テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ユージュアル・サスペクツ

2015-09-22 | サスペンス・ミステリー
(1995/ブライアン・シンガー監督/ガブリエル・バーン、チャズ・パルミンテリ、ケヴィン・スペイシー、スティーヴン・ボールドウィン、ケヴィン・ポラック、ベニチオ・デル・トロ、ピート・ポスルスウェイト、スージー・エイミス/105分)


 まずはgoo映画さんからストーリーの一部を御紹介します。

 <ある夜、カリフォルニアのサン・ペドロ埠頭で船が大爆発。コカイン取引現場からブツを奪おうとした一味と組織の争いが原因らしい。27人が死亡、9100万ドルが消えた。生き残ったのは2人。しかも1人は重傷で、関税特別捜査官のクイヤン(パルミンテリ)はただ1人無傷で生き残った男、ロジャー・“ヴァーバル”・キント(スペイシー)を尋問する。……話は6週間前に遡る。匿名の情報を得たN.Y.市警察と合衆国関税局は、銃を大量に積んだトラック強奪に関わったと見られる5人の“常連容疑者(=THE USUAL SUSPECTS)”を連行する。元汚職警官ディーン・キートン(バーン)は、数年前に自分の死を偽装したが、今は刑事弁護士の女友達イーディ(エイミス)の助けで、表面上は更生の道を歩んでいた。気弱なヴァーバルは、半身が不自由だが計画の天才。タフなマクナマス(ボールドウィン)は家宅侵入のプロで、クレイジーな犯罪者フェンスター(デル・トロ)とコンビを組んでいる。トッド・ホックニー(ポラック)は、ハードウェアと爆破のプロ。市警と関税局はキートンに狙いを定めるが、イーディから証拠不十分を理由に解放を要求される。釈放された5人の犯罪者はこれを機会に結束し、市警の汚職警官の金儲けの手段で、禁制品を乗せて走るパトカーの襲撃を計画、みごと大量のエメラルド原石強奪に成功する。奪った獲物をさばくため、L.A.に向かった5人はマクマナスの知り合いの故買屋レッドフッドと取り引きするが、新たにテキサスの宝石商襲撃を持ちかけられる。彼らは迷いながらも襲撃を実行するがうまくいかず、宝石商とボディガードを全員殺してしまう。しかも、レッドフットの説明とは全く違い、獲物は麻薬だった。5人はレッドフッドを問い詰め、彼から伝説的なギャング、カイザー・ソゼの右腕と名乗る謎の英国人コバヤシ(ポスルスウェイト)から頼まれたことを聞き出す。やがて5人の前にコバヤシが現れ、拘置所で彼らが会うように仕組んだのは実はソゼであり、それぞれがそうとは知らずに彼から何らかの物を盗んだ過去があるのだという。コバヤシは彼らに仕事を強要してきた。ソゼの商売敵であるアルゼンチン・ギャングがサン・トロペ沖の船で大量のコカイン取引を予定しており、ソゼへの負債は船と積み荷を破壊すれば帳消しにするという。生命の保証はないが、9100万ドルの分け前も約束された。とまどう5人だったが、嫌がって逃げたフェンスターが全身に銃弾を浴びて殺され、残った4人はコバヤシに従わざるをえなくなる・・・>

 108円で売っていた中古DVDの鑑賞。
 あっと驚くどんでん返しの結末が有名らしくて買ったんだけどねぇ。

*

(↓Twitter on 十瑠 から[一部修正アリ])

今年のいつかは忘れたけど、中古DVDを買っていた「ユージュアル・サスペクツ」を観た。今日はお休みなので2回観れた。どんでん返しがあるって聞いてたので楽しみにしていたが、後半の流れが“謎の人物”が本当に居るのか、そしてそれは誰か?に絞られていたので、即分かったけれど・・・。
[ 9月21日 以下同じ]

あまりに判り易いので、もうひと捻りあるかもとも思ったのに、まんまだった。残念。これはどうしてももう一度観なければと2回目を観たが、観客を騙すのに夢中で、映画文法の基本を外している個所がいくつもあってガックリした。3回目は無しだな。

アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」だって、読み手を騙す為に文法上の工夫が為されてたのに、この映画は何の躊躇いもなく観客を騙す映画文法の禁じ手を使っている。ブライアン・シンガーという監督、信用できんなと思ったら、他に観るべきものも無さそうだな。

allcinemaのコメントにこんなのがある。<最後は、目から鱗が落ちるような結末だった。とは言っても、元から付いていた鱗が落ちたのなら値打ちはあるが、この映画の中で騙されて付いた鱗が落ちただけのことだから感動も喜びもない>。ハンドルネーム「徘徊爺」さん、最高!!

「ユージュアル・サスペクツ」は要するに誰かが語っている話がメインで使われているわけ。なので嘘が入ってるんだけど、語っている話を映像化するのは、サイドストーリーかファンタジーとかコメディなら許せるけど、メインストーリー、ましてやサスペンスとなるとこりゃ反則だよね。
[ 9月22日 以下同じ]

スティング」も騙されるけど、あれは真っ当な文法だから、二度目に観ると登場人物の心情が違って見えるっていう、一粒で二度美味しい映画だ。「ユージュアル」は二度目を観ると当該人物の心情、行動が???となる。

「ユージュアル・サスペクツ」。最後の大事件は、謎の犯罪者が自分の正体が官憲にばれるのを防ぐために証人の男を殺したという話なんだけど(大仰過ぎ!)、結局最後は顔がばれちゃってるんだよね、警察に。颯爽と街の中に消えていく男を勝利者のように描いているけど・・・これって微妙。

*

 今朝、ウィキを読んだら<アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』を下敷きにしたという計算された脚本>と紹介されていた。な阿呆な! コレは嘘を描いているけど、「アクロイド」は嘘は書いてませんよ。ただ、幾つかの省略と数か所を遠回しな表現にしてるだけです。
 ついでに「スティング」も観客に対して一つも嘘は描いてないです。あれも省略しているだけですから。

 宝石強奪とか個別のアクションシーンは結構迫力があって巧さを感じるけど、街中のシーンにしては通行人とか、周囲の描き込が無くて臨場感でいえば物足りなかったな。これも証言者の法螺話だから?

 1995年のアカデミー賞で、助演男優賞(スペイシー)と脚本賞(クリストファー・マッカリー)を受賞。
 ケヴィン・スペイシーはNY批評家協会賞でも助演男優賞を獲り、ゴールデン・グローブでもノミネートされたらしい。





・お薦め度【★★=映画文法の禁じ手を理解するのには、悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

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4 コメント

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この作品はわたしも (宵乃)
2015-09-23 14:19:09
ガッカリしたクチです。
回想形式でオチに驚かされると知っていたら、もうこのオチしかないですし…。
言われてみれば、こういうのは禁じ手ですね。妙に評判がよかったので、自分が悪かったのかもと考えてました(苦笑)

>「ユージュアル」は二度目を観ると当該人物の心情、行動が???となる。

二度は観てないですが、意味不明でした。というか、監督がどういうつもりであのラストにしたのか…。
この作品と並べられたら「スティング」や「アクロイド殺し」が可哀想かも!
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似顔絵描きが (十瑠)
2015-09-23 18:01:58
出てきた時からオチは読めましたね。しかもその方向で話も進んでいるし。

>言われてみれば、こういうのは禁じ手ですね。

観る方は基本的に映像は事実だと思いますからね。
事実でないときには「マジで観てはいけませんよ」的な前振りがあるのが通常で、今回のは反則です。
何でもアリなら誰だって騙せますよ。

>監督がどういうつもりであのラストにしたのか…。
一般的には評判は宜しいようですから
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映像の噓 (オカピー)
2016-11-09 21:27:12
弊記事までTB&コメント有難うございました。

言葉だけの嘘は我々も疑うことがありますけれど、回想即ち主観ショットといえども、映像は噓をつかないというのが映画を観る前提ですから、本作はまずいですよね。だから、夢落ちは厳しく評価されがち。
そういう意味では、シンガーとマッカリーはうまい手品師だったということでしょうかね。

>目から鱗
うまい言い回しですよねえ。
「スティング」は元からあった鱗が落ちるタイプですね。
「テキサスの五人の仲間」もこの仲間に加えたい。すっかり騙されたものですよ。
返信する
映像は噓をつかない (十瑠)
2016-11-09 23:07:09
これが前提としてあるから、騙すのに苦労するわけで、いわばこの映画の作者は労せずして美味しい実を得ようとしている怠け者なんです。
と、なんか、思い出すとなぜか腹が立ってくるので忘れる事にします。

>「テキサスの五人の仲間」

そうですね、これも一粒で二度美味しい映画でした。
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