何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

お山の楽しみ その参

2016-08-28 21:23:47 | 自然
「山のお楽しみ その弐」より

「山のお楽しみ」を書いている最中に、お山から元気をもらう旅に出かけてきた。
ワンコと一緒に奥穂の嶺宮をお参りできなかったことの償いの意味合いもあるが、7月末に帯状疱疹にかかった家人の痛みがぶり返したからだ。 「憧れ、常に念じる山」
痛みがぶり返しながら何故に旅か? 
一旦は医師も驚くほど回復が良く安心していたのだが、夏の疲れが出やすいこの時期、疲れとともに痛みがぶり返してきた。それが、ウィルスが多少残っていたせいなのか、このまま帯状疱疹後神経痛に移行してしまうか判断がつかないままに、痛みで眠れない夜が続いていた。帯状疱疹はかなり痛みが酷いのが特徴だろうが、家人の場合、断続的にくる痛みを恐れるあまり、痛みのない時まで憂鬱に過ごしているので、御大が「気分転換と温泉が必要だ」と判断を下した。
ならばこの機会に、皆でワンコ想う旅に出ようということになり、この土日はワンコ所縁の地をまわり感謝の気持ちを伝えるつもりが、逆に行く先々でワンコの奇蹟を感じ、守られていることに感謝の念を深めて帰ってきた。

今はその余韻に静かに浸っていたい ワンコ ありがとう


さて、お山の楽しみの筆頭に食事をあげ、その次に読書をあげる私が、「お山の楽しみ」として何を今更という感じがしないでもないが、ここは王道として「自然をまるごと愛おしみ楽しむ」ことの素晴らしさをあげておきたい。

山岳部でもワンゲル部でもなかった上高地好きの私が、少しだけ高い所へと岳沢に登ったのをきっかけに、もう少し遠くへもう少し高い所へと足を延ばし始めた頃、せっかく大自然のなかを歩きながらも何も見る余裕はなかった。
何の技術もない私達が安全に登るためには、早出早着を心がけることと、確かな技術をもつ親切そうな山屋さんの後をついて歩くことしか出来なかった・・・技術の確かさと人柄の良さを見極める''目''を持っている事には、自信がある私。
それは兎も角あの頃は、急坂にあえぎながら、ただひたすら足元だけを見て歩いていた。

あれから何年もたち、同じ山域ばかり歩いているおかげで、ほんの少しだけ余裕ができてきたためか、最近では足もとの可憐でけなげな草花に気付き、写真を撮ることができるようになってきた。
今回は蝶が岳のお花畑には行かなかったし、高山植物を楽しむには時期的に遅かったせいで、あまり出会うことはなかったが、その中の幾つかを記録しておこうと思う。

山を歩いていると、手のひらサイズの植物本で草花の名を確認している人をよく見かけるが、そのような余裕は私にはまだ無く、高度が上がると何故か黄色と紫の花が増えるという漠然とした印象があるくらいでしかない。
このピンクの花は、誰も気に留める人がいなかったので珍しい花ではないのかもしれないが、私の眼には可憐で健気に映ったのでパシャリ。
何でもかんでも「プレミアムおまかせ撮影」にセットしていると、このような写真が撮れるが、いつか周囲はぼかしながら被写体はくっきりと写る接写の技術も体得したいと思ってはいる。

これは!
イワギキョウやホタルブクロを見ていても声を掛けられることはないが、この鮮やかな紫に見入っていると、「それは例の事件の花だよ」と声を掛けられた。
保険金殺人事件に使用されたことで取り沙汰されることが多いが、狂言の演目でも有名で、口中医桂助事件帖シリーズ(和田はつ子)では猛毒ではあるが鎮痛・麻酔作用をもつ薬草として度々登場する植物だ。
「附子」
別名トリカブトは、その名が戒名となった事件があることで有名だ。

トリカブトと知ったうえで目をやると、鮮やかな紫が多少毒々しく見えてくるから不思議なものだが、植物には責任はない。ただ懸命にそこに生きているだけである。
そして、懸命に山で生きているのは植物だけではない。

初めての涸沢からの帰路、横尾から徳沢へと歩いている時に、梓川の中州にたつカモシカを見た。あれ以来15年カモシカにあうことはないが、年々増えているのが、猿だった。
「お猿橋」と名を変えた方が良いのではないかというくらい河童橋周辺を闊歩していた猿だが、餌付けされた猿が狂暴化するのを恐れた関係者の御尽力のおかげか、最近では観光地・上高地で猿を見かけることは格段に減ったので、これは貴重な一枚かもしれない。



では、この猿たちが何処へ行ったかというと、本来の生息地であるお山に戻ったのかもしれない。
そして、お山で悪さをする猿が出ているのかもしれない。
雷鳥を捕食する猿が確認されたのだ。
<恐れていたことが…サルがライチョウ食べる> 2015年8月31日 21:31日テレNEWS24より一部引用
ライチョウの保護を目的に調査を行っている研究者のグループ「信州ライチョウ研究会」が、長野県の北アルプスでニホンザルがライチョウを食べている姿を確認した。
25日、ニホンザルがライチョウのヒナを捕まえて頭から食べている瞬間の写真を、松本市と安曇野市にまたがる北アルプス東天井岳で、信州大学の中村浩志名誉教授が撮影した。中村名誉教授を会長とする研究者のグループ「信州ライチョウ研究会」が、長野県庁で緊急の会見を開き発表した。
もともと標高2500メートル以上の高山帯にはいなかったニホンザルが、ここ20年ほどの間に生息範囲を広げているという。ライチョウを食べている姿が研究者によって確認されたのは全国で初めて。
サルは群れで行動するため、ライチョウを食べる習慣が広がっている場合には、ライチョウの個体数の減少に深刻な影響を及ぼす可能性があるという。
今回の確認を受けて長野県では、今後、環境省などの関係者と協議を行い、対策を検討していくことにしている。
http://www.news24.jp/articles/2015/08/31/07308384.html

日本では「神の使い」とも云われる「雷鳥」を日本人は大切にしてきたので、雷鳥は人を見ても警戒感を示すことはなかったという。実際、数年前に蝶が岳で出会った「雷鳥」は私のほん隣まで近寄ってきて、ゆっくりと寛いでさえいたものだが、今回はそうはいかなかった。
人を嫌うという風ではないが、近寄ってくることは決してなく、ハイマツの中からこちら側を見ているという感じだった。
 


ニュース末尾にある対策の一環かもしれないが、蝶が岳ヒュッテには、「雷鳥を保護するために猿を追い払う活動」への理解を求める掲示がされていた。
人が猿を追い払ったせいで、猿が本来生活圏ではない高度まで行動範囲を広げてしまい、結果として雷鳥が捕食されてしまったのなら、人が山の生き物と共存する関係性から考え直さねばならないと思う。

朝四時から高速道路を飛ばしてお山のもとへ向かう旅は決して体に楽なものではなかったはずだが、ワンコとお山の空気に触れたせいか、旅の途中から家人の体調はかなり良く、それは帰宅後の今も続いている。
楽しみだけでなく癒しも与えてくれる山を、これからも守り続けていかねばならないと思う、「山の日」制定記念の年である。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« お山の楽しみ その弐 | トップ | 特別版 もの想う山・仕合せの山 »
最新の画像もっと見る

自然」カテゴリの最新記事