できてしまうのである。正常細胞は、隣同士でくっついて規則正しく並んでいるから、そこから抜けるのは細胞が「死ぬ時」くらいだ。ガン細胞は違う。


経済学でいう完全競争とか均等化というのは、まさにガン化とも言うべき状態のようだ。何でもかんでも「ルールを統一せよ」ということも、まるでガン細胞になれ、と求められているのと似ているのである。細胞や組織の特徴を失わせる、ということに他ならないからだ。


ガン細胞が旺盛な活動を行い、周囲細胞よりも栄養(リソース)取り込みと消費は、効率的と言えるだろう。だから正常細胞との競争に勝つ、ということになり、増殖が急速に起こるのである。

周囲組織に馴染まないグローバル企業というのは、まるでガン細胞の増殖と違いがない。自己増殖の為だけに、リソースを消費する。ガン細胞がまさにそうだから。周囲の正常細胞のルールには従わない。狂ったように増殖するだけだ。そして、周辺の組織に浸潤し破壊する。


真のグローバル化は、全身をガン化せよ、と求められているのと同じようなものである。個々の特徴を喪失せよ、未分化になってどんな仕事でもせよ、異所性の増殖をできるように(グローバルな人材に)なれ、ということだな。

ガン細胞が何故増殖できるかというと、正常組織が存在してるが故である。全身が全てガン細胞であると、生体の維持ができなくなる。周囲の正常細胞がおとなしく、栄養を食い尽くさないからこそ、ガン細胞が「競争に勝って」増殖できるのだ。

組織全体、臓器全体、或いは生体全体で見た場合には、高度に分化していることで、複雑、多様な機能が発揮されるのだ。それは、周辺の結びつきとルールで「がんじがらめ」にされた細胞群の存在のお陰であるのだ。

ガン細胞というのは、全体の調和を考えたりはしない。
自分本位をとことん追求し、周囲細胞の慣例にも従わず、オレ様ルールで活動する。だから、どこにでも転移し増殖するのだ。

普通の人間が、簡単に別な職業や別な国には移れないのと同じで、正常細胞としての「規範」の中で生きているのだ。しかし、グローバルなハイエナやコヨーテたちというのは、組織特異性や臓器特異性のようなものを無視しようとするか、オレ様ルールで活動しようとするのである。

ガン細胞の活動状況だけ見れば、正常細胞より「活発で、栄養取り込み効率も良く」て、競争に打ち克っていることだろう。小さな局所ではそうかもしれない。が、これをもっと広い範囲に拡大すると、それは危機的な状況となるだろう。ガン化だからだ。

ガン細胞にとっては「良いこと」であっても、臓器や生体全体の機能を失わせることになるので、全部の未分化、幼若化、移動容易さ、などが達成されたら、生体は死に至るであろう。


社会が生体とは違う、というのは、そうかもしれない。
が、閉じた世界の、全体を考えるというのは、まるで生体を見るようだ、と感じるからこそ、経済学の論理でガン化を正当化する連中の主張を見ると、異常さを意識せざるを得ないのである。

活動度の低い、非効率であるかのように見える細胞こそ、生体全体で見れば必要な役割を担う存在なのであり、他の「活動旺盛な細胞」の存在を支えているのだ。全部が旺盛になってしまったら、ガン化なのだよ。競争の結果起こるのは、確実な破壊、である。




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