●資本主義は“グローバルと金融”に逃げ込み 民主主義破壊
本題の前に、日本の首相の、「イスラム国」を挑発したが故に、身代金の支払いを迫られた日本政府は、ひたすら周辺国間をウロチョロするばかりで、無為な時間を費やし、23日(金曜)午後2時50分には、支払期限が切れる事態になっている。この制限時間はかなり曖昧なので、身代金が支払われる脈があるようなら、「イスラム国」も不要に殺害に至るとは限らない。日本の首相を脅すべき材料出尽くしになるような軽挙には出ないと筆者は推量する。
西側メディアの現在のプロパガンダ戦術は、「イスラム国」は原油の暴落により、資金面で苦しんでおり、イスラム・イデオロギーのジハード的集団ではなく、ただの世界の追いはぎに過ぎないと言う言説を、披露している。つまり、イスラム教信者と異なる、ただの強盗集団だ、と云う解説に極端に統制された言論を振り撒いている。しかし、それは、西側の都合の良い解釈であり、「イスラム国」と交渉のテーブルにつくことが出来ない、米英にせよ、日本にせよ、偉そうに解釈を加える情報など持っているわけがないとは当然だ。
そんなに確信的に「イスラム国」の実態が把握できているのなら、交渉窓口くらい伝手はあるのが当然だ。つまり、西側諸国のプロパガンダ報道は、これを奇禍として、「イスラム国」の魔女戦略に出たに過ぎない。この問題は、前回前々回で語ったように、日本を中東紛争に参加させる米戦術か、或いは安倍晋三を引き摺り下ろすオバマ政権の陰謀か、その二つに一つだろう。現状では、安倍政権が今国会で成立させ、速攻で自衛隊海外派遣の実績を積むという前者の思惑が優勢に思われる。その意味では、敢えて罠に嵌ったフリをして、戦争の出来る国として、9条を無力化しようとしている可能性が最も高い。あの二人は、そういう意味で、良い面の皮なのだろう。
ところで、本題について、多くを語る時間が少なくなった。ピケティの「21世紀の資本」では、かなり資本主義の修正点を明示しているが、それでも彼は、ギリギリ資本主義の土俵からは降りていない。まだ次なる資本主義に変わるステージを用意したわけではない。ただ、このままの、金融中心の資本主義が、人間を強欲なマネーの奴隷にして行く状況からの打破を論じているのだから、かなり穏健な考えの範囲にいる。現在進行形の、IT金融主義(金融資本主義)の行きつく先は、通常の人類と富裕な人類の激突が必ず起きるわけである。結局、極論を言えば、弱者が強者に切れるわけだ。弱者がキレて行動する場合、それがテロ的な行為になるのは、倫理も道徳も普遍的価値もあったものではなく、憎しみに満ちた殺戮の連鎖になるのだろう。
そのような未来予測が可能であるにも拘らず、マネーと云う獰猛な無機物は、魂でも有しているように、人類の99%を苦しみに追い込むのだから、どこかで止めに入らなければならない。第三次世界大戦で、ボロボロになる方法もあるが、マネーの奴隷にならざるを得ない(金融資本主義が可能なドルベース)からの脱却が、穏健な一つの手法だろう。今一番有力なのは、通貨の金本位制への移行なのだろう。以下、参考になる記事とコラムを掲載しておく。
≪ 1%の最富裕層、2016年までに世界の富の半分以上を独占へ=調査
[ロンドン 19日 ロイター] - 国際非政府組織(NGO)オックスファムの調査で、世界の人口のわずか1%にあたる富裕層が、2016年までに世界の富の半分以上を独占する見通しであることが明らかになった。 スイスのダボスで世界経済フォーラムが開催されるのを前に発表されたリポートで、最富裕層が独占する資産の割合は2009年の44%から2014年に48%へと上昇。
このままのペースだと、2016年に50%を超えるという。 オックスファムの幹部は「格差拡大への対策が失敗すれば、貧困対策は数十年前の状態に戻る」と指摘した。 オックスファムによると、世界全体で上位80人の富豪の資産が、下位50%(約35億人分)の資産と同水準だった。 上位1%の平均資産は1人当たり270万ドル(約3億2000万円)という。 ≫(ロイター)
≪ 古市憲寿氏「東京五輪・リニアもおじさん暴走に気をつけろ」
東海道新幹線に乗るたびに疑問に思うことがある。狙ったように間が悪いタイミングで訪れる車内改札 だ。海外の列車でも検札が行なわれることはあるが、その場合は駅での改札がない。一方、駅に改札がある場合、検札がないのが当たり前。事実、日本でも東北 新幹線や成田エクスプレスでは検札はない。 それなのに、東海道新幹線だけは、かたくなに車内改札を続けている。しかも、二重で改札をしているくせに、切符をなくした場合は再購入を求められる。本当に意味がわからない。
不可解な東海道新幹線の車内改札。それには雇用の確保といった彼らなりの理由があるのだろう。しかしJR東海に限らず、内輪の論理で物事を進めようとするあまり、世間とのズレが発生し、外部の人間が不便を被る出来事が日本では相次いでいる。
2014年に『だから日本はズレている』(新潮新書)という本を出版したのだが、僕はその中で「おじさん」という言葉を使った。ここでいう「おじさん」 とは、ただの中年男性という意味ではない。僕が「おじさん」と名指すのは、いくつかの幸運が重なり、既得権益に仲間入りすることができ、その恩恵を疑うことなく毎日を過ごしている人々のことである。 「おじさん」とはどうやら思い込んでしまうものらしい。東京オリンピックを開催さえすれば日本経済は復活する。リニアモーターカーが開通さえすれば、東京と名古屋、そして大阪の経済圏は一体となり、その経済効果は計り知れない。そんな思い込みとも願望ともつかない言葉が、この国では溢れている。
少し調べればわかるが、事態はそんな単純ではない。過去にオリンピックを開催した都市や国では、確かに瞬間的にお祭り騒ぎが起こるものの、経済効果は期待したほどではなかったことがわかっている。また、かつてのニュータウンがそうであったように、移動にかかる時間がいくら短くなったところで経済圏はそう 簡単に一体とならない。 ≫(SAPIO2月号:文/古市憲寿(社会学者)
≪ コラム:資本主義の「病気」がもたらす長期金利低下
[東京 16日 ロイター] - 米欧日の長期金利が低下の一途をたどっている。市場では、ユーロ圏経済の低迷や原油安を発端にしたリスクオフ心理の波及などが原因として指摘されているが、世界経済を俯瞰してみれば、高いリターンが期待できる投資先が少なくなっているということではないだろうか。
ある意味で資本主義の「病気」とも言え、この停滞感を突破するには、低コストのエネルギー源の開発などの抜本的なイノベーションが不可欠だと考える。
<10年日本国債は一時0.225%>
16日の東京市場で、日本国債の10年最長期債利回りJP10YTN=JBTCは一時、0.225%と過去最低水準を更新した。
15日のNY市場で10年米国債利回りUS10YT=RRは一時、1.756%と1年8カ月ぶりの低水準を付け、30年債US30YT=TWEBは2.393%までいったん低下し、過去最低水準を更新した。
15日の欧州市場では、スイス中銀の対ユーロ相場上限の撤廃を受け、同中銀によるユーロ建て国債買入減少の思惑から、フランス、ベルギーの国債価格が下落した。だが、10年独国債利回りDE10YT=TWEBは過去最低の0.402%を付け、10年イタリア国債利回りIT10YT=Tも1.74%と過去最低の1.71%近くで取引され た。
<懸念される世界的な需要不足>
米欧日の長期金利低下には、多様な要因が指摘されている。短期的には、15日のスイス中銀による対ユーロ相場上限の撤廃と利下げで、米国債や独国債に資金が流入したことや、スイスフラン高につれた円高の進行で、日本株に売りがかさんだなどのマネーフローの波及が影響したと言えるだろう。 また、年初から進んでいる急ピッチの原油安で、ロシアなどの産油国経済が圧迫を受けるとの観測から、通貨と株価の同時安が進行。合わせて米シェール業者の発行したハイイールド債や関連するプロジェクトファイナンスへの懸念から、リスクオフ心理が広がり出したことも、世界的に株価の下押し要因として意識されている。
さらに欧州中銀(ECB)の量的緩和決断観測の背景にある欧州経済の低迷や、中国経済の不透明感の高まりも、世界的な需要不足に対する不安感を強めている。
ただ、こうした多様な現象を俯瞰して見れば、米欧日の中銀による超金融緩和政策でマネーが過去最大規模に膨れ上がっているにもかかわらず、高いリターンを見込める投資が実物経済に見当たらず、様々なマーケットに流れ込んだマネーも、結局のところ、最近の原油や非鉄金属などの価格急落を見て、安全資産に流れ込んでいるということではないか。
少なくとも、実物経済には高いリターンを見込める事業が少なくなっている可能性が高いと言えるだろう。
<世界的な長期金利低下を予見していた水野氏>
このような未曽有の世界的な超低金利現象を「予見」していた経済学者が日本にいる。日本大学・国際関係学部の水野和夫教授だ。昨年3月に刊行され人気書籍の上位にランクインした「資本主義の終焉と歴史の危機」の中で、「金利はすなわち、資本利潤率とほぼ同じだと言える」とし、「利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していない証拠だ」と主張している。
そのうえで「資本利潤率の著しく低い状態の長期化は、企業が経済活動をしていくうえで、設備投資を拡大することができなくなったということ」で、「裏を返せば、設備投資をしても十分な利益を生み出さない設備、つまり過剰な設備になってしまうことを意味する」と分析している。
この水野教授の指摘に説得力を持たせるような現象が米国で起きている。米連邦準備理事会(FRB)は、今年4─6月にも利上げに踏み切るとの観測が盛り上がっていたが、米長期金利は2%台から1.7%台まで低下している。
これまでの経験では、利上げ観測が台頭すると、その背後にある景気上向きのトレンドをマーケットがとらえ、長期金利は上昇基調に入る。
だが、足元の米債市場が示しているメッセージは、他の実物投資に向かうよりも、米国債投資にマネーを向けた方が効率的だ、ということだ。つまり、米景気はFRBが予想しているトレンドよりも下振れした推移を示す可能性があるということにほかならない。
<長期停滞の回避に必要なイノベーション>
米欧日の長期金利が、過去の水準よりも低いトレンド線に推移して新たな均衡(ニューノーマル)を形成するようなら、それは低成長が長期化することを意味する。したがって現在進行中の長期金利の低下基調を「一時的現象」として、軽視するのは世界経済の長期的な構造変化の動きを無視することになるだろう。
この「長期停滞」の動きを変えるには、どうしたらよいのか。 水野教授は「より速く、より遠くへ、より合理的に」という資本主義を駆動させてきた理念を逆回転させ、「よりゆっくり、より近くへ、よりあいまいに」という理念に基づき、ゼロ金利、ゼロ成長の下で豊かさを意識できる社会に転換すべきだと述べている。
私は、この部分でやや意見を異にしている。最新の宇宙物理学では、宇宙に存在しているのは、従来から言われていた漆黒の闇(ダークマター)ではなく、多様な波動を持ったプラズマという説が登場している。 この説に従えば、宇宙空間からこのプラズマを取り出してエネルギー化することができれば、ほとんどコストなしでエネルギーを利用できるようになり、現在の経済構造が一変することになるだろう。 このような抜本的なブレークスルーが、どこかの分野で起きれば、長期停滞を回避できると思うのだが、楽天的に過ぎるだろうか。 ≫(ロイター:田巻一彦)