何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

世界一幸福な国から学ぶ

2017-06-21 23:55:55 | ニュース
皇太子様が6月15日からのデンマークご訪問を無事に終え、帰国された。

デンマークというと、コペンハーゲンの 何と形容したらよいのか難しい 人魚姫の像とともにアンデルセンがまず思い浮かぶが、一般教養でキルケゴールを習ったことも懐かしい。
とは云うものの、ヘーゲルに抗したキルケゴールの説を理解しているわけでは勿論なく、「ソフィーの世界」(ヨースタイン・ゴルデル)にあるキルケゴールの解説冊子の一言が、般教仲間(テストの際に情報を交換する仲間内)で話題になった、そのことが懐かしく思い出されるのみではある。

(『 』「ソフィーの世界」より)
『キルケゴールにとってキリスト教は圧倒的に重要だったし、しかも理性に反するものだったので、これはもう、あれかこれか、つまり信じるか信じないかのどちらかしかなかった。「あまり」信じないとか、「そこそこ」信じるなんてありえない』

たしかその解説冊子は、<キリスト教が重要だったキルケゴールにとっては’’「あまり」信じないとか「そこそこ」信じる’’なんてことは、’’「ちょっとだけ」妊娠している’’とか’’「ちょっとだけ」死んでいる’’という状態がないのと同様に あり得ないことだった>と書いていた。
これについて、さすがに’’「ちょっとだけ」妊娠している’’はないが、’’「ちょっとだけ」死んでいる’’という状態はあるのではないか?という話から飛躍し、明白に白黒つけない日本の曖昧さを(かってに)寛容と置き替え、若気の至りで悦にいっていた記憶がある。
勿論それは、キルケゴールの説とも解説書の本筋とも掛け離れているのだが、懐かしい思い出であるし、この度デンマークときき「ソフィーの世界」を再び手に取る契機となったことを思えば、まんざら意味のないことではなかったと独り言ちている。

そのような思いで手に取った「ソフィーの世界」で気になったところを、浅い理解とともに記しておく。
『ヘーゲルは歴史の大きな流れの方に関心をもっていた。~中略~
 ヘーゲルの歴史主義は、個人からその人ならではの人生を送る責任をとりあげてしまった』

個々人から、その人ならではの人生を送る責任を取り上げれば、どうなるか?
『近代の都市社会では個人は大衆の一人になってしまう、とキルケゴールは考えた。
 そして大衆のいちばんの特徴は無責任なおしやベリだ、と。
 よく付和雷同と言うけれど、さして深い思い入れもないのに、みんなが同じことを 「そう思う」 だの
「そう信じる」 だの言うことだ』

だが、このような付和雷同は、『真理は主観的だ』『一人ひとりの実存、つまり個人が事実どう存在するか(が重要)』と考えるキルケゴールの姿勢と鋭く対立する。

日本の刑法学にも大きな影響を与えているヘーゲルに対し 厳しく抗するキルケゴールの思索を云々する能力は私にはないが、歴史や体制という大きな視点を重視するあまり、その時代や社会に生きる個々人を見失い、歴史や体制のなかをただ彷徨う付和雷同(的)人間を創り出していては、その国の未来が明るくないのは確かだと思う。
そして現在の日本は、この手の危険に満ち満ちていないか?
歴史や伝統や体制を保守するあまり、そこに生きている人間から、その人ならではの人生を送ることを取り上げてはいまいか、その結果、非常に脆弱な社会となりつつあるのではないだろうか?

対して、ヨーロッパ全土でマスターキーとも云われるほど重要視されたヘーゲル体系に、キルケゴールの警鐘が上手く活かされたのがデンマークではないだろうか?
北欧と云うと、福祉が充実しているとの印象があるが、皇太子様の御訪問を機にデンマークについての各種の資料をあたると、高齢者や児童の福祉だけでなく、環境問題や女性の社会進出でも先進的な取り組みがなされ、デンマークは「世界一幸せな国」(2013,2014,2016年一位、2017年二位、日本は2017年51位 世界幸福度報告書より)と評されるほどだという。

国民が自国に真の誇りをもち愛するのは、決して他者との比較からではなく、その人ならではの人生を送る自由が保障され又その責任を負うことが出来る国であるときではないだろうかと、皇太子様ご訪問を機に考えていた。
そんな私の思いを後押しする記事を、連作で掲載しておきたい。

<デンマーク王室 王位継承 法改正し女子も容認> 毎日新聞2017年6月17日 12時36分より全文引用
デンマーク王室はかつて、日本の皇室と同じように王位継承は男性に限っていたが、国王に男子がいない場合は女子の王位継承を認める法改正が行われ、マルグレーテ2世女王が即位した。現在は性別を問わず国王の第1子が王位を継承する仕組みとなっている。
マルグレーテ2世女王はフレデリック9世国王の第1子として誕生した。妹が2人いたが、男のきょうだいはなかった。当時、王位継承は男子だけに資格を認めており、次の国王にはフレデリック9世国王の弟が就くことが想定されていた。
しかし、国王の実子のマルグレーテ王女(当時)が王位に就くことを求める声が国民から高まり、1953年の法改正によって女子に継承資格が認められた。72年、フレデリック9世国王が亡くなり、マルグレーテ2世女王が即位した。
この法改正でも、継承資格は国王の実子の中で男子が優先だったが、男女平等にすべきだとの世論が広がり、2009年に性別に関わらず第1子が王位を継承できるようにする法改正が国民投票で実現した。フレデリック皇太子はマルグレーテ2世女王の長男で、次期国王となる。
https://mainichi.jp/articles/20170617/k00/00e/040/293000c
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