何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

千に一つの不出来を恥じる

2015-04-20 19:05:18 | 自然
この週末も雨模様だった。

3月中旬から4月上旬にかけて降る長雨を菜種梅雨というが、その風流な響きすらウンザリするほど今年の春は雨が多い。
春雨は柔らかい雨というイメージをかってに持っていたが、今年のそれは「春雨じゃ濡れてまいろう」とばかり言ってはおれない吹き降りの日もある。
そして今日は穀雨。
穀雨とは穀物の成長を助ける雨とくれば本来は有難いが、穀雨から立夏まで雨が降る日が多いと聞けば、「作物の成長を助けるも何も、こう雨ばかりでは夏野菜の苗を植えるための土の準備ができない」と独り言ちている。
グチってばかりいても仕方ないので、雨の日曜日エア庭いじりをしていた。
家庭菜園にも収穫の喜びはあり、それを思うとあれもこれもと植えたくなるが、猫の額のような庭だけに、連作できないものを頭に入れつつ、どこに何をどれくらい植えるかは、なかなか難しい。

まずトマト。
桃太郎のような、かぶりつきたくなるようなトマトも植えたいが、これが育ったためしがない。
ではトマトに不向きな土かというと、冬中かけて作った堆肥in大型プランターで、ミニトマト「アイコ」は鈴なりに実ってくれるので、土が悪いはずはない。
だから我が家のトマトは、アイコちゃん。
「愛子ちゃん、元気に大きく(お幸せに)育っておくれ」と心をこめて育てている。
6苗植えると、ご近所におすそ分けして、残りを冷凍保存しても十分な量の収穫、これをチビチビ出してきてはパスタのソースやミネストローネに使いつつ、次の収穫まで凌ぐ。

唐辛子1苗、シシトウ2苗、ピーマン6苗
緑鮮やかなピーマンと土を改良するマリーゴールドを一緒に植えると、野菜作りであっても、ちょっとしたガーデニング気分も味わえる。

キュウリは3苗
我が家の力量では1苗から10本程度しか収穫できないし、失敗することも多いが、もぎたてのキュウリを自家製フキ味噌もどきで食べるのは堪えられないので、これも外せない。

問題は茄子。
上手く出来たためしがない。
ご近所には実家や本家が農家という方もいて、色々アドバイスを下さる。
「土が悪いのでないの?」との意見をうけて、超上等の堆肥入り土で作ったがダメ。
「苗は、あそこのが良いよ」との意見をうけて、遠方の苗屋まで出かけたが、それでもイマイチ。
「日当たりが大事」という意見もあれば、「あまり日当たりがよいとダメ」という意見もあって色々試したが、難しい。

「 親の意見と茄子の花は、千に一つの無駄も無い 」
というが、我が家の茄子は、薄紫の奇麗な花までは咲いてくれるのだが、(食べられるような)実にならない。
かなり小ぶりで、歯が立たないような固い茄子の実を見ては、「親の意見を活かしてきたか」と我が身を振り返り苦い思いを噛みしめている。

今年も我が身の不甲斐なさを反省するために茄子を植えるべきか、エア庭いじりをしながら考える週末であった。

ところで今「民王」(池井戸潤)を読んでいる。
この本は解説が「一気読み間違いなしの政治エンタメ」と書いているように主題は政治なのだが、農業について書かかれている部分があり、エア庭いじり中の自分の印象に残った。

これまでも「時代に即した祈り(3/19)~「ブラックボックス」(篠田節子)「黙示」(真山仁)」などで、農業で生計を成り立たせるという観点に注目してきたが、「民王」でも同じ葛藤が書かれている。主人公の一人が就職を希望するアグリシステムという無農薬食品を生産販売する会社が、無農薬野菜で豊かな食卓をという理想(夢)から収益を重視した生産に切り替えるしかない、という場面があるのだ。
ここで就活青年?がいうセリフが印象に残っているので記しておきたい。

「今の日本は不景気で、給料も下がり、人々の生活は苦しくなる一方かもしれません。生活費をできるだけ切りつめたいと思っている人は少なくないとは思います。そんな中でも日本人として、人間として守らなければならない一線というのはあると思います。それが食です。本物は高いから買わないというのなら、それは構いません。しかし、知らないから買わない、知らないから買えない社会になっては、日本の食文化は本当にダメになってしまうと思います。~中略~
本物の野菜の味、米の味、生産者のこだわり、忘れられようとしている日本の食文化を、世に広めたい」

会社としては収益を重視せざるを得ず、収益重視の農業に切り替えを図るが、日本の豊かな食文化を守るという夢も忘れまいとする場面が最後にはある。

「震える牛」(相場英雄)によると、知っていたら買わないような食品もあるようだし、知らないために買えない良い食品もあるようだ。
これからも食を書いた本には注目していきたいと思っている。

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