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今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

日本人はクリエイティブ、なぜ?(1)

2012年04月27日 | 全般
「最もクリエイティブな国・都市」は日本・東京 でも日本人は自信がない──Adobe調査

以下は、この記事の要約である。
 ──米Adobe Systemsによる「クリエイティビティー」(創造性)に関する調査

調査は今年3月から4月にかけ、米国、英国、ドイツ、フランス、日本の 18歳以上の成人5000人を対象にオンラインで実施した。

「最もクリエイティブな国」として36%の回答者が日本を挙げ、米国の26%を10ポイント上回ってトップだった。 英仏独では日本を挙げた人がトップだったが、 米国と日本では米国を挙げた人が最多だった。

「最もクリエイティブな都市」として挙がったのは東京が30%。 ニューヨークの21%、パリの15%を上回っている。英仏独に加え、米国でも東京だと答えた人がニューヨークを挙げた人を僅差ながら上回っていた。 一方、日本ではニューヨークを挙げた人が最多だった。

「日本以外では各国の人々が自国に対して持つプライドが明らかに示され、 英、独、仏の回答者は自国とその都市が日本の次に最もクリエイティブであると考えていた」 ただ、自らを「クリエイティブだ」と考えている日本人は19%にとどまり、ダントツの最下位。

全体の52%が「教育システムにおいてクリエイティビティが抑圧されている」と感じ、特にまた多くはクリエイティビティーは教育システムに必要だと考えているという。


《私の論評》
この記事には、二つの気になることがある。一つは、これらの国の人々により、日本がいちばんクリエイティブな国と思われているのは、どのようなところがクリエイティブだとみなされているのかということ。もう一つは、日本人自身は自分たちをクリエイティブだとは思っていないという、世界の見方と自己認識とのギャップの問題だ。

まず一つ目。20世紀後半から今世紀にかけて世界の産業や生活をもっとも大きく変えたのは、IT革命やインターネット、それらに関連する一連の製品化などだろう。それらの多くはほとんど米国からもたらせれている。最近でいえば、スマートホンなどもその好例だ。にもかかわらず米国ではなく日本がダントツでクリエイティブな国とみなされているのはなぜだろうか。

おそらくこういうことだ。米国はたしかに時代を変える革命をもたらした。しかし、その事実と米国民が大衆のレベルから見てもクリエイティブといえるかどうかとは同じではない。庶民・大衆のレベルで見れば、圧倒的に日本人の方がクリエイティブだという印象が世界にいきわたっているのだ。

そういう日本のイメージが広がった大元は、やはりマンガ・アニメの人気だろう。そこに自分たちになかった新しい発想や自由な表現を見て、日本人はクリエイティブだと感じるのだ。たとえばヨーロッパの都市や人は、その宗教に根ざした文化によるのか、意外と保守的だ。そうした目から見ると日本発のポップカルチャーは驚くほど新鮮に見えるらしい。ボーカロイドから生まれたアイドル・初音ミクのライブに熱狂するというのも、世界の「常識」を覆す出来事にちがいない。そういう「変なもの」が次々日本から生まれてくるのだ。

★マンガ・アニメの創造性については次の記事を参照のこと→マンガ・アニメの発信力の理由:記事一覧

ファッションジャンルで日本の存在を急速に世界の若者に注目させたものに「ゴスロリ(ゴシック&ロリータ)」がある。ゴシックファッションをロリータと結びつける独創的な発想は、日本以外では生まれえなかった。その自由な発想に驚くのだ。マンガ・アニメやファッションを通して、世界の若者の眼は東京に向いている。「東京には選択の可能性がある」、そう感じさせる何かが東京に、そして日本にあるのだ。

インターネット上で日本関連の動画に世界から寄せられるコメントを見ていても、大衆レベルでの日本人のクリエイティビティに驚いている様子が分かる。たとえば日本の高性能トイレを紹介する動画はYoutubeでもかなり多い。そこまでトイレにこだわる日本人に興味津々、やはり日本人は変だと笑うコメントも見れるが、そのテクノロジーや「創造性」に驚くコメントも多い。自動販売機もよく紹介されている。その高性能さや種類の多さ、温かいものと冷たいものが同じ販売機で売られていることやカードを触れるだけで買えることに驚くコメントが多い。

例を挙げればまだまだありそうだが、つまりは、こういう大衆レベル、生活レベルから生まれてくる「創造性」では、日本が世界を圧倒していると見なされていることが、調査の結果にも反映されるのだろう。

二つ目は、世界の見方の日本人の自己認識とのギャップの問題だ。日本人が、自分たちは創造性がないと思っているのもある意味で無理もない。なにしろ日本人は、明治以来ひたすら欧米の真似をし続け、「猿まね」日本人と言われ、自分たちもそう思ってきたのだから。しかし、そういう日本人の自己卑下的な傾向、「辺境人」根性に変化が現れはじめたことは、最近このブログでも詳しく論じた。(《関連記事》を参照のこと)

そういう変化の中でももっとも遅れているのが、このクリエイティビティにかかわる自己イメージなのかもしれない。日本が、創造性や独創性を育てる教育に力を入れているとはいえないし、むしろ個性を殺して集団に協調することを重視する教育を行っていると思っている。だから日本人に創造性や独創性などあるはずがないという思い込みが根強いのだろう。

しかし、世界から見ると現実はどうも逆のようだ。世界の認識とのギャップが大きいことこそが日本人の問題点なのだ。私たち日本人がこのような自己イメージを、現実に合わせて変えていくべき時に来ているし、実際変わっていくにちがいない。

《関連記事》
『日本辺境論』をこえて(1)辺境人根性に変化が
『日本辺境論』をこえて(2)『ニッポン若者論』
『日本辺境論』をこえて(3)『欲しがらない若者たち』
『日本辺境論』をこえて(4)歴史的な変化が
『日本辺境論』をこえて(5)「師」を超えてしまったら
『日本辺境論』をこえて(6)科学技術の発信力
『日本辺境論』をこえて(7)ポップカルチャーの発信力
『日本辺境論』をこえて(8)日本史上初めて
『日本辺境論』をこえて(9)現代のジャポニズム
『日本辺境論』をこえて(10)なぜ若者は伝統に回帰する?


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20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (pk)
2012-04-27 16:02:38
個人的には、日本が特にクリエイティビティーという事は無いと思う。
ただ日本は欧米とは宗教や価値観が違うのでタブーも違うし優先順位も違う。
この違いから生まれる発想やモノが欧米にはクリエイティビティーに見えるんじゃないか。
米国、英国、ドイツ、フランスたって、結局同じキリスト教文化圏で、基本的な価値観は共通なワケだし。

欧米日以外は、クリエイティビティーを支える社会や技術がまだ足りないか、
パクリ野放しwでまだまだなんだろう。
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Unknown (通りすがり)
2012-04-27 16:59:50
>米国、英国、ドイツ、フランス、日本
日本以外は白人の国、キリスト教文化だからね・・・
管理人さんの言うことももっともですが、全く違う文化だから選ばれやすいという面もあるんですよね。

これ、ロシアや中国みたいな大国を差し置いて、日本が比較対象に選ばれてるんですよね。
日露戦争後、非白人国家で初めて近代的国家、近代兵器を作り
国際的に白人と対等に話せるポジションを獲得してから
国民の礼儀正しさなどで、有色人種ではじめての先進国としての地位を確固とした日本。

そういういきさつを経て、白人国家と比べられることも多いですが、クリエイティブさも含めて何をお題に比較されても、好印象をもたれることが多い国なんですよね。日本って。
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Unknown (   )
2012-04-27 19:47:40
確かに日本にはクリエイティブな人間が存在する
日本にいるといかに自分が日本人の中では足を引っ張っている底辺層の存在であることが実感させられる
それから今の日本はクリエイティブな自国の人間たちを有効的にまわせていない
もっと大事にしなければいけない
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Unknown (Unknown)
2012-04-27 20:19:19
個人的には多少抑圧されてるくらいの方が
完全な自由よりは面白い発想が出来ると思ってますけどね。
制約があるからこそその範囲で出来ることを
見出す。
その能力に長けてるのでは?
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Unknown (cooljapan)
2012-04-27 23:09:02
pksさん、

クリエイティビティという言葉で何を意味するかにもよると思います。文明の原理、「世界標準」を新たに生み出すという意味でなら、これまでの日本は確かにクリエイティブとは言えませんでした。これからのある意味ではそうでしょう。しかし、大衆・生活レベルでのクリエイティビティはどうでしょうか。

いずれにせよ、日本人の創造性にいすいてはやや別の角度から、今後ブログで論じていくことになると思います。
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確かに (cooljapan)
2012-04-27 23:15:22
通りすがりさん、

まったく違う文化だからクリエイティブと見られやすいというのは確かにあるかもしれません。ただ、文化の最先端の部分で、なおかつ自分たちの伝統からも影響された新しいものを生み出す国、とみなされる国は、他にそれほど多くはないのではないでしょうか。
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集団的にクリエイティブ (cooljapan)
2012-04-27 23:22:26
>確かに日本にはクリエイティブな人間が存在する
日本にいるといかに自分が日本人の中では足を引っ張っている底辺層の存在であることが実感させられる

個々にクリエイティブな日本人もいるでしょうが、私はむしろ日本人は集団的にクリエイティブなのだと思っています。高性能トイレも開発チームの成果です。初音ミクの作品も多くの人の共同作業の結果です。私はむしろそういう集団性から日本人の創造性を見てみたいです。大衆レベルからの創造性という特徴と関係していると思いますが。
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日本特有の抑圧 (cooljapan)
2012-04-27 23:29:21
>個人的には多少抑圧されてるくらいの方が
完全な自由よりは面白い発想が出来ると思ってますけどね。
 
確かにそれはあるかもしれません。日本人は、中国、インド、ヨーロッパとさまざまな文化を自由に吸収してタブーなしに自由に組み合わせて、そこから独特なものを生み出しているけれど、そこには日本社会特有の無意識の抑圧や制限が働いているかもしれません。それもまた日本文化の独自性につながるのかもしれませんが。
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Unknown (Unknown)
2012-04-28 08:44:38
>これまでの日本は確かにクリエイティブとは言えませんでした。

えーっと、「日本が特にクリエイティビティーという事は無い」てのは、「特に」であって、
「日本がクリエイティビティーに劣る」って意味じゃ無いつもりなんだけど。

ただその現れ方が他の国と異なっている為に、その独特の現れ方が、他の国からは「独創的」と見られ易いのでは?って事。

絶対的な原理で動いていない分、タブーも少ない日本はクリエイティビティーの発揮しやすい国だと思うな。
他の国みたいに、「この行為は神の御心に背いてないか?」って悩む事も無かったワケだしw
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Unknown (Unknown)
2012-04-28 10:46:17
>そこには日本社会特有の無意識の抑圧や制限が>働いているかもしれません。それもまた日本文>化の独自性につながるのかもしれませんが。

具体的にひとつ例を挙げますと発泡酒や軽自動車があります。
酒税や自動車税といった税金のルールを逆手に
とってビジネスチャンスに変えた手腕は見事だと思っていますよ。
タックスフリーな国ではけっして生まれない商品(アイデア)といえるでしょう。
他にも制約があるからこそ生まれたものと云うのはたくさんあります。これも独自文化といえるでしょう。
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