糸へん暮らし

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鬼滅の刃 ヒットの理由は…

2020-06-23 08:15:45 | 日記
今もまだ、ハマっています。単行本派ゆえに、ネタバレに気を付けながら生活しています。
去る5月23日、朝日新聞「耕論」にて「鬼滅の刃」が取り上げられていました。
タレントの椿鬼奴さん、評論家の中条正平さん、ゾンビ研究者!福田安佐子さんがそれぞれ批評されていたが、
面白いと思ったのは、自称大ファンの椿鬼奴さん。中条正平氏に至っては「嫌い。つまらん」がにじみ出ていました。
曰く、従来通りで目新しさが無い、まあみんなコロナでにおびえていたからかねえ…。そのせいで流行ったんじゃないの??…読んでいる方も「つまらん文章だ」と思ってしまいました。

あまりに斬新なものは、いきなり流行ったりしないと思います。
ジャンプのお約束「友情、努力、勝利」だからこそ、流行ったのではなかろうか。

だからと言って新しさが無いわけではない。
「ワ〇〇ース」のように、「女は爆乳、爆尻!」ではなく、女性受けするキャラクターも多数登場するのも、ジャンプでは画期的だと思う。
でも一番画期的なのは、限りない優しさと鋼のメンタルを持つ、竈門炭治郎というキャラクターではなかろうか。

炭治郎はいきなり孤児になった。
児童文学には、よく孤児が出てくる。最近ではハリーポッター。額に傷があるところも炭治郎に似ているが、彼が失ったのは、庇護されるべき両親ではなく、彼が養う「扶養家族」なのだ。
長男の炭治郎は、13歳にして家長である。
「…きっと人間に戻してやるから きっといつか綺麗な着物を買ってやる みんなにしてやれなかった分まで 全部お前に」
これが13歳の台詞だろうか。
同時に、旧悪の権化のように言われていた、旧民法下の家父長制を、こんなにうまく使った漫画も珍しいのではなかろうか。
彼は、唯一残った扶養家族を文字通り背負っていく。禰豆子は子どもの役割を担っているが、鬼である禰豆子は炭治郎より強く、ここぞというところで、炭治郎を助ける。
養い、助ける子どもに、実は助けられていたということは、よくある。子どもが親よりもしっかりしている、ということも、よくあることだ。
そして炭治郎の優しさは、性別を通り越して、慈母のそれですら、ある。彼の人生の急変は、子どもを持っていきなり人生が変わった女性のそれに似通っている(何しろのちに「おふくろ」と呼ばれるのだから)。
もっとも私自身は、男の方が女より優しいと思っているし、母性愛という特殊な愛は無いと思っているが…。世の中的に、従来のステレオタイプというか、思い込みが崩れてきたことも、追い風になっているのかもしれない。

慈母炭治郎は、父から受け継いだ耳飾りを付け、父から受け継いだ「ヒノカミ神楽」で戦っていく。
そして彼は(単行本20巻の時点では)禰豆子を一言も責めない。「お前が生き残ったせいで、大変な目に…」とは言わない。まさしく理想の母の権化である。
炭治郎をサポートするメンバーには、父性を持つものが多い。厳父であり慈父である鱗滝、身を挺して彼を守り、生き方を指南して逝く煉獄杏寿郎、彼の弱さを叱咤しつつ、新しい生き方を示し、庇う冨岡義勇。
お館様は…どちらかと言えば、母だなあ。いや、おばあちゃんか。人格者だが、年寄のような老獪さも持っているように思う。
そして無惨は、鬼母だ。自分の血を分けた下弦の鬼を粛清する時、女性の姿だったのが象徴的だ。

あと、興味深いのが胡蝶しのぶ。
「姉のように優しくなりたい」と、姉が好きだと言った笑顔を、顔に貼り付けているが、
「怒っていますね」と、本物である炭治郎に、あっさり見抜かれる。
これが「姉」でなく「母」だったら、「母のようになりたい」と自分を殺している、こんな女性はごまんといる。
復讐を終え、本来の自分に戻ったしのぶは、鬼の童磨を魅了するほど素敵なのに。

このマンガの登場人物の多くは、大なり小なり家族を背負っている。でも「仲間たちみんなが家族だ!」にはならない。
その点も新しく、今の時代に合っていると思う。
「鬼滅の刃」ファンはおそらく、子どもと大人に二分されるのではなかろうか?その間の若い層、親や家族を、ちょっと重いと感じる層、そもそも家族というものに拒絶反応を示す層には、たぶん受けない。
中条正平さん、たぶんそういうタイプなんでしょうね。

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