何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

神坐す山の怒りの火

2015-05-08 12:26:25 | ニュース
「神坐す山の人々(2/19)」でもちらりと書いたが、この冬の「暖冬」の予報が(例によって例の如く)外れた理由の一つに噴火があるのではないかと考えていた。
世界中で火山活動は活発化しているなか、あまり伝えられていないが日本でも昨年から桜島が活発に活動している。

1993年、外米の輸入を受け入れざるをえなくなった理由が火山の噴火であったことは、記憶に新しい。
食糧の貿易自由化は国民の懐疑的視線も強く抵抗を続けていたが、1991年のフィリピンの火山が大規模に噴火したため日本が冷夏となり、コメ不足が生じたことから、外米を輸入せざるをえなくなったのだ。
冷夏となった理由として当時「対流圏の更に上にある成層圏まで噴煙が行くことにより、太陽に雲がかかってるような日傘効果とも言われる状態になり、冷夏になる」と説明していた記憶があるので、暖冬予報が外れたのは火山活動の影響もあるのではないかと考えていたのだ。
そんな記憶があったので、一度読んだことのある「死都日本」(石黒耀)を再読しようと思っていたのだが、桜島だけでなく吾妻山、蔵王、箱根と次々と火山活動が活発化してくるので、恐ろしくなっている。

<桜島の噴火、500回超に>2015年5月7日(木)12時47分配信 共同通信 より一部引用
鹿児島地方気象台は7日、桜島・昭和火口(鹿児島市)の爆発的噴火が同日午前1時20分ごろに今年500回目に達したと明らかにした。年明けから127日目の500回到達は1955年の統計開始以来、最も速いペース。7日正午時点で502回となっている。
気象台は「活発な活動が続いており、多量の降灰を伴う噴火の可能性もある」と注意を呼びかけている。

<吾妻山で火山性微動 今年に入り3回目>2015.5.6 16:50産経新聞より一部引用
仙台管区気象台は6日、吾妻山(山形、福島両県)で火山性微動を観測したと発表した。今年に入り、1月と2月に続いて3回目の観測で、周辺に注意を呼び掛けている。気象台によると、地下のマグマや火山ガスの動きを示すとされる火山性微動は6日午前3時20分ごろ、約5分10秒間にわたって観測された。火口付近を震源とする火山性地震も3日以降、多い状態だという。

<火口周辺警報でGWの蔵王に異変 深刻な客離れで廃業するホテルも>FNN 5月4日(月)17時59分配信より一部引用
箱根山で火山活動活発化が懸念される一方、現在、御嶽山、新燃岳など全国13カ所の火山で、噴火警報が出されている。そのうちの1つ、宮城県と山形県にまたがる蔵王山では、噴火の可能性があるとして、4月13日、火口周辺警報が出された。
本来、多くの観光客が訪れるはずのゴールデンウイークだが、深刻な客離れから、あるホテルは、ついに廃業に追い込まれる事態となった。

<箱根山で火山活動が活発な状況続く 気象庁、現地調査へ>FNN5月8日(金)5時2分配信より一部引用
噴火警戒レベルが2に引き上げられた神奈川県の箱根山では、火山活動が活発な状況が続いていて、気象庁は8日朝から、大涌谷に観測班を派遣して、現地調査を行うことにしている。
気象庁によると、箱根山では、引き続き火山性の地震が観測されていて、地震の回数は減っているものの、活発な火山活動が続いている。



蔵王で廃業に追い込まれるホテルが他人事ではない箱根も必死で観光を呼びかけているが、「死都日本」で書かれる噴火は、観光業どころか日本を根こそぎ潰すような凄まじいエネルギーをもったもので、しかも、それが決して絵空事でないというのが恐ろしいところだ。

「死都日本」の作者の石黒氏は医師であり地質学者ではないが、専門家をして唸らせるほど専門的内容であると同時に、災害と国民性(伝承も含め)について独特の見解が書かれているところが興味深い。
古事記などについて火山と絡めての独特の説については追々書くとして、踊狂現象発生年と地学的事件の記録が自分としては気になるので、かなり長い引用となるが、まずは記しておく。
(引用はじめ)
踊狂(ようきょう)現象、もしくは大衆乱舞現象。どちらも聞き慣れない用語であるが、言葉の通り集団で踊り狂う現象である。それも百人や二百人ではない。全国同時多発的に何十万人、何百万人が踊り狂い、大河の奔流の如く溢れ出して伊勢参りをするという日本独特の怪奇現象で、古くは飛鳥時代からそれらしい記述がある。
西暦938年には、はっきりした記録が残っており、次第に大規模化していった。1705年の大衆乱舞現象では、全国で実に三百五十万人が参加。「お陰踊り」を踊りながら伊勢神宮へ集団参拝した為、「お陰参り」とも呼ばれる。当時の人口が二千万人台だったことを考慮すると、社会学者はこれでよく国家体制が維持できたものだと感心するが、著者はまったく別な観点からこの現象に注目している。
実は、踊狂現象の後には、奇妙な程に地学的な大事件、それも世界規模の地学イベントが発生するのである。
本から抜粋すると、
【踊狂現象発生年】   【地学的事件】  
1096年         1096年東海地震(M8~M8.5)推定死者一万以上
              1099年南海地震(M8~M8.3)推定死者数万
1497年         1498年南海地震(M8.2~M8.4)死者四万以上
1604年         1605年慶長地震(東海地震M7.9、南海地震M7.9)死者一万~二万
1705年         1707年宝永地震(東海~南海地震M8.4)死者二万以上
              1707年富士山宝永噴火
これらの地震や富士火山噴火といった大地変を予言するように踊狂現象を起こすのが、 日本人という民族の不思議さである。世界有数の天災国で生活するうちに、地震前に騒ぐ犬のような能力が育ったのであろうか?
~中略~
『踊狂現象の終点が、日本最大の活断層・中央構造線の東端上にたてられた伊勢神宮というのは偶然にしては出来過ぎた話だ』
『踊狂現象とアマテラス信仰の拠点・伊勢神宮が、ある地学的な因縁で結ばれているからだ』
(引用終わり)

小説では、解散総選挙の異常なまでの盛り上がり熱気を踊狂現象の一つと考えて、地学的事件の発生を予期する場面が出てくるが、最近熱狂的な政権交代を二度までも経験した踊狂ぶりと、過去最高の賑わいであった一昨年の式年遷宮を思い起こすと、何やら心穏やかでない大地の変動が俄かに現実味をもって迫ってくる。

私が「死都日本」という超長編の感想の筆頭に踊狂現象をもってきたのには理由がある。
自分自身が踊狂現象の直中にいた一人かもしれないからだ。
我が家は年に一度は伊勢神宮にお参りするが、ここ数年は御無沙汰しており御遷宮の年も心動かされなかった。
が、昨年の「おかげ参り」は感動した。
外宮の木立をしずしずと進めば自ずと心が平らかになるのが常であり、昨年暑いさなかにお参りした時も、その静謐さは変わらなかったが、御遷宮に前後して皇族方のご訪問が相つぎ、昨年春には三種の神器を携えての両陛下の参拝があり、続いて皇太子御一家も参拝されたからだろうか、伊勢神宮は常になく熱気に溢れていた。
この熱気を体感し、自分自身も熱気を発していた自覚があるので、踊狂現象が気になったのだ。

東日本大震災からの復興さえままならない現在において来るべき災害を予測するのは心が重いが、2010年チリを襲った大地震から5年後の今年4月には「チリ大噴火」が起きていることを考えると、今現在次々と警戒レベルを上げている日本の火山について更なる監視が必要なことは確かである。

自分も踊狂現象の一部にあったと自戒の念をこめながら、火山活動の恐ろしさを読み進めたいと思っている。

つづく
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