クールジャパン★Cool Japan

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『日本力』、ポップカルチャーの中の伝統(1)

2011年01月11日 | coolJapan関連本のレビュー
◆『日本力』(松岡正剛、エバレット・ブラウン)

この本は、クールジャパンに関連する本01で、他の本とともに数行コメントして紹介したことがあったが、本格的なレビューはまだしていなかった。同じタイトルの本に伊藤洋一の『日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化! (講談社プラスアルファ文庫)』があり、これは書評で取り上げた記憶があるが、別の本なので注意されたい。

今回取り上げるのは、松岡正剛とエバレット・ブラウンの対談本。松岡正剛はあまりに有名だが、エバレット・ブラウンは、日本滞在のアメリカ人で、日本に伝承される食や生活の知恵、心身の調和、自然への畏敬の念などを実践的に追求する。二人の対話を通して、日本の古い文化と新しい文化との間に深いつながりがあることが洞察される。とくにアニメ・マンガ・コスプレ・ファッションなどに無意識のうちに伝統的なものが表現されているという指摘に教えられた。(この部分かつて書いた短評より再録)

対談本なのでまとまった論理展開があるわけでないが、随所に深い洞察にもとづく発言があって興味尽きない。ここでは例よってこのブログのテーマに関わりのある話題をいくつか取り上げてみよう。

以下は松岡の発言。西の文化は一神教を基盤とし、二分法的だ。善と悪・光と闇・男と女などとしっかり分けて論理的に考える。一神教の多くは砂漠的な風土で生まれたため、それは砂漠的思考法ともいえる。砂漠は厳しい環境で、右にオアシスがあるかも知れないが、左は灼熱の砂漠が続き死んでしまうかも知れない。だから判断を早くするため、話し合いで結論を先延ばしするのではなく、指導者格の一人が決断をしなければならない。一神教的なリーダーシップにより右か左かの二分法的な思考法が必要とされるのだ。これは昨日の「文化心理学」の用語でいえば「分析的思考様式」に対応するし、男性原理の思考法である。

東の文化は、多神多仏の社会で、森林型の文化だ。森は水も湧くが、獣もいればスコールもある。天候や自然の動きが読めない。だからしばらく待って状況をうかがうとか、多くの意見を聞いてまとめるとか、いわばマンダラ的な思考になる。リーダーは複数いるし、待つとか動くとか多様な選択肢があってかまわない。そこから仏教的な多様性も出てくる。これは、昨日の用語でいえば「包括的思考様式」に対応するであろし、女性原理の態度である。私は、日本列島が一貫して豊かな森を失わなかったので、とりわけ森林型の思考が色濃く残ったのではないかと思っている。だから一神教的な思考は、根本的にはなじまないのだ。

松岡の発言は、鈴木秀夫の『森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)』のとても分かりやすいまとめになっている。松岡が批判するのは、最近の日本人の知の衰退は、西の二分法の表面的なところだけを受け取り、なんでも○×式で解決しようとするところにあるのではないか、ということだ。

しかし私には、日本人が何でも○×式で解決するようになったとも思えないし、知の衰退が顕著だとも思えない。あいかわらず「包括的思思考様式」で生きているし、庶民の全体としての判断がそれほど狂ってきているとも思えない。むしろ、マンガ・アニメを通して、西の世界の砂漠的な思考法にかなりの影響を与え始めたことにこそ注目をすべきだと思っている。

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