テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

赤い風船

2013-01-10 | ファンタジー
(1956/アルベール・ラモリス脚本・監督/パスカル・ラモリス、シュザンヌ・クルーティエ、サビーヌ・ラモリス/35分)


 およそ40数年ぶりにアルベール・ラモリスの「赤い風船」を観ました。
 「忘却エンドロール」の宵乃さんが記事をアップされていて、読んでいるうちにもしやと思いyoutubeを探したら見つけた次第。なんと、全編観れましたがな。
 最初は、十代の頃にNHKの字幕スーパー。風船が生き物のように動くというなんとも不思議な話なんだけど、とっても面白かったのを覚えておりました。

*

 街を見下ろす高台の、その建物の間から陽の光が差し込んでいるオープニング・ショットが美しい!
 通学途中の小さな男の子が街灯に引っ掛かっている赤い風船を見つけてよじ登って取り、一緒に学校へ向かうが、先生には学校に風船は持ち込むなといわれ(近所のオジサンに持っててもらい)、家に帰っても御婆ちゃんに窓から捨てられてしまう。ところがこの風船、窓の外をフワフワするだけで何処かに飛んで行くことはなく、なので次の日も男の子は風船と一緒に学校に向かうのだが・・・という話。
 作られたのは1956年。
 CGが駆使できる現代ならいざ知らず、55年前にどうやって撮影したんでしょう?

 観ていて、突然ラストシーンをぼんやりと思い出して、ホントにそうなるのかと半信半疑でしたが、その通りになって、自分の記憶が間違いでなかったのも嬉しかったし、そういうオチにしてくれた監督にも感激♪
 最初は風船付では通学電車に乗れなかった少年が、翌日も風船を抱えてどうなっちゃうのかなぁと思ったら・・・という語りも巧い。

 あれはドラえもんか、なんて思ったりもしますが、終盤、町でも有名になった為に大勢の子供達に追いかけられるハメに。段々と、風船が「自由」の象徴のように見えてきます。
 戦争が終わり自由を取り戻したのに、やっぱり人間社会には不自由が多いんだなぁと、ラモリスはそんな事を言いたかったのではないかと。

 主役の少年を演じているのは監督の息子パスカル。終盤で青い風船を抱えているのも、その妹のサビーヌだそうです。
 そして、ラモリスが亡くなったのが1970年。<ドキュメンタリー映画『恋人たちの風』撮影のためにイランのテヘラン郊外をヘリコプターで飛行中、回転翼が電線に接触して墜落死した>とのこと。享年48歳。
 空に憧れ、飛ぶことを愛した彼らしい最期に感じるのは私だけではないでしょう。

 1956年の米国アカデミー賞で脚本賞、同じ年のカンヌ映画祭で短編部門のパルム・ドールを獲得した名作です。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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2 コメント

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良かったですね! (宵乃)
2013-01-11 07:41:46
youtubeにありましたか~。セリフは少ないし、十分楽しめますよね。
あの風船の動きはホント不思議でした。見えにくい糸か何かを使っているんでしょうか?
それにしても活き活きした動きです。
少年が監督の息子というのは知っていたけど、あの女の子もとは知りませんでした。監督の最期を考えると、子どもたちにとって最高の思い出でしょうね。
TBありがとうございました。
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宵乃さんのおかげです♪ (十瑠)
2013-01-11 09:38:25
>見えにくい糸か何かを使っているんでしょうか?

多分そういうことなんでしょうが、後半はあんまり考えないで観てました。エキストラの演技も自然体で良かったですね。
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