南アメリカの文明の起源を考えようと思い、「南海文明・グランドクルーズ・・南太平洋は古代史の謎を秘める」という荒俣宏氏・篠遠喜彦氏共著の本を読んでみました。
2001年に南アメリカの西部沿岸から東太平洋を横切るツアーで、インカ帝国、ガラパゴス諸島、イースター島を含む100日間の船旅に同乗されたお二人が乗客相手に講演会をした時の記録です。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
荒俣氏のお話の部分をご紹介します。
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(引用ここから)
太平洋と、南米の太平洋側についての、時間線を非常に遠くへと引いたお話になるかと思います。
南米大陸の太平洋側には非常に大きい山脈が3本、川の字のように縦に連なっていて、1番大きい山脈は、アンデス山脈です。
これは、ものすごく長く続いておりまして、先の方はさらに北アメリカの方までずうっと続き、非常に大きなアメリカ両大陸を繋ぐ「南北の背骨」のようなものです。
太平洋側は、平地が非常に狭くて、すぐに山になり、「背骨山脈」がいわば、西と東を分けているんです。
これが南米大陸の非常に大きな特徴です。
ブラジルの方は、非常に大きなアマゾン河があってジャングルになっておりますが、太平洋側は全く違う。
3つの大きな山脈はいずれも非常に標高が高く、6000メートル級、その一部は南半球で一番高い山々です。
しかも、ほとんど火山帯ですから、いつ火山の爆発が起きるかわからない。
現に噴火している火山もたくさんあります。
ということは、地震がやたらに多い。昔からたくさんの地震がありました。
どうしてこんなに火山があるのか?
まず、大西洋の地理的特徴は、この大きな海洋に、島がほとんどないことです。
太平洋には、ポリネシアとかミクロネシアとか、さまざまな島がありますが、大西洋にはほとんど島がない。
大西洋は、ちょうど真ん中がぱっくり二つに割れて、ものすごく深い海溝があるからです。
それが今現在も、どんどん割れている。非常に大きな力が加わっていって、割れている。
そして、その両側に向かって非常に大きなプレートが動いています。
それが、南米大陸を、東側・アマゾン河の方からどんどん押しているんですね。
押されるので、南米大陸は西側にずうっとしわ寄せができて、一番太平洋側に行くと山のようにふくれあがってしまうんです。
また、「地上絵」で有名なナスカ沖合の海底には、ひび割れのように、プレートが合わさったような部分があります。
私たちの日本は、太平洋の西側のプレートの上に乗っています。
ナスカ沖の海底は、アメリカのプレート、南太平洋の方のプレート、それから南極の方のプレートが全部つながって接し会っているのです。
それが東の方からずうっと押されると、どうなるか?
海中にある非常に大きな岩盤が、南米大陸の下に入り込みます。
上からどんどん押されますので、ぎゅーっという感じで中に入ります。
大きな力がまた、南米大陸に働いて、両方で押しくらまんじゅうをしている状態だと思えば間違いありません。
これがアンデス山脈ができた原因です。
南米大陸の太平洋側は、どんどんどんどん、毎日陸地が上昇しています。
アンデス山脈は、大きく分けると3つの線で分かれるんですが、一番太平洋側は「黒いコルデエラ」と言います。
「黒アンデス」、、黒い色をしている。
これはナスカの「地上絵」ができあがるメカニズムとも共通しているのですが、なにしろ太陽がギラギラ反射していますので、陸上の砂が化学反応をおこして、ほとんど黒くなっています。
アマゾン川にある山塊は、「白いコルデエラ」と言っています。
こんな赤道の真下なのに、非常に高い山がそびえて、雪が積もって、たくさんの氷河があります。だから「白」なんです。
真ん中にはたくさんの湖があります。
クスコ近くのチチカカ湖は、非常に有名ですね。
たくさんの湖の多くは、塩水なのです。
もともと海だったのが、200万年~300万年の間に隆起して、塩を含んだ湖となりました。
山と山の間ですから、水が入る余地がありません。
したがって太陽に照らされて干上がって、塩水の濃いものが出来上がりました。
岩塩など、さまざまな塩がとれる不思議な場所になっています。
リマの周辺あたりも、ちょっと山の方に行きますと、地面を掘れば海の中にいたはずの貝の化石が山のように出てきます。
また、こういう造山活動や地殻変動の非常に激しい場所ですから、鉱物がたくさん採れます。
火山性の場所で採れるのは、金であります。
金はだいたい銀といっしょに採れることが多いので、銀が非常に豊富な理由もこういう自然の力によるのですね。
太平洋側の海は、赤道の真下の熱帯であるにも関わらず、「フンボルト海流」という寒流が流れています。
太陽がギラギラ照っているにも関わらず、寒流が流れているので、海の中はものすごく冷たい。
海水温は、場合によっては10度くらいです。
下から上がってきた寒流と、空中の暖かい空気が接すると、海岸のあたりでは、そのなごりとしてたくさんの霧が発生しますが、内陸に入ると、もう霧もなく、完全に乾いた空気が陸上をずっと覆ってしまう。
ですから山の上もカラカラで、太平洋側もカラカラです。
ペルーという国は、半分は湿度90パーセントの熱帯であるにも関わらず、後の半分は湿度のほとんどないカラカラの状態になっているのです。
リマとかナスカあたりは、2年間に雨は10分から20分間降るだけ。
もう、降らない、と言ってもいいと思います。
こんな状態なんですが、不思議なことにナスカには水が出て、洪水になることもあります。
なぜならばアンデス山脈の上の方に降った雪が溶けるシーズンになると、水がどっと下へ流れてくるということです。
(引用ここまで)
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雪月花、山紫水明、白砂青松、春夏秋冬、目にわかば 山ホトトギス 初鰹。。
こういったしっとりとした日本の風土とはかけ離れた、峻厳過酷な南アメリカの風土の条件に、改めて畏怖の気持ちを感じます。
この、人をはばむ自然の中で営まれてきた、永劫とも言える人間の精神史がはらむ秘密の世界に、おののきを感じます。
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