雨の日曜日

お芝居の感想などを

元禄港歌(シアターコクーン)

2016年01月30日 | その他舞台
 久々にコクーンへ行って参りました。作:秋元和代、演出:蜷川幸雄、劇中歌:美空ひばりの「元禄港歌」。

 ぽとり、ぽとりと降ってくる椿の花が印象的。あの存在しない椿は一体何なのでしょうねー。私は花が落ちるたびに「もう引き返せない。取り返しがつかない」という焦りのようなものを感じてたのですけども。

 ストーリーはメロドラマのようでありながら、段田さんが「出会いから真実を知るまで」の「飛躍」と仰るように、無駄をそぎ落とした力強さがありました。物語の元型を見ているような気がするというか。クライマックスに向かってぐいぐい進んで行くの。

 猿之助さんは大女優のような風格がありましたねえ。女優さんと一緒に舞台に立っても違和感無いんだもん、凄いな女方って。糸栄は白狐に例えられてましたが、確かにどこかこの世のものでない雰囲気ありました。色々なことを経験して、全部飲みこんで、そこにいる。

 対照的に、飲み込めずに血を流し続けている母親が新橋耐子さん演じるお浜。やっぱり同じ女性として、彼女のこれまでの何十年とかをつい思ってしまいますね。

 宮沢りえさんは初めて生で拝見しましたけど、やっぱり美人さんですわー。声があんなに綺麗だなんて、今まで気づかなかった。鈴木杏さんも、登場時のあの歌声で劇場がパッと明るくなりますよね、だから余計に最期が痛ましいです。高橋一生さんの万次郎も、アホぼんと見せかけて実は色々考えてるし屈折もしてる感じが素敵でした。猿弥さんも格好良かったなあ。まあ諸悪の根源なのですけども。

 このお芝居、座頭は猿之助さんですけど(そしてこの面子の中で座頭出来るって凄いんじゃ…)、主役は段田安則さん演じる信助ですよね。彼はずっと自分はここにいて良いのか、という違和感と言うか心もとなさを感じながら生きてきたんだろうなあ。それにしても宮沢りえさんの恋人で猿之助さんの息子、という設定で無理が無いのですから、段田さんお若いわ~。

 今回澤瀉屋の役者さんが沢山拝見できたのも嬉しかったです。猿三郎さんが糸栄の手を引いてあげるの何かいいなあとか、段之さんが糸栄の三味線を片付けるのが番頭さんなんだけどちょっと後見さんみたいとか、郁治郎さんて上半身脱いでること多くない?とか。
 

 

新春浅草歌舞伎(浅草公会堂)

2016年01月04日 | 歌舞伎
 今年も初芝居は浅草でーす。昼夜通して見て参りました。

 昼のお年玉ご挨拶は新悟君。若手でも歌舞伎役者さんて皆喋るの上手いですよね。でも個人的には拍手の練習より、演目やお役について何か聞きたかったなーなんて。

 「三人吉三巴白浪」
 大川端だけを若手だけ(ではないけど)で見せるのは、意外とハードル高いんだなーと気づきました。通しだったらドラマの面白さで楽しく見られると思うのですけど。隼人君のお嬢は、今日はたまたま女装してるけど、普段は男の格好で生活してそうな気がする。倒錯的な雰囲気は無いので、お坊とも普通の高校生男子の友情という感じ。個人的にはそういうのもありかなって思うのですけど、ただやっぱり大川端だけで見ると物足りないような。錦之助さんも、ニンとしては和尚じゃなくてお坊ですよね?

 「土佐絵」
 すみません、やっぱり舞踊は分からないですー。自分で自分が残念。傾城新悟君が綺麗でした。国生君も白塗り似合いますねえ。声が落ち着くのはもう少し先かな?

 「与話情浮名横櫛」
 お富が登場した時、うわーめっちゃ新公だーと思ったのですが、見ているうちに違和感無くなっていきました。米吉君て可愛らしい容姿ですけど、結構色気ありますもんね。松也君の与三郎も、教わった通り演じようとしている様子が好印象でした。このお役は松也君に合っていると思うので、体に馴染むまで何度も演じて欲しいなあ。
 
 夜のお年玉は松也君。花道で「ばーったり」とか言いつつ見得をきりつつ「とわやぁっ!」と自分で大向うまで掛けてたのが楽しかったですわ~。

 「毛抜」
 このお芝居を見るのは三回目…かな? で、実は今回が一番楽しかったです。巳之助君には繊細で緻密なイメージを持っているので荒事はどうかな?と思ってたのですが、彼の演じる粂寺弾正はくっきりと輪郭が太くて、ああ粂寺弾正ってこんなキャラなのか!と初めて合点がいきました。ちょっと團十郎さん思い出しちゃった。ただ、この役めっちゃ疲れそう…って思ったのも初めて。きっと最初から最後までずーっと気を張ってたんだろうなー。でも若手で初役なら、それくらいで丁度良いよね? 

 「四の切」
 どうしても澤瀉屋型を見ることの方が多いので、音羽屋型は新鮮でした。幕開きの法眼と飛鳥のやりとりが長いし、それ以外でも色々澤瀉屋型よりちゃんと説明してくれてるよね? あと同じセリフでも、猿之助さんがさらっと流すところを丁寧に聞かせてくれたりするので、へーそうなんだ!みたいな驚きがあったり。松也君は狐にしては動きがもったりしてますね~。あと狐ことばにも苦戦してた様子。でもおかげで今まで何気なく見ていた諸々(百回りとか)が実は難易度高いことが分かりましたよん。


第一部
 
河竹黙阿弥 作

一、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)

大川端庚申塚の場

お嬢吉三  中村 隼 人 
お坊吉三  坂東 巳之助
おとせ   中村 梅 丸
和尚吉三  中村 錦之助

二、土佐絵(とさえ)

不破伴左衛門  坂東 巳之助
名古屋山三   中村 国 生
傾城采女太夫  坂東 新 悟

三世瀬川如皐 作

三、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)

源氏店の場

切られ与三郎  尾上 松 也
お富      中村 米 吉
和泉屋多左衛門 中村 錦之助


第二部

一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)

粂寺弾正   坂東 巳之助
腰元巻絹   坂東 新 悟
秦民部    中村 隼 人
錦の前    中村 鶴 松
小野春風   中村 国 生  
秦秀太郎   中村 米 吉
小野春道   中村 錦之助


二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

川連法眼館の場

佐藤忠信/忠信実は源九郎狐 尾上 松 也
源義経           中村 隼 人
駿河次郎          中村 国 生
亀井六郎          坂東 巳之助
静御前           坂東 新 悟