魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

用心棒★★★★★

2008年01月25日 | Weblog
【概要】
馬目の宿は縄張りの跡目相続をめぐって一つの宿湯に二人の親分が対立、互いに用心棒、兇状特をかき集めてにらみ合っていた。そこへ桑畑三十郎(三船敏郎)という得体の知れない浪人者がふらりとやって来た。

【感想】
三船敏郎は「~~三十郎」がはまり役です。この映画の後に素浪人物を演じる彼ですが、どれもこのキャラクターが元になっているような気がします。それ程にこの桑畑三十郎のインパクトは強烈でした。
話し言葉や態度はぶっきら棒だが頭が冴えている。そして優しい、魅力的なヒーローです。翌年の傑作「椿三十郎」はさらにユーモアを加えていますが、「用心棒」はもう少しドライな雰囲気に仕上がっています。

やくざの二大勢力がコミカルに描かれていて、悪人といえども何処か憎めない。山田五十鈴は毒婦を演じさせたら右に出る者はいないと思うのですが、「どん底」では超憎たらしい役を演じていた彼女でさえ、今回はどこかユーモラス。
居酒屋の東野英治郎、番屋の沢村いき雄、棺桶屋の渡辺篤コンビ、
三十郎との勝負を前にしてそそくさと逃亡する用心棒の本間先生に藤田進、
脇役達も生き生きとしていて、その人たちを見るのも楽しい。

それと、佐藤勝の音楽が、およそ時代劇とは思えないような選曲で斬新。彼も日本を代表する映画音楽家ですが、彼は時に叙情的に、時に実験的に曲調を変えられる凄い作曲家だと思います。

今回の舞台である宿場町は、全て一から作りあげたセットだそうですが、物凄く良く出来ていて、「ああ、これはセットなんだな」とは思わせません。
細かな所まで神経を行き届かせている。それだからこそ黒澤明のダイナミックな画面構成が堪能できます。

映画とは、メッセージ性を含んでいることも勿論大切ですが、その前に、作品として面白くなければ映画として成功とは言えません。
黒澤明の「用心棒」は、娯楽映画の傑作です。

やっぱり、時代劇は白黒(モノクロ)がいいな。と思いました。



監督 黒澤明
脚本 黒澤明 菊島隆三
音楽 佐藤勝
   
桑畑三十郎 三船敏郎
卯之助 仲代達矢
ぬい 司葉子
おりん 山田五十鈴
亥之 加東大介
清兵衛 河津清三郎
居酒屋の親爺 東野英治郎
名主 藤原釜足
番屋の半助 沢村いき雄
棺桶屋 渡辺篤
用心棒本間先生 藤田進

1961年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)