世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

野田総理の正体 “ドジョウ”というより“空気”に近い隠遁術の使い手?

2011年09月01日 | 日記
それでも「日本は死なない」これだけの理由──なぜ欧米にできないことができるのか
増田 悦佐
講談社


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野田総理の正体 “ドジョウ”というより“空気”に近い隠遁術の使い手?


党の幹事長に輿石を起用し、輿石に参議院会長の兼務を認めた瞬間に、筆者は野田佳彦の意図を察した。マスメディアは閣僚人事を俎上に上げて、“ああでもないこうでもない”と論評するだろうが、組閣などと云うもの党内の力学を野田がどう捉えるかで決まるだけで、大臣が誰になろうと、各省庁の構造的意志をコロコロ変えさせる事は現状困難だ。つまり、反財務・外務・経産・防衛の人材を送り込んでも、その大臣はつんぼ桟敷と過激なサボタージュに遭うのが落ちで、徒労なのだ。本格的公務員制度改革を実現するまでは、迎合と主張を7:3くらいで実行するのが組織と云うものの実態だ。

野田総理が、どれほど財政再建派であっても、財務省の画策する増税一本槍の政策を実現することが現実的でないことくらい判っている。欧米の経済危機はヒタヒタと大きな足音で迫っている。欧米や日本の国家財政だけを健全にして、マクロ経済の辻褄合わせをしても、実体経済が好転する可能性は皆無だ。ユーロのソブリン依存体質に赤信号が灯り、ドイツの経済だけに頼る状況は長くは続けられない。米国の金融経済唯一主義も完璧に破綻している。

米国市民社会のマーケットにはチャイナ製品が溢れ、今さらUSA製にチェンジするなど、妄想に過ぎない。 経団連が死ぬほど望むTPPも、おいそれと進むことのできる自由貿易の枠組みではない。仮に進めるならば、中国・韓国を引き込む戦略を立てないことには、話にならない協定であることは自明だ。本来であれば、アジア基軸のTPPであるべきで、米国が主導している時点で無理があるのだ。まだ米国は世界の宗主国と云う幻想から脱却出来ていないのだろう。

野田総理がどれ程親米主義者だとして、隷米前原のように政権のすべてをジャパン・ハンドラーズにダダ漏れさせる危惧はない。中国を無視して今の日本経済そのものが成り立たないのだから、“嫌中”になりたくてもなれない。「文芸春秋」で書いたような資質は個人的に堅持するだろうが、議院内閣制によって選ばれた、謂わば機関的存在の総理がおいそれと自説で首相の実務に当たることは不可能だ。

野田総理にとって、喫緊の課題は限られてくる。一つは経済対策が打てるかどうかだ。円高是正問題は一国で行える問題ではない。為替介入などはアリバイ工作であり、1兆円国富をつぎ込み1千億稼ぐようなもので、差し引き9千億の損害を与える。日本が独自に出来る事は、“日銀の金融緩和”と云うお題目を実質的なものに変えさせることである。つまり、マネーサプライを現ナマで用意させるしか手立てはない。3%以内のインフレであれば、日本の経済成長にも大きく寄与する。

大震災の復興復旧が次に来る。これも第三次補正予算で目途をつけることになるが、虚報のNHKが重用する村井宮城県知事のような経団連オタクのような首長の思うようには行かず、復興構想会義の提案にも準ぜず、与野党の利権構造の中で決着を着けるしかないのだろう。ゼネコンと各市町村長がタッグを組んだ時、復旧復興は軌道に乗る。県知事に多くを期待するのは無理筋、県と云うもの何故か住民から乖離した存在だと云う事実に目を向けておくべきだ。

多くは、マスメディアや識者の論調と関わりなく、泥臭く進んでいくことになる。 中央から地方への構造転換なしに、被災地だけを東北州構想で、公共工事の枠組みを脱して等というのは、アカデミズムの世迷言に過ぎない。地域により、色とりどりの復興が姿を現す方が日本的文化である。こんな処までグローバリゼイションを持ちこむのは、金融勢力と学者の戯れである。勿論一部で再生可能エネルギーの国策プロジェクト等々が発生することは、新規原発開発が非常に難しい状況における電力供給に欠かせないだろう。また新規産業の創設の意味でも大いに進めるべきだろう。

問題は原発の扱いだ。現時点での福島第一原発の終息は目途がまったく立っていない。放射能汚染が何処まで拡がり、周辺住民にどのような影響を与えているか、或いは今後与えるか、真実を語れる人物など存在しない。現時点だけでも、安全だと云う政府の説、極めて危険だと怒り狂う説。どちらにも一分の言い分はあるが、どちらも決め手に欠けている。此処でも県行政の不備が露呈しており、市町村長が個別に孤軍奮闘している実態が観察できる。

この福島原発事故問題の取り扱いは、現時点でも充分に重要だが、これ以上悪化しない事が前提で話は進んでいるが、予断を許す状況とは思えない。この問題の処理を細野レベルに委ね続けることが選択として正しいのか、筆者は甚だ疑問に感じている。国家の経済的破綻と事故処理の整合性もあるだろうし、国民の生命財産を守ると云う、異なる次元の問題を同時処理しなければならず、総理乃至はそれに準ずる政治家が責任を引き受け、果断に処理する能力が求められるだろう。マスメディアの報道が薄れているが、この問題は国家の存亡に関わる重要案件だ。

野田新政権が何を優先的に行うか見守るしかないのだが、筆者は民主党政権の現時点の優先順位は上記のようにならざるを得ないと考えている。野田の持論である財政再建は、2,3年後のことになると、野田自身百も承知しているように思われる。

多くの論調を見ていると、今回の代表選で仙谷由人の戦術が功を奏したと言わんばかりの主張が増えてきたが、仙谷は敗れたのだと思う。前原の政調会長起用はマスメディアが主張し喧伝するほど重要なポストでないことは自明。政策に党が絡むのだ、政調の決断を持って政権の政策は決定されると云うことのようだが、あの前原誠司に調整能力があると誰が思うのだろう。あらゆる場面で頓挫するだろう。野田が仕掛けた罠のようにも見えるのは筆者だけか?

東京新聞が仙谷由人側の言い分として、野田勝利は仙谷シナリオ通りだとリーク情報を東京新聞に流したようだが、読売や朝日でないところが味噌だ。ニュートラルな東京新聞にリークすることで、“小沢破れたり”の信憑性を高めようとしたのだろうが、仙谷の凋落は明白だ。内閣においても重要閣僚に起用される可能性は極めて低い。ウッカリすると、政権中枢から放逐され、東京地検特捜部の小沢関連捜査に携わった検事達の二の舞のリスクが生まれている。

野田総理は自らを“ドジョウ”と評したが、どうにも掴みどころがない“空気”のような戦術で、与野党を最も困惑させているが、最も困惑しているのがマスメディアであり霞が関だ。多分米国は“どうなっているのだ?”と激しく困惑しているだろう。

この“空気”のような掴みどころも、攻めどころない政権と云うのは、あらゆる反民主党勢力にとって厄介極まりない状況が当分続くに違いない。筆者も政治ブログを書くにあたり、非常に苦労させられる。野田総理の空気のような政権運営は、或る意味妙手である。仙谷を放逐すれば、意外に2年の長期政権と云う芽もあるのかと、少々調子が狂ってくる(笑)まぁ、ここに至り、学級委員会政治にピリオドを打つ、と心ある民主党議員達が腹を括ったと信じたいものである。地に足のついた政治を行えるかどうか、数日中にその布陣が判るだろう。幾分先への明かりが見えるなら”政権交代”の意味がゼロではなくなるということだ。

日本人が知らないアメリカの本音
藤井 厳喜
PHP研究所


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