雨の日曜日

お芝居の感想などを

五月花形歌舞伎 (明治座)

2015年05月24日 | 歌舞伎
 行って参りました、5月明治座! 昼2回夜1回のみの観劇でしたが(東京なのに…)、その分良いお席で楽しみましたよー。

 「矢の根」
 超有名な演目ですが、拝見するのは初めて。右近さんの荒事は苦手、と思っていたのですが、これはとっても楽しかったです。右近さんも笑也さんも、亀鶴さん猿弥さんも、きっちり丁寧に演じてらして気持ち良かったです。馬上で大根持ってたのって、天下茶屋の元ネタなのかな?
 あとこれは、後見さんのお仕事っぷりがじっくり見られるのが良いですねー。真剣モードの喜昇さんが素敵でした。

 「男の花道」
 5年前に御園座で観劇してとても面白くて、また見たいなー東京だったら明治座に合いそう、って思っていたら実現しましたよ! わーい。ありがとうございます。
 猿之助さんの歌右衛門は、失明の不安を抱えた憂愁の佳人と、手術後の堂々とした女主人っぷりと、両方見られるのが良いですね。特に初登場時の浴衣姿は、背中から腰に掛けてのラインが色っぽくてねえ。うっとり。ラストの老松もチャーミングでしたし、お七は本当に人形に見えて、もう本当にあれどうなってるんですかね?! もっと見ていたかったです。御園座では、私歌右衛門を完全に女性と思って見てましたが、今回はたまーにふと男を感じることがありました。あとお化粧は、5年前よりもスッキリしていたような。
 中車さんの玄碩先生は、GWに見たときは空腹の取的さんみたいな台詞回しで違和感あったのですが、2回目の観劇ではそれが大分減って見易くなりました。ただそうすると、中車さんの持ち味であるギラギラ感が強く出てしまって、本番中の役者を呼び出すようなうっかりさんには見えないと言う難点が。意外とこのお役、観客に納得させるの難しいかも。
 愛之助さんは、敵役ではあるのですけど、ちょっと威張ったお侍さんという程度で、芯から悪い人ではない、というのが良かったです。いますよね、こういう変なところで意地になっちゃう困った人。
 その奥方が門之助さん。カラッと明るくて、裏表が無さそう。なんだかんだ言いつつ嘉右衛門も奥さんの事大事にしてるし、お似合いの夫婦なんじゃないかなあ。
 東蔵役は竹三郎さんですが、竹三郎さんが休演されたあとの猿三郎さんも両方見ることが出来ました。竹三郎さんは濃いお芝居をされるので、自然と目が惹きつけられてしまうのですよね。猿三郎さんだと、逆に東蔵の台詞を受ける歌右衛門に意識が行く感じ。役者さんが変わると、同じ場面でも随分印象が変わります。
 ところで、2回観劇しましたが、ちょこちょこ変わっていたような。歌五郎と歌助が歌右衛門の目の不調に気づいてたのって、最初見たときは匂わす程度でしたが、2回目ははっきり言ってましたよね? 松屋で二人が玄碩先生を連れて来る、っていうのも前半は無かったような。弟子たちの太夫愛がより強く感じられて、良かったです。
 ところでこの歌右衛門役、猿之助さんも仰ってましたが、次の世代では壱太郎君がされるんでしょうね。今回の弟子役も、お勉強の為かな?なんて思ったり。その時はお父様、出て下さるかなあ。雁治郎さんの玄碩先生、見てみたいです。ああでもいっそ猿之助さんでも面白いかも。

 「あんまと泥棒」
 中車さんと猿之助さんの二人芝居。前回上演されたのは平成11年なので、珍しい作品なんですね。
 中車さんは今まで見た中で一番良かったな。ちょっとやり過ぎかなーと感じることはありましたけども。猿之助さんが上手く支えてました。泥棒さんは脚が超綺麗で、動きもさすがに無駄が無かったですね~。そして終盤の生お着替え! あれどうやってるの? あそこだけでももう一回見たい!
 作品的には、最初からあんまの強欲ぶりを見せているので、「らくだ」みたいな立場の入れ替わりの面白さは無かったです。オチも予想通り。

 「鯉つかみ」
 愛之助さんが何度もされてる作品ですが、私は今回が初見でした。通し狂言としての上演は、これが初めてだそうで。立ち廻りあり宙乗りありの楽しいお芝居で、猿翁さんの復活通し狂言みたいな雰囲気。ただ本物の志賀之助と偽志賀之助、どっちがどっちか分かりづらくてですね。小桜姫が恋した相手は偽物のほうであってる? じゃあ思いが通じたってことでOK?
 メインはやっぱりラストの鯉退治、でしょうね。割とクールなイメージの志賀之助さんが巨大な鯉にチョップしたりして、笑いが止まりませんよ~。水もガンガン飛ばすし。割と前方のお席で見ていたので、ずっとビニールシート被ってました(笑
 
 
 
一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)

曽我五郎 市川 右 近
大薩摩文太夫 中村 亀 鶴
馬士畑右衛門 市川 猿 弥
曽我十郎 市川 笑 也

二、男の花道(おとこのはなみち)

加賀屋歌右衛門 市川 猿之助
土生玄碩 市川 中 車
田辺嘉右衛門 片岡 愛之助
山田春庵 市川 男女蔵
加賀屋歌助 中村 壱太郎
山崎順之助 市川 猿 弥
按摩杢の市 市川 弘太郎
松屋忠兵衛 市川 寿 猿
富枝妹雪乃 市川 笑 也
加賀屋歌五郎 中村 亀 鶴
加賀屋東蔵 坂東 竹三郎
田辺妻富枝 市川 門之助
万八の女将お時 片岡 秀太郎

夜の部

一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)

泥棒権太郎 市川 猿之助
あんま秀の市 市川 中 車

湧昇水鯉滝(わきのぼるみずにこいたき)
二、通し狂言 鯉つかみ(こいつかみ)
片岡愛之助六役早替り宙乗りならびに本水にて立廻り相勤め申し候

俵藤太秀郷 
鯉王皇子金鯉
滝窓志賀之助
滝窓志賀之助実は鯉の精
奴瀬田平
関白中納言橘広継 片岡 愛之助
鯉王 市川 中 車
篠村女房呉竹 市川 門之助
家老篠村次郎公光 中村 亀 鶴
釣家息女小桜姫 中村 壱太郎
信田清晴 市川 弘太郎
三上山の大百足実は平将門の霊 市川 猿 弥
堅田刑部 市川 男女蔵
鮒五郎 市川 右 近
瀬織津媛 片岡 秀太郎


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