世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

「円安・株高」生活必需品値上げの罠 歓んでいる国民の不可思議

2013年02月03日 | 日記
これから世界はどうなるか: 米国衰退と日本 (ちくま新書)
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「円安・株高」生活必需品値上げの罠 歓んでいる国民の不可思議

 まったくもって日本国民には不運が連続的起きているのだが、国民の多くが、その不運に全然気づいていないと云うのだから、大変面白い国民性である。これでは、米国、中国、韓国、EUから蔑まれ軽蔑されてもグウの音もでないと云うものである。なにしろ、安倍自民党政権になり、円安が急激に進行、株価までがウナギ登りなのだから、一時の錯覚に陥っても不思議ではないが、輸出をしているわけでもなく、株を大量に持っているわけでもないふつうの庶民が、その“あげ潮相場”を景気浮揚と勘違いし、今にも日本経済が好くなるような錯覚に陥っているのだから困ったものである。

 NHKなどマスメディアも、円安のメリットを中心に報道、デメリットに触れるのは僅かなのだから、それも仕方ないかもしれない。しかし、筆者のようなボンクラでも、チョッとだけ“風が吹けば桶屋が儲かる論”で円安の庶民への陰の部分に目を当てれば、直ぐに気づくことを、本当に国民の多くは知らないのだろうか。円安が良い、株高が良い。関係のない連中までが、イイねイイね、景気がイイね。バカじゃなかろうか、貧乏人には何ひとつイイことなんかないのに、それに気づかない。余程、頭を使わずに生きている国民だと、つくづく思う今日この頃だ。

 昨年1月には対ドル76円台だった円が、今年2月1日現在安値93円になったのだから、対ドルで17円の円安。2011年の自動車業界の発表だが、トヨタなどは、1円円高になると300億円の営業減益だと言っていた。円高で困っていた時の大袈裟な話なので、鵜呑みには出来ないが、逆に言えば17円の円安は5100億円の営業増益を意味する。ちなみに当時の輸出製造業の想定円ドルレートは、85円から90円。2012年で見れば80円から85円程度なのだから、あきらかにウハウハ状態のはずである。つまり、個別の事情でもない限り、輸出製造業は未曽有の利益を生み出すことになる。

 輸出製造業が元気になることは悪いことではない。日本人の多くが、未だ日本は輸出立国だと思い込んでいる愚かな国民が多いだけに、国威高揚と云う面では、元気が出た気分になるのは事実だろう。しかし、驚くほど輸出立国ではないことが判ると、ショックを受けるに違いない。それでも、擦りこまれた“輸出立国”のイメージは、国民の多くの意識を洗脳しているのかもしれない。ところで我が国の製造業のGDPに対する貢献度や雇用への貢献度など、あらためて見直しておく方が良いだろう。直近の正確なデータは確認していないが、11年でGDP比18.5%である。1984年辺りの29%をピークに対GDPにおける割合を減らしつづけている。

 しかも、もっと重要なことは、この製造業に携わる雇用の数は激減している。最近の数値は把握していないが、16%前後の雇用を生んでいるに過ぎずない。 さらに、その雇用形態は変質し、派遣労働や期間労働が多くを占めている。今後もグローバル化による製造業にかかる重圧は激甚なものであり、雇用形態をさらに非正規社員な方向に持って行かざるを得ない。どれ程円安で、輸出が営業利益を出そうとも、グローバル化の競争は際限がなく、雇用を増やすと云う恩恵を国民に与えることはない。もっとも、それが製造業の経営陣が悪いと云う問題ではなく、グローバル化における競争と株主利益主義の経営に於いては当然の成り行きなのだ。

 主たる企業は、円安による輸出の利益を享受しながら、単にグローバル化の為に、次の手を打つのが当然なのである。つまり、購買力平価換算でもあきらかなように、製造輸出業にとって、日本の市場は魅力に欠けるわけである。当然、市場のあるところに限りなく接近し、安い労働力を求めるのは自然の流れだ。日本のGDPにおける購買力は、91年時の10%近いシェアが12年には5.5%と、ほぼ半減しているのだから、製造業が国内に向けて力を入れられるわけがないのだ。

 昨年、ついに製造業で働く人の数が1000万人を切ったそうである。1961年以降1000万台を確保していた製造業の雇用が大台を切った。1992年にはピークで1600万人の雇用を確保し、我が国の中間所得者層を構成していたのだが、現在は600万人の雇用を喪失させたことになる。これは、為替の問題もあるにはあるが、それよりも経済のグローバル化の影響が大きいわけで、今後もこの傾向を変えることはあり得ないのだ。だからと言って、筆者は製造業を悪者扱いしているわけではない。しかし、購買力がなくなっている国内の市場の為に企業が生きることを引き延ばさせるような政策は意味がないと言っているだけだ。勿論、グローバル化以外にも、ロボット技術やITによる省力化など、要因は多いだろうが、いずれにしても、製造業に雇用を期待するのは無謀であり、酷である。

 統計的に見ても、グローバル化と省力が製造業の決め手になった今、市場を提供出来ない国内に於いて、雇用を増加乃至は維持する事は、彼ら経営者に死ねと言っているのと同義だ。つまり、彼ら(経団連を構成する多くの大企業)に幾ら恩恵を与えても、国内経済を好転させる事は出来ないのである。まぁ経団連と云う票田が欲しいのであれば別なのだが、雇用や昇給に影響しない恩恵を与えて、棄民のような政策を打つことは、最終的に政権を失う事になるのだろう。ただ、その事実に、いつ国民が気づくかの問題なのである。

 半年、1年後には給料にも反映してくるだろう等とバカな思いを語っている奴もいるようだが、そんな事は絶対にない。そんなことを行ったら、現経営者の首が飛ぶわけである(笑)。仮に、昇給は全然無理にして、雇用だけでも増加させられないかと云う問題も、ワーキングシェアの精神でも生まれない限り無理である。今の日本人が、ワーキングシェアを受け入れるような哲学は持ちえない。そうこうしている間に、足元の物価は上がりだした。遅行性で上がってくるものも含めれば、生活者の物価だけがインフレになり、昇給はせず、雇用とのバーターで給料減額さえ視野に入る。

 最近の野菜や果物は燃料費がかさむ。寒さの厳しい今年は野菜関連の値上がりが顕著だ。大手スーパーなどは、最近まで値下げ競争に熱を入れていが、それはあくまで、国内競争に打ち勝つ為のものであり、収益無視の部分も大いにある。当然長くは続けられず、値上げを余儀なくされるか、企業収益が重大なほど落ち込むかの、どちらかである。灯油やガソリンは直接的に上がっている。原油先物は、シェールオイル革命で、原油価格が大幅に下がるのかと思いきや、まったくシェールの“シェ”の字もなく上値を追っている。輸入品は当然上がるし、外食業界も値下げ競争から、いつ脱落するかと云う状況に追い込めれている。

 勿論、LPGガスの輸入代金はかさみ、間違いなく電力ガス料金に跳ね返ってくるだろう。運送費の経費増は運賃に響き、最終的にはモノの価格に転嫁される。食用油の値上げは直ぐそこだ。小麦関連に目を移せば、パンも即席めんも、スパゲッティーも値上げだ。そうそう、うどんも値上げだね。牛肉も値上げだから、牛丼屋もいずれ値上げだ。食料自給率が日々落ち込む政策を打っているのだから、円安地獄ってのも夢ではないね。貧乏人が当てにしているもの程値上げに晒される。おそらく生活必需品の値上げが真っ先に来る。それなのに、株が上がり、円安になり、輸出企業が元気になるから、俺たちも元気にと云う発想が何処から出てくるのか、頭をかち割って見てみたいものである。


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