アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

「非道に生きる」園子温(朝日出版社)

2012-12-15 | 

朝日出版社が出している、「これからのアイデア」をコンパクトに提供するブックシリーズ<アイデアインク>の第4弾。第3弾のChim↑Pom「芸術実行犯」は、全身たまご色でしたけど、これは桜色。う~ん、ちょっと園監督のイメージには可愛い過ぎるかも??

映画監督、園子温。ごめんなさい、作品はまだ見たことないです。なのにこの本を買ってしまったのは、NHKのドキュメンタリーで、現在公開中の映画「希望の国」の福島での撮影や上映の様子を見て、アーティストとして原発に真っ向から対峙していることがすごいし、津波と原発に痛められた地域や人々への接し方にとっても真摯なものを感じたから。「ヒミズ」も結局見そびれたけど興味は持っていました。

いやはや、ものすごいエネルギッシュな人です。
こども時代のエピソードは相当インパクトありました。小学生のときから洋画をかなり見ていて、イングリッド・バーグマンと結婚したかったらしいです。また、学校に「なんで服を着ていかなきゃいけないんだろう」と疑問に思って全裸で教室に入って行った…とか、起こした事件の数々は、これはなかなか見上げた小学生です。怒られるとよけいに闘争心燃やしたって…、先生もさぞかしお困りだったでしょうね~。
その後、映画の道を歩き始めた園監督。自分の撮りたいもんを撮って、上映に突き進む姿は、読んでて気持ちいい!なんかすごい疾走感があります。

監督は、映画にはふたつの役割があるといいます。ひとつは欲求不満を解消する、すっきりさせる「満足させる映画」、もうひとつはそれとは全く逆に、見たくない暗部を見せ、怒らせたり苛立たせたり、感情を逆なでして緊張感を生む「覚醒させる映画」。彼が目指すのは、その両方を備えたエンターテイメント。きっとそこいらの口当たりのいい映画とは対極にあるのだろうな。そういう映画は、見るのに覚悟がいる、エネルギーが必要なのです。
それでも「希望の国」は見に行こうと思っています。原発に真正面に向き合うというその覚悟を受け止めなくてはならない、と思うから。

自分が納得して面白いと思うもの以外は一切やらない、と言い切る園監督。そんなのできたら幸せだよ、とも思うけど、それを貫くためにきっと苦労もたくさんしてる。他人の評価なんて関係ナシ。映画の非道を生き抜きたいという監督からのメッセージ。

「他人に非道と言われても、自分が自分の最も良き理解者であり、パートナーであればいい。自分を見捨ててはいけません。」

日頃世間にまみれている身には沁みますな~。
「希望の国」は、滋賀県ではユナイテッド・シネマ大津で1/12から。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 名和晃平展「Kohei Nawa―TRAN... | トップ | エル・グレコ展@国立国際美術館 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
絶望にさえ裏切られ・・・ (アンクル)
2012-12-22 23:52:06
“愛のむきだし”にドギモ抜かれて・・・
はまってしまいました・・・園子温!
“ヒミズ”と“希望の国”は、ちょうどウラオモテの関係になっていると思います
特に“希望の国”は、また昔の政権に戻ろうとしている今こそ見るべき映画だと思います
拙ブログの批評をトラックバックさせていただきます
(恥ずかしながら・・・)
返信する
本おもしろかったよ! (art-around)
2012-12-24 20:52:38
お元気ですか~?コメントありがとうございます。
「希望の国」ぜひ見に行きたいと思います。
アンクルのブログ読んでると、ちょっと勇気いりそうだけど…
本もおもしろかったので、機会があればぜひ読んでみてください!
こんな風に闘ってるアーティスト、応援したいですよね。


返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

」カテゴリの最新記事