テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

エーゲ海の天使

2010-11-14 | 戦争もの
(1991/ガブリエレ・サルヴァトレス監督/クラウディオ・ビガリ、ディエゴ・アバタントゥオーノ、ジュゼッペ・チェデルナ、ヴァンナ・バルバ/90分)


 ネタバレあります。

 第二次世界大戦中の地中海。中尉と軍曹と落ちこぼれの兵隊ばかりを集めたイタリアの小隊が、偵察と通信の任務を負ってギリシャの孤島にやって来る。任期は4ヶ月。ところが、上陸してみると人の気配がない。港があり、家屋もたくさん立ち並んでいるのに、どの家も無人だった。どこかに潜んでいるのかも知れない。兵隊達は合い言葉を作って警戒を続けていたが、ちょっとしたドジから無線機を壊してしまい、仕方なく山育ちの兄弟兵士を島の高台に見張りにたてて様子を見ることにする。味方の船が現れたら拾ってもらおうというわけだ。
 地中海の常夏のような陽気の中、ウトウトと昼寝をする彼らの前に突然大勢の子供たちが現れたのは、緊張感も薄らいだある日の事だった・・・。

 1991年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品。ですが、allcinemaの解説はかなり辛辣です。

<米アカデミー賞の外国語映画賞など、全く値打ちの無いものかもしれない。(中略)
 大戦中の話なのに深刻な所はなに一つない。牧歌的なギリシャの小島に8人のイタリア兵が派遣されてくるが、サッカーをしたり娼婦のもとを訪ねたりする以外とりたててすることも無く、義務感に燃えていた若い隊長も教会のフレスコ画制作に夢中になる。>

 どういうことかというと、つまりこの島の男たちはドイツ軍にさらわれていて年寄りと女子供しかおらず、イタリア兵も何をするか解らないのでしばらく隠れて様子を見ていたという次第。危険がなさそうなので島民も姿を現したわけですが、これが全く突然に、それまで何事もなかったかのような素振りで出て来るんですね。そこもちょっと首をひねるシーンでしたが、もっと変なのが、allcinemaの解説にあるように、島民が出て来て事情が判ったはイイものの、その後の兵隊達のやったことが<あまりにも現実逃避的>なことばかりで、村長の家を司令部として借りた以外は上の解説にあるような、まるで緊張感のない牧歌的な暮らしなんです。暮らしと言えるかどうかも疑問ですが(笑)。

 イタリア兵達は本国との連絡も取れない状況だから郵便物も来ない。ということは、生きていく為には魚を捕ったり畑を耕したりしなければいけないだろうに、そういうシーンが全くないんですね。娼婦に支払うお金も無かったろうに、その辺には一切触れてない。
 それに島民達はどうやって生き延びていたんでしょう。彼らの生活にも一切触れてないですね。
 島の男の替わりに兵隊達が狩りをしたり農業をする。そういった生活の中で島民との様々なふれあいも発生したはずなのに、そういったエピソードは皆無なんです。

 映画の後半でイタリアの戦闘機が偶然島に降り立って彼らを発見し、そのパイロットが本国に報せてくれて母国に帰れるわけですが、パイロットと兵隊達の会話で彼らが(なんと!)3年間もこの島で暮らしていたことが解ります。
 3年も島の生活が続いたようには見えなかったし、なにしろ3年もあんな現実離れしたことだけに終始していたなんて実に馬鹿げています。

 allcinemaの同作品の読者コメントは解説に対しての反対意見が殆どですが、私はツイッターにも書いたように(解説は)当たらずとも遠からずと思いますね。

<終戦で島を離れた彼らだが、本国で働き定年を迎え、再び吸い寄せられるように島へ帰ってくるのだった。あまりにも現実逃避的で、諷刺は病院の減塩メニューのように味気ない効き目。人生を頑張りすぎてると自負する人には慰めになるかも。そうでもない人には、ちょっとユルすぎる病人食のお粥みたいな映画。>

 エピローグとして、年老いた中尉や軍曹が、娼婦と結婚をして逃亡兵として島に残った部下を訪ねてやって来ます。とってつけ足したような結末で、彼らの感慨に共感することは出来ませんね。
 地中海の島が舞台で、長い時を隔てたエピローグがあることで「イル・ポスティーノ (1994)」を思い出しましたが、BGMの感じが似ているくらいで、見比べればラストの余韻の深みが全然違うことに気付くでしょう。

 米国アカデミー外国語映画賞。なにを血迷ったんでしょうか?


・お薦め度【★=お薦めはしません】 テアトル十瑠

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