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前田耕作氏の「宗祖ゾロアスター」を読んでみました。
筆者は後書きで
「ゾロアスター伝を、切れ切れの情報をつなぎ合わせて書いてみようと思い立った。専門家たちの情報はどれもそっけないものばかりであった。どれも歴史的に裏付けできないからである。」
と書いておられました。
ゾロアスターと至高者アフラ・マズダーの会話の箇所を、ご紹介させていただきます。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
*****
(引用ここから)
ゾロアスターが生まれてから30年の歳月が流れたあるとき、中春の祭を祝う村へ招かれて行くことになった。
祭に向かうため、平原を貫き走るただ一本の道を辿る途中、彼は眠気に誘われて、ふとまどろんだ。
彼はその時見た夢の中に、未来の弟子の姿を認めたという。
祭が始まり、45日が過ぎた。
ゾロアスターは村を去り、川のほとりにやって来た。
ゾロアスターが三筋目の川まで来たとき、彼は南方より人が来るのを見た。
そして四筋目の川を渡り、右足を川よりあげて衣服を身に着けた時、その人が正面にやって来た。
その人は手に白い枝をたずさえたオフルマズドの使者ヴォフ・マナフであった。
ヴォフ・マナフは輝くばかりの美しい姿をしていた。
髪は巻かれ、衣服は断ち目も縫い目もない絹とも見えるものであった。
身の丈はゾロアスターの9倍もあった。
アフラ・マズダーは自らの聖霊スプンタ・マンユを通じて6柱の下位の神格(精霊)ヴォフ・マナフ、アシャ、フシャスラ、アールマティ、ハウルワタート、アムルタートを現出させた。
アフラ・マズダーより発するこれら6柱の偉大な存在、中でもヴォフ・マナフ(良き意図)は、アフラ・マズダーにより最初に創造された者であり、人々を導く助力者である。
「なんじは誰なのか?誰と共にある者なのか?」
ヴォフ・マナフの発した最初の問いかけの言葉であった。
「わたしはゾロアスターです。スピターマーンの者です。
誰よりも正義を求め、神の意思を知ろうとする者です。」
ヴォフ・マナフ曰く。
「なんのために汝は努力するのか?」
ゾロアスター曰く。
「天則(アシャ=正義)のためです。」
ヴォフ・マナフ曰く。
「天則は実在するのか?それはどこにあるのか?」
ゾロアスター曰く。
「天則は実在し、輝き完璧なものであり、ヴォフ・マナフを通じて見出すことのできるものです。」
ヴォフ・マナフ曰く。
「汝と我とを創りたもうた、あの方と対話をしようではないか。
我はそのための使者としてここに来たのである。」
ゾロアスター曰く。
「よい使者を送り出された創造主は、よい方に違いない」
ヴォフ・マナフ曰く。
「精霊たちの集まる所に来たれ。」
ヴォフ・マナフが先に立ち、ゾロアスターが後についていく。
ヴォフ・マナフが9歩行く距離を、ゾロアスターは90歩で従う。
90歩行ったところで、彼は5柱の聖霊たちが集い寄る様が見えてきた。
聖霊たちとゾロアスターを隔てる距離は80歩であった。
その時、精霊たちから光が発する。
この強烈な光によって、ゾロアスターは自分の影を地上に見ることはもはやなかった。
影が消え去るということは、ゾロアスターが既に超越者の中に加えられた徴であろう。
(引用ここまで)
*****
この対話の描写は美しく、透明感があり、東洋的というよりは、西洋的な印象があります。
また、古代的というよりは、現代的な感じもします。
でも、古代にも、またいつの時代にも、時間を超えて、このようなできごとは起きてきたのであろうと思います。
本書の書き出しは、以下の文章から始まります。
*****
(引用ここから)
いつとはいえぬ昔、西方のアジアで人々の魂を深く揺るがした古い宗教があった。
その教えをアジアの荒野に開いた始祖の名によって、この宗教はゾロアスター教とよばれた。
ギリシアの人々は、自分たちの誇る「哲学の営み」を、この古き始祖より始まったという伝説をなかば信じていた。
ゾロアスター教は開宗以来2000有余年もの間、アジアの人々の心をとらえてきただけではなく、エーゲ海と地中海のかなたのヨーロッパの人々の心にも深い影を投げかけてきた。
キリスト教は長くゾロアスターのつきまとう幻影から逃れ出ることができなかった。
占星術師ゾロアスターというイメージは、ギリシア人たちがゾロアスター教と接してからずっと持ち続けてきたイメージなのである。
西方の誰一人ゾロアスターを見た者とてなく、ただただ伝説の人にすぎなかったゾロアスターが、ルネッサンスの人々はもとより、モーツァルトやニーチェに至るまで、彼らの魂を魅了し続けたのはなぜだったのだろうか?
そもそもゾロアスターとはいったいつの、どこの人なのであろうか?
私たちはまず幾世紀にもわたって深くたちこめたままの伝説の妖しい霧の中へと分け入らなければならない。
(引用ここまで)
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