ウエスティに猫な日々

日々の料理と外食、趣味の熱帯魚と読んだ本の感想と我が家の犬と猫の話。
ほか、日々のちよっとした独り言。

「 乱反射 」  貫井 徳郎

2017-07-08 19:07:37 | 
         「 乱反射 」  貫井 徳郎

            

第63回日本推理作家協会賞受賞作。 599頁、やっと読み終わりました。

「 一人の幼児の死を巡る物語である 」から始まります。
-44から1までは事件が起こるまでの経緯と、1から37までは、事件後に父親が息子の死の原因を突き止めて行く過程が描かれています。
前半は、数名の何気ない市民の日常が描かれ、何処でどのように幼児の死に繋がるのかと思いながら読んでいました。
~~~~~~~ネタバレ
新聞記者の加山聡は、最近、父が入院して母から同居も視野に入れて、妻を毎日見舞いに寄こすように催促されている。 
2歳の子供を抱える妻は、子供の世話で手いっぱいで、双方の間に立って、夫婦関係がギクシャクしだしている。
その日も、義父の入院先へ見舞いに行った帰り、加山光恵は2歳の健太のベビーカーを押しながら街路樹の横を歩いていた。
突然強風で街路樹が倒れ、ベビーカーが倒れた木の下敷きになり健太は頭を強打し出血がひどい。
救急車が到着するも、渋滞に巻き込まれ、近くの救急病院では断られ、やっと他の病院に到着したが手遅れで亡くなってしまった。

父親である新聞記者の加山聡は、なぜ我が子健太が死ななければならなかったのか調べ始める。

☆街路樹は道路拡幅のため伐採されるはずだったが1軒の反対者のため市役所が再三話し合いに行くも進んでいなかった。しかし、反対者が急死して、息子が市に土地を売却をした。
ようやく計画は進みかけたが、伐採される街路樹の話を聞き、大義名分もなく暇つぶしに主婦の田丸ハナが反対運動を始め、5年に1度の樹木診断に来た人たちを追い返していた。

☆定年後、妻に相手をされず、娘たちは独立。 今は犬のクマを可愛がり毎日散歩に行く事を楽しみにしている三隅倖造。
しかし、腰痛のため犬のふんの始末ができず、街路樹の下にさせ、放置している。

☆学生の安西寛は虚弱体質ですぐ風邪をひくが、待つのが嫌で夜間の救急外来を利用している。そのことを大学で友達に話したら広まり若者の夜間の急患が増えてきた。
☆医師の久米川治昭は、救急病院の夜間アルバイト医師。 最近、夜間救急外来に急を要さない患者が増えたのをいぶかっている。

☆榎田克子は運転に自信がないのに、免許を持たない妹と、妹に甘い両親に丸め込まれ大型車に買い替えさせられる。家の前を走る車を止めての車庫入れが苦手。

父親の調べで次々に事実が明るみに出る。

1本の街路樹の根元に放置された犬のウンチがあり、市役所に苦情の電話が入っていて、処理に来た職員が通りかかった子供たちにからかわれ処理をせずに引き返していた。
反対運動で診断ができなかった業者が早朝に樹木診断に来たが、病的な潔癖症で木の根元にウンチを見つけその木だけ診断出来ずに帰る。
たまたま、その木が根腐れを起こしていて強風で倒れた。
救急車が駆け付けたが、救急病院は混んでいて、内科医の医者は専門でないため後の面倒を避けるために搬入を断る。
他の病院を探すが、道路には放置された車があり、渋滞している。 克子が車庫入れができず、パニックになり車を乗り捨て家に入ってしまっていた。 
後続の運転者が代わりに車庫入れして無事通行できるようになったが、時すでに遅し。不運が重なり最悪の事態に。 健太は亡くなってしまった。
小さな罪の連鎖。  本人たちは、自分の行動がもたらした結果に気づいていず、加山に指摘されれば逆に自分は悪くないと反論して怒りだす。誰も謝らない。
誰も罪の意識もなく罰せられない。 唯一、極度の潔癖症で樹木を診断できなかった足立道洋だけが謝り罪を受け入れ起訴される。
~~~~~~~~
犬のウンチを放置する人には腹が立ちます。ここでもウンチがなければ木は診断され何らかの対策がなされただろうに。 
私は近所のお家の前に放置してあると持って帰りますが、犬に罪はありませんが放置した飼い主に対して嫌な気持ちになります。

自分を含め、知らず知らずに誰もが犯す、法律では裁かれないマナー違反、モラル違反。
加山でさえ、家族旅行の日、少しの家庭ごみをサービスエリアに捨てたことを思い出し後悔します。

辛い話でしたが、最後には、とことん悲しんで、この先は夫婦で乗り越えていくだろうという希望が少しうかがえました。
構成が面白く、初めは普通に読んでいましたが、前半の話が後半につながり、後は一気に読めました。



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コメント
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