雨の日曜日

お芝居の感想などを

二月大歌舞伎 夜の部(歌舞伎座)

2019年02月16日 | 歌舞伎
 行って参りました歌舞伎座夜の部!

 「熊谷陣屋」
 何度も見ているお芝居ですが、やっぱり辛いししんどい…。今回印象的だったのが、首実検の場面。吉右衛門さんの直実が凄い顔をしてて。自分の人生を全て賭けたような。だって、そりゃそうだよね、登場した瞬間から、彼はずっとこの時を意識してたんだもんね。ここが緊張のクライマックスに決まってる。やっと気づきました私(遅)。最後の花道も、ああこの人本当なら武人としてもっと功績をあげられた、あげたかったのだろうなと。そういうの全部失っちゃったのだなあって思って。相模が息子の首を抱いて嘆いている時、藤の方が痛ましげな表情してるのも辛い…。
 ただ菊之助さんの義経は、部下にそんな無茶言いそうに見えないのですけどね。良い上司っぽい。

 「當年祝春駒」
 お芝居二つが暗いので、この舞踊の明るさ華やかさが救いになってました。左近君、凛々しくてこれからが楽しみです!

 「名月八幡祭」
 これもしんどいお芝居。何がしんどいって、誰も悪意が無いのがね。ただ新助と美代吉達とでは、言葉も考え方も、兎に角住む世界が違う。都会と田舎の間の深い溝ゆえの悲劇なので、だから新助が「田舎侍の刀」を使うのは必然なのだなあとやっと気づきました。しかも今回は相手が天下の仁左玉コンビですもん。新助に勝ち目がないことがはっきり分かってしまって辛い…。
 仁左衛門さんの三次は、女性が「私がついてないと」と思ってしまうようなふわふわとした危なっかしさがある危険な男でした。天性のジゴロと言うか。猿之助さんの三次はもっと地に足ついた感じでしたもんね。
 松緑さんはこれからこのお芝居を何度も演じるでしょうから、いつか猿之助さんの美代吉も見てみたいなあと思っております。


一谷嫩軍記
一、熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷直実     吉右衛門
藤の方      雀右衛門
源義経      菊之助
亀井六郎     歌 昇
片岡八郎     種之助
伊勢三郎     菊市郎
駿河次郎     菊史郎
梶原平次景高   吉之丞
堤軍次      又五郎
白毫弥陀六    歌 六
相模       魁 春


二、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

工藤祐経     梅 玉
曽我五郎     左 近
大磯の虎     米 吉
化粧坂少将    梅 丸
曽我十郎     錦之助
小林朝比奈    又五郎


初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
池田大伍 作
池田弥三郎 演出
三、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

縮屋新助     松 緑
芸者美代吉    玉三郎
魚惣       歌 六
船頭長吉     松 江
魚惣女房お竹   梅 花
美代吉母およし  歌女之丞
藤岡慶十郎    梅 玉
船頭三次     仁左衛門


新春浅草歌舞伎 昼の部(浅草公会堂)

2019年01月04日 | 歌舞伎
 今年も浅草歌舞伎へ行って参りましたー。お年玉ご挨拶は新悟君。役者の熱演のせい、ではなく単純な上演時間の計算間違いで巻いているとのこと…。

 「戻駕色相肩」
 ほとんど予習していかなかったので、幕が開いてこのご兄弟だったのが嬉しかったです。梅丸君と三人、サイズ感も丁度良くて可愛い。

 「義賢最期」
 松也君の義賢好きだなー。何か憂いがあって。何となく今まで「立ち回りを見せる芝居」と思ってたのですけど、今回は作品全体に滅びの美学、みたいな空気が漂ってて良かったです。

 「芋掘長者」
 初めて見る舞踊でしたが、楽しいですねえ。巳之助君が芋掘り踊りを始めた時の橋之助君の表情が大変良かったです。キョトン顔の松也君も怪訝そうな歌昇君も可愛い。最後は総踊りで気持ちよく帰れました。



お年玉〈年始ご挨拶〉


一、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)

浪花の次郎作実は石川五右衛門     中村 歌 昇
禿たより                    中村 梅 丸
吾妻の与四郎実は真柴久吉       中村 種之助


源平布引滝
二、義賢最期(よしかたさいご)

木曽先生義賢               尾上 松 也
小万                     坂東 新 悟
下部折平実は多田蔵人行綱       中村 隼 人
御台葵御前                中村 鶴 松
待宵姫                   中村 梅 丸
進野次郎宗政               中村 橋之助
矢走兵内                  中村 種之助
百姓九郎助                大谷 桂 三


岡村柿紅 作
三、芋掘長者(いもほりちょうじゃ)

芋掘藤五郎               坂東 巳之助              
友達治六郎              中村 橋之助
息女緑御前              坂東 新 悟
腰元松葉               中村 鶴 松
松ヶ枝家後室             中村 歌女之丞
菟原左内               中村 歌 昇
魁兵馬                 尾上 松 也











通し狂言 増補双級巴(国立劇場大劇場)

2018年12月31日 | 歌舞伎
 今年の観劇納めですー。何だか12月は忙しなくて、あまり劇場に行けないのですよねえ。歌舞伎座の阿古屋も見たかったのですけども。残念。

 という訳で、歌舞伎ではしょっちゅう掛かってる気がする石川五右衛門。今回は「五右衛門を題材にした複数の作品を繋ぎ合わせ」て作った芝居だそうなので、エピソードの連なりという感じで大作感が薄かったのが個人的には残念でした。もいっこ残念なのが、初めて見る播磨屋の宙乗り、花外前方席だったせいで良く見えなかったのー。2・3階席にすれば良かったわ。

 吉右衛門さんの大きさと菊之助さんの清々しさ、歌六さんの存在感が印象的でした。あと、五郎市役の子役ちゃんがめっちゃ上手かった! そして普通に夢オチだったのびっくりでした(笑



三世瀬川如皐=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 増補双級巴 (ぞうほふたつどもえ) 四幕九場
―石川五右衛門(いしかわごえもん)―
中村吉右衛門宙乗りにて
つづら抜け相勤め申し候
国立劇場美術係=美術

発 端 芥川の場
序 幕 壬生村次左衛門内の場
二幕目 第一場 大手並木松原の場
第二場 松並木行列の場
三幕目 第一場 志賀都足利別館奥御殿の場
第二場 同 奥庭の場
第三場 木屋町二階の場
大 詰 第一場 五右衛門隠家の場
第二場 藤の森明神捕物の場

(主な配役)
石川五右衛門  中 村 吉右衛門
壬生村の次左衛門  中 村 歌   六
三好修理太夫長慶  中 村 又 五 郎
此下藤吉郎久吉後ニ真柴筑前守久吉  尾 上 菊 之 助
大名粂川但馬  中 村 松   江
大名田島主水/早野弥藤次  中 村 歌   昇
足柄金蔵/大名白須賀民部  中 村 種 之 助
次左衛門娘小冬  中 村 米   吉
大名天野刑部/小鮒の源五郎  中 村 吉 之 丞
大名星合兵部/三二五郎兵衛 嵐    橘 三 郎
呉羽中納言氏定/大名六角右京   大 谷 桂   三
足利義輝  中 村 錦 之 助
傾城芙蓉/五右衛門女房おたき  中 村 雀右衛門
義輝御台綾の台  中 村 東   蔵

通し狂言 名高大岡越前裁(国立劇場大劇場)

2018年12月31日 | 歌舞伎
 何だか私最近梅玉さん好きなので、国立劇場の公演ありがたいです~。という訳で、大岡越前行って参りました。

 前半は天一坊、後半は大岡越前が主役、という作りで、とっても見易くて面白かったです。梅玉さん、右團次さんは勿論、彌十郎さんが美味しいお役で格好良かった。あと右近ちゃんが、初めての切腹をきっちり勤めていておばちゃん感激(未遂で良かった…)。


河竹黙阿弥=作
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 名高大岡越前裁 (なもたかしおおおかさばき) 六幕九場
国立劇場美術係=美術

序 幕 第一場 紀州平沢村お三住居の場
第二場 紀州加田の浦の場
二幕目 美濃長洞常楽院本堂の場
三幕目 第一場 大岡邸奥の間の場
第二場 同 無常門の場
第三場 小石川水戸家奥殿の場
四幕目 南町奉行屋敷内広書院の場
五幕目 大岡邸奥の間庭先の場
大 詰 大岡役宅奥殿の場

(主な配役)
大岡越前守忠相   中 村  梅 玉
大岡妻小沢  中 村  魁 春
法沢後二天一坊  市 川  右 團 次
田口千助     中 村 松   江
吉田三五郎     市 川 男 女 蔵
下男久助/池田大助   坂 東 彦 三 郎
大岡一子忠右衛門   市 川 右   近
お三        中 村 歌女之丞
僧天忠/久保見杢四郎     嵐   橘 三 郎
土屋六郎右衛門   大 谷 桂   三
伊賀亮女房おさみ     市 川 齊   入
平石治右衛門    坂 東 秀   調
名主甚右衛門    市 村 家   橘
山内伊賀亮    坂 東  彌 十 郎
徳川綱條      坂 東  楽 善

贋作 桜の森の満開の下(プレイハウス)

2018年11月04日 | その他舞台
 行って参りました、初めてのNODA MAP。

 野田作品は、遊眠社を2回ほど見に行ったことがありまして、そのうちのひとつがこの作品だったのですが、当時は若かったせいか言葉遊びに翻弄されて何が何だかさっぱり分からなくて呆然とした記憶が…。だから今回もちょっと心配だったのですけど、深く理解も咀嚼も出来てはいないもののちゃんと楽しめたので、少しは私も成長したのかなあ?

 耳男の妻夫木さんも夜長姫の深津さんも、野田さんや毬谷さんのような強烈さは無くて、素直にお役を演じてる感じがしました。だから観客も役者さんを楽しむというより作品自体に向き合えたんじゃないかな。

 天海さんオオアマの胡散臭さとか野田さんヒダの王の軽さが良かったし、秋山さんハンニャと藤井さん赤名人がわちゃわちゃしてるの可愛かったー。

ゲゲゲの先生へ(プレイハウス)

2018年10月21日 | その他舞台
 前川さん+蔵さんということで、発表された時から楽しみにしていた舞台を見て参りましたー。

 やっぱり前川さんの作品好きだなあ。切ないけれど優しくて。ただ、ちゃんと事前に水木作品に触れていたら、もっと深く味わえたんだろうなーという勿体なさも感じました。
 コケカ様って何だろう? 同じように「神」として扱われてはいるけれど、おばば達とは成り立ちが違うじゃない? 妖怪は人間が世界をどう認識するかだけど、コケカ様は素材が人間というか。

 蔵之介さんのねずみ男、飄々として素敵でした。人にも妖怪にもなれないの寂しい。と言うか、最後は妖怪になったということで良いの? このねずみ男もまた、前川さんの不老不死のバリエーションのひとつだよね。

 白石さんと松雪さんの人間じゃない感がすごい。妖怪役似合いそうな手塚さんがカリカチュアされた人間の典型役っていうのも面白いです。イキウメメンバーの活躍も嬉しかった。おお蔵さんと人衛君が絡んでる~みたいな(笑

メタルマクベスdisc2(IHIステージアラウンド東京)

2018年09月29日 | その他舞台
 雨の中、初メタマク、見て参りました。

 最近年のせいか、何もかもが過剰な新感線の作風にちょっとついていけない感があるのですけど、それでもミュージカルとアトラクションを同時に味わえるのはやはり楽しいですね。

 取り敢えず、レスポール王木塲勝己さん、エクスプローラー岡本健一さん、グレコ浅利陽介さんが格好良くて素敵でした! ランダムスター夫人大原櫻子ちゃんも可愛かったー。

 ランダムスター松也君は、登場した瞬間「ああ立派になられて…」みたいな感慨がありましたねえ。いやそんな昔から知ってるわけでもないのですけど。松也君だったら「朧の森に棲む鬼」も似合いそう。

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部(歌舞伎座)

2018年09月16日 | 歌舞伎
 秀山祭行って参りましたー。

 昼の部の話題は、やはり福助さんの復帰でしょうか。短い出番でしたが、セリフは問題無かったと思いますし、お体はまだ思うようにはならないでしょうが、少しずつでもまた舞台で拝見出来たら嬉しいです。

 そして金閣寺では児太郎君がとっても良かったのですよねー。綺麗だし華があるなって。これからお姫様役者(って意外といないですよね?)として大成して欲しいなって思いました。

 あと松緑さんの松永大膳が格好良かったです。野望に燃える若造的な勢いがあって。東吉が同世代の役者さんだったらまた違った印象だったのでしょうけど、梅玉さんですもんねー。勝てるわけない。というのが、すごく新鮮でした。幸四郎さんもああいうお役似合いますねえ。



祇園祭礼信仰記
一、金閣寺(きんかくじ)

   此下東吉実は真柴久吉   梅 玉
           雪姫   児太郎
       狩野之介直信   幸四郎
        松永鬼藤太   坂東亀蔵
     此下家臣春川左近   橋之助
     同   戸田隼人   男 寅
     同   内海三郎   福之助
     同   山下主水   玉太郎
           腰元   梅 花
           腰元   歌女之丞
   十河軍平実は佐藤正清   彌十郎
         松永大膳   松 緑
         慶寿院尼   福 助

萩原雪夫 作
今井豊茂 補綴
二、鬼揃紅葉狩(おにぞろいもみじがり)

   更科の前実は戸隠山の鬼女   幸四郎
            平維茂   錦之助
          侍女かえで   高麗蔵
          侍女ぬるで   米 吉
          侍女かつら   児太郎
          侍女もみじ   宗之助  
          従者月郎吾   隼 人
          従者雪郎太   廣太郎
        男山八幡の末社   玉太郎
        男山八幡の末社   東 蔵

河竹黙阿弥 作
天衣紛上野初花
三、河内山(こうちやま)

上州屋質見世
松江邸広間
同  書院
同  玄関先

   河内山宗俊   吉右衛門
   松江出雲守   幸四郎
    宮崎数馬   歌 昇
    大橋伊織   種之助
     黒沢要   隼 人
    腰元浪路   米 吉
    北村大膳   吉之丞
  高木小左衛門   又五郎
  和泉屋清兵衛   歌 六
   後家おまき   魁 春

NARUTO(新橋演舞場)

2018年08月13日 | 歌舞伎
 新作歌舞伎NARUTO、昼夜一回ずつ見て参りました。

 えー、全72巻を舞台化してるので、展開がせわしないです。説明台詞が多すぎて鬱陶しいし。それにこれではサスケがただの流されやすい人に見えてしまうのだけど、いいのかな。あと上演時間が4時間以上あるのなら、どこかに華やかな場面が欲しい。もしかしたら原作的に無理なのかもだけど、やはりワンピースのニューカマーランドやヤマトタケルの熊襲の宴はストーリーの流れ以上の必然性があったと思うのよ。それからNARUTO見た後に分かったワンピースの良い所っていうのがあって、それは話が完結してないこと。ルフィは海賊王になってないし海軍との決着もついてない、その上エースも助けられてない、のにどうしてあんな満足感があったのかというと、演出の力プラスこれからも物語は続くという希望があったからではないかと。NARUTOは完結してる分、作品として閉じて小さくなってしまった気がする。

 と、色々書きましたが、でも結構楽しんだのですよ。多分今まで拝見したG2さんの舞台では、一番面白かった。漫画の舞台化としては、すごく素直でオーソドックスな作りになってると思います。まだ初演だから色々粗いのは仕方ないので、南座再演では脚本刈り込んでもっと緩急ついてるといいな。

 出演者では何と言っても市瀬さんですねー。NARUTO歌舞伎って市瀬イタチの格好良さを堪能するためにあるんじゃないかと思うくらい。死人のような無表情とキレキレの身体能力が素敵すぎる! イタチとサスケの殺陣は、とってもお気に入りの場面です。映画みたいで格好良い。

 カカシ嘉島さんは、素敵だったけど見せ場が足りない! もっと見たかったー。あと國矢さんのカブトが銀髪&眼鏡でたいそう好みでした。カブトが舞台にいるときはずっとカブト見てましたもん私。

 猿之助さんマダラのお化粧好き。仮面を外した瞬間、あこれ歌舞伎だった!って思い出したと言うか。作品自体の雰囲気はね、割と2.5寄り(見たことないけど)なのですけど、マダラとナルサスの立ち回りだけ突然歌舞伎になるんですよ。そこだけ切って貼ったかのように。愛之助さんのマダラはちゃんとNARUTO歌舞伎に収まった芝居をしてましたが、猿之助さんはそこらへん遠慮なく古典の方へ引っ張ってった印象です。どちらが良いかは、好き好きだと思うのですけどね。

第四回双蝶会(国立劇場小劇場)

2018年08月05日 | 歌舞伎
 今年も中村歌昇・種之助兄弟の勉強会へ行って参りましたー。

 「川連法眼館の場」
 えー、すみません私遅刻してしまいまして、だから席に着いたときはもう忠信(本物)が舞台にいました。パンフ見ると川連法眼の役者名が書いてないのですけど、そこはカットされたの?
 浅草の松也君の時も思いましたが、若手が四の切やるとああ狐忠信って難しいお役なんだなあと分かりますね。ずっと人ではない動きなのも、狐ことばも、なかなか身につくものではないのだなあと。最近巡業で愛之助さんがなさってましたが、見ておけば良かったな。
 種之助君の源九郎狐は、ビジュアルはとても可愛いくて似合っているので、これから何度も演じて欲しいです。
 それにしても葵太夫の声は本当に良いですねー。四の切は聞きなれてるせいか、すごく陶酔感がありました。

 「積恋雪関扉」
 これって多分、役者の格で見せる舞踊だと思うので、若手には結構ハードル高い演目なのでは。歌昇君のイキの良さ、若いパワーみたいなのはすごく感じました。あとね、小町姫/墨染の児太郎君がとっても美人さんで、立女形の貫禄のようなものまで感じられて、これからがますます楽しみになりました。