世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●日本政治に求められる “量から質への論争とビジョン”

2019年03月27日 | 日記

 

舵を切れ―質実国家への展望
田中 秀征
朝日新聞社



●日本政治に求められる “量から質への論争とビジョン”


最近、“お墓のお墓”と云う社会現象が話題になっている。

我が国は、根本的人口減少社会なのだが、それに輪をかけるかたちで、都市への人口集中と地方の過疎化と云う格差社会の局面が際立って見えている。

このように“お墓のお墓”が生まれたのが、先祖を蔑ろにする罰当たりな現代人と云う評価はあたらない。

ひとつは、戦後の高度経済成長期の集団就職による、地方から都会への、人の移動が、農村部と都市部と云う生活圏の違いを鮮明にしていった。

異なる言い方をすれば、都会や工業地帯と云う仕事のある国が、仕事のない田舎という国から、移民政策をしたようなものだと言える。

このような移民政策が、同一国内で起こせるのは、日本が中央集権国家だったお蔭だろう。

高度経済成長期に、都会や工業地帯が多くの労働力を必要としたのは当然だが、その頃、農村部は労働力を必要としなかったと云うファクトがないと、辻褄が合わないのだが、その辺はどうなのだろう。

これはあくまでも、筆者の想像なのだが、先ずは、農村部の「人手あまり(労働力過剰)」現象が先行したに相違ない。

この現象の多くは、農業の機械化が大きな影響を及ぼしたのは、想像に難くない。 戦前戦中の“産めよ増やせよ”の富国強兵政策のツケが農村部で明確になると同時に、農業の機械化が、過剰労働力状態を生みだした。

つまり、農村部の子供たちは、富国強兵においては、兵隊の供給源であったが、終戦と平和においては、過剰労働力と云う側面を強く持つことになった。

:ある国において、一定の期間だけ、都合のいい時期というものはあるわけで、それが、戦後の高度経済成長期だったと思う。

この、本来であれば、農村部の過剰労働力にすぎない労働力を、吸い上げる需要が、都市部や工業地帯に生まれた。

これが、わが国における、人口の大移動だったのだ。

そして、経済成長がとまり、経済縮小時代が到来することで、思いもよらない社会現象が表れることになったと言えるのだろう。

高度経済成長によって、ズタズタにされた農村部の共同体は、減反政策で、さらに疲弊し、格差と高齢化で限界集落が青息吐息で存在する状況になっている。

「地産地消」が絵空事に終わってしまうほど、地方は疲弊している。

「地方分権」等と云う言葉も、有名無実になって、日本は、ますます中央集権を強めている。

後半のインタビュー記事、大学の無償化問題への疑問の提言も、都市部への人口流にを促進させようとしている。

人口減少社会においては、一定のベクトルとして、都市の集中管理が必要になる。

しかし、その残された国土を、どのように有効活用するかが、集約させられた人々の満足度にも繋がるわけで、非常に需要だ。

つまり、人口減少国家の国力の減少は既定の路線であり、この流れに抵抗することは“骨折り損のくたびれ儲け”になるのだから、アベノミクスは、哲学的に間違っている。

いまや、日本が選ぶべき道は、“量より質”以外にないわけである。

:既得権益層に、その選択を任せている限り、どのような「質」が求められているか、議論のテーブルに乗ることはない。

その意味で、自公政権では、その質へのビジョンも見えてこないが、立憲民主党や共産党からも、この“量から質への論争とビジョン”は聞こえてこない。


≪拡大するお墓の墓 「先祖累代」もう引き継げない ドキュメント日本
【 故郷にある先祖累代の墓をどうするか、が都会で暮らす人の共通の悩みになって久しい。住居近くへの改葬や納骨堂の利用が一般化するのに伴い「墓石解体業」がビジネスとして広がりつつあるという。業者に引き取られ、縁もない場所に集められる墓石がどんどん増えている。「お墓の墓」が映す現代とは――。(大元裕行)】





:三重県西部に位置し、奈良と県境を接する名張市。林の中の舗装もされていない道を進むと、突然視界が開け、ぎっしりと墓石が並ぶ一画に行き当たった。墓石解体業の美匠(奈良県橿原市)が運営する「永代供養安置所」。御影石、大谷石……。種類の違う石材が色のコントラストをつくる。形も一般的な直方体から円柱状のものまで多種多様だ。

:江戸時代の元号が読み取れる墓碑や題目、称名が刻まれて宗派が分かる墓石、旧陸海軍の戦死者のために造られた墓石も。一つ一つを見れば、かつては家族の歴史を子孫に伝えるものとして大切に守られていたことが感じられる。 美匠の中西あざみ社長(41)によると、10年前、500坪の土地に設けた安置所には約5千基が集められている。「子供に引き継げないから墓じまいをしたい」「墓石の処理に悩んでいる」などの問い合わせは年間1千件に上る。間もなく、スペースは埋まり、近隣の土地で拡大する方向だ。

 :これまで21都府県の個人や石材店などから墓石解体の依頼を受けてきた。墓の一番上に置かれる竿石(さおいし)は1基1万円で受け取り、クレーンを使って安置所に運ぶ。定期的に清掃し、僧侶が供養する。中西社長は「色々な経緯がある墓石ばかりだが、誠意を持って接している」。

: 厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓の移転や墓じまいの際に必要な改葬の許可件数は2017年度、全国で10万4493件。5年前と比べ約3割増えた。都市への人口集中と人口減が墓じまいを選ぶ人の増加に拍車をかける。
 ≫(日本経済新聞)



≪大学無償化に異議の教授「大卒至上主義こそ問い直しを」
 大学など高等教育の「無償化」が本格化する。家計が豊かでないために進学を断念する若者を支援するのは、誰もが賛成する「よい政策」にみえる。これに対し、大阪大学大学院の吉川徹教授は「大卒学歴至上主義を無分別に押し付けるものだ」と異議を唱える。長らく日本社会の姿を分析してきた計量社会学者に、その真意をたずねた。

きっかわ・とおる
1966年島根県生まれ。専門は計量社会学で、計量社会意識論、学歴社会論に関心がある。静岡大学助教授、大阪大学准教授などをへて現職。著書に「学歴分断社会」「日本の分断~切り離される非大卒若者たち」など。

――今国会に関連法案が提出された高等教育の無償化に異議を唱えていますね。

 「本来の無償化とは、家計の所得にかかわらず、すべての学生を対象に授業料を免除したり、給付型奨学金を支給したりすることです。一方、いま政府がやろうとしている政策の対象は、3割に満たない低所得世帯の学生だけです。それを『無償化』と呼ぶのは極めて不適切で、誤解を招きかねません」

 「人材育成のための教育支援、貧困の連鎖を断ち切る――。聞こえのよい目的を掲げているため、異議を唱える人は少ないでしょう。しかし政府が消費税率を上げるにあたり、『これだけいいことに還元しますよ』というスタンドプレーにしか見えません」

――意欲や能力があるのに、経済的な理由で進学できなかった人が、進学できるようになるのはよいことでは?

 「制度が始まる2020年の18歳人口は約117万人。うち60万人超が大学・短大に、専門学校なども含めれば計90万人が進学します。でも、そもそも進学せずに就職する30万人弱の非大卒層には、何のメリットもありません。にもかかわらず、財源は全国民から薄く広く徴収する消費税です。増税分の十数%にあたる7600億円が、ごく限られた大学生などをもつ低所得世帯への支援に投じられるのです」

――いま、低所得世帯の進学率は4割どまりです。新制度でこれが8割まで上がり、全学年あわせて最大約75万人が恩恵を受ける、と政府は試算していますが。

 「お金さえ出せば、新制度が100%利用されて進学率が上がると考えるのは早計です。以前、アンケートで子どもに大卒以上の学歴をつけさせるべきかという質問をしましたが、新制度の対象となる住民税非課税の低所得世帯で、大学に行かせたいとの回答は他の層の8割以下でした。『いくら学費負担が軽くなっても、大学や短大には行かない』という考えの人はいると思います」  

――いま日本には、親が非大卒だと、子どもも非大卒になりやすい「学歴再生産」の流れがあります。無償化でそれを断ち切れるのでは?

 「政府や有識者は、貧困の連鎖を断ち切るためには『大学に行かせるのが、唯一の方法だ』と考えがちですが、高度成長期以来、脈々と続く『大卒学歴至上主義』は問い直すべき時期に来ています。拙速な無償化には弊害もあります。例えば、いま大学は都市部に集中しているため、大学進学率が上がれば、地方の人口減少に一層拍車がかかるでしょう。若い高卒労働者層の人手不足は加速するかもしれません」  

――なぜ安倍政権は無償化を打ち出したのですか?

 「教育政策は効果を検証するのに長い時間がかかります。政府は支援の事実をもって成果が上がったとアピールしたいのでしょう。でも大学教育や労働力の質は向上したのか、不平等の連鎖は断ち切られたのかなど効果が見えてくるのは、支援を受けた人が40代になってからです」  

――AIの発達や経済のグローバル化などを踏まえると、これからの若者は進学して高度な技術や知能を身につけるべきではありませんか?

 「今回の無償化で大学に進学できるようになる学生が2万~3万人増えても、それがそのまま全て『高度人材』になるわけではありません。あくまで大学進学のハードルを下げるのが政策の意図です」  

――日本の高等教育への公的な支援は先進国中最低レベルです。無償化は、世界の水準に近づく一歩では?

 「高等教育の公的負担を増やすことは否定しません。私学助成金や国公立大学の運営費交付金を増やして大学の入学金や授業料を下げる。所得にかかわらず全員が恩恵を受けられるようにすべきです」

 「この政策の主眼は、再分配におかれています。住民税非課税世帯の高等教育の学費という支出に限り、特別に再分配をする。実態は所得格差の是正策なのに、安倍政権が『高等教育の無償化』と説明するから、『経営の苦しい大学の救済策に過ぎない』などと批判を浴びるのです」  

――確かに無償化に対する世論調査では、賛成と反対が拮抗(きっこう)しています。

 「この政策がよくないのは、結果的に、国は大学に進学しない人を支援しないというメッセージを発してしまうことになるという点です。労働力人口の過半が短大・大卒層になるのは2030年。当面は日本の労働力人口の約半分は非大卒層が占める状態が続きます。なのに、完全な『大卒社会』になるかのような幻想を生みだしてしまう」  

――もう大卒層への支援は必要ないと考えますか?

 「私が訴えたいのはバランスをとるべきだということ。大卒層と非大卒層は、社会を支える飛行機の両翼です。学歴で機会やメリットの分断が広がっているのに、非大卒層向けの政策はほとんどない。7600億円の税金を使うなら、大卒層と非大卒層への支援に同額を使うべきです」  

――ただ、高卒層は職場になじめず数年でやめるケースも多いようです。進学して職業選択の意識を高めたうえで社会に出る方がよいのでは?

 「かつては商業高校や農業高校が多く、高校生には複数の選択肢がありました。今は大半が普通高校になって進学が最優先され、就職層を育てている自覚が教育現場で希薄になっています。18歳の若者が大学に行っても、地元に残って働いても、幸せと思えるような社会にする。そのために非大卒層も大卒層と同じように、20代前半までに社会で生きていく上での基盤をつくれるようにすべきです。例えば、安定的に正規職につけるよう、若い非大卒層を雇った企業には月5万円ずつ援助するといった支援をする。彼らは色々な仕事を経験して失敗するかも知れませんが、『長期インターン』のようなものと考えてはどうでしょうか」

 「政府は外国人労働者の受け入れを拡大しようとしていますが、その前にまず自前の非大卒層を有効活用する態勢をつくるべきです」  

――平成の「失われた20年」で、非正規社員が増えました。苦しいのは何も若者だけではないのでは?

 「大卒層であっても、非正規社員になって貧困に陥る現役世代が増えました。ロストジェネレーションとも呼ばれる、先行きが不安定な彼らの賃金格差を是正する方が、無償化よりももっと大切です。消費税の財源は、彼らへの再分配にもあてるべきです。政府は、今回の無償化で次世代が大学に行けると強調しますが、現役世代の格差はむしろ助長されることになります」    

  ◇  1966年島根県生まれ。専門は計量社会学で、計量社会意識論、学歴社会論に関心がある。静岡大学助教授、大阪大学准教授などをへて現職。著書に「学歴分断社会」「日本の分断~切り離される非大卒若者たち」など。

■大学の無償化とは
 無償化の対象となる学校は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校。入学金や授業料の減免と生活費などをまかなう給付型奨学金の拡充が二本柱。
 授業料の減免は各学校が独自の基準を設けて実施しているが、2020年度から国の支援を拡大する。  住民税非課税世帯(年収270万円未満)は全額、270万~300万円未満はその3分の2、300万~380万円未満はその3分の1を減免する。
 ただ、学校種ごとに減免の上限額(国公立大が54万円、私大が70万円)がある。入学金も減免するが、上限額(国公立大28万円、私大26万円)がある。
 返還がいらない給付型奨学金は、18年度から住民税非課税世帯の2万人(1学年あたり)を対象に24万~48万円を支給している。20年度から、この対象を年収380万円未満の世帯まで広げる。課外活動費や通学費、食費などをまかなう想定で35万~91万円(自宅生か下宿生か、国公立か私立かなど属性によって異なる)を支給する。

■取材を終えて
 家計にのしかかる学費負担は年々重みを増している。これは大学生2人の親である私の実感でもある。それゆえ無償化は漠然とよい政策だと感じていたのだが、吉川さんの話を聴いて、少し認識を改めた。高齢化が進む地方に残り、消滅も危惧されるコミュニティーを支える非大卒層を、吉川さんは現代日本の「金の卵」と位置づける。大卒層だけでなく、非大卒層への目配りも欠かせないとの指摘は説得力を感じた。(日浦統)
 ≫(朝日新聞デジタル)

 

だれが墓を守るのか――多死・人口減少社会のなかで (岩波ブックレット)
小谷 みどり
岩波書店

 


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