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コロナワクチン接種後の心筋炎、どんな症状? 頻度は「極めてまれ」
2021 06 28 (月) 18:53
2回目接種後、10~20代の男性に多い、通常の心筋炎より早く回復
ある10代の少年が4月下旬、突然始まった胸の痛みを訴え、米オレゴン健康科学大学病院を訪れた。MRIで撮影したところ、心筋炎(心臓の筋肉の炎症)が見つかった。小児感染症の医師ジュディス・グスマン・コトリル氏によれば、この病院では年に数例、心筋炎になった若年者を診察することがある。
しかし、気になるのはタイミングだった。少年は症状が出る数日前に、米ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を受けていたのだ。
その数週間後、グスマン・コトリル氏はジョージア州アトランタの医師から電話を受け、同じようにファイザー社製ワクチンの2回目の接種を受けた2日後に心筋炎を発症した患者がいることを知った。その日のうちに、コネチカット州でさらに2件、同様の事例があったというメールが届いた。
「心筋炎自体はさほど珍しくありませんので、それだけで何か新しい病気を疑うほどではありませんでした」と氏は振り返る。「ただ、健康な少年が胸の痛みを発症したという事例を、その時点で4例も聞いて、偶然にしては多すぎると思いました」
米疾病対策センター(CDC)の予防接種に関する諮問委員会(ACIP)は、12~29歳の心筋炎および心膜炎(心臓を包む膜の炎症)の症例が、6月11日までに323件確認されたとしている。その大半が、メッセンジャーRNA(mRNA)を使ったファイザー社製または米モデルナ社製の新型コロナワクチンを接種してから1週間以内に診断されている。この件数には、5月にファイザー社製ワクチンの接種が承認された12~15歳の子どものデータが含まれている。
委員会が6月23日に発表したその報告書によると、これまでのところ、ワクチン接種後の心筋炎は10代後半から20代前半に最も多い。また、2回目の接種後に発症しやすく、女性よりも男性に多い。
CDCの新型コロナワクチンタスクフォースのメンバーであるトム・シマブクロ氏は、ワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の発生率は、他の一般的な原因による心筋炎および心膜炎の発生率よりも高いと発表で述べた。しかし、症例は今のところまれであり、大多数の患者は治療にすぐに反応しているという。
「心筋炎が起こるのは、いまだにレアなケースです」とシマブクロ氏は述べる。「心強いことに、現在得られているデータからは、患者は症状から回復し、良好な経過をたどると言えます」
心筋炎、心膜炎とは?
若い人の心筋炎や心膜炎は多くの場合、ウイルス感染が原因だ。最も一般的な引き金は、手足口病などを引き起こすエンテロウイルスであり、感染は夏に最も多いと、米エール大学医科大学院の小児循環器科主任ジェレミー・アズネス氏は説明する。また、天然痘ワクチンの接種後に心筋炎を発症した例もある。4月に10代の若者で急増した心筋炎について把握するため、グスマン・コトリル氏らは、4月または5月に胸の痛みを訴えて受診した14~19歳の健康な少年7人の経過を詳細に調べた。すると、以下のことがわかった。
全員、ファイザー社製の新型コロナワクチンの2回目の接種を受けてから4日以内に症状が現れ、検査の結果、心筋炎または心膜炎が確認された。7人全員がすぐに回復し、うち3人はイブプロフェンなどの一般的な解熱鎮痛剤のみの投与で回復した。この結果は6月4日付けで医学誌「Pediatrics」に発表された。
この7人の経過は、ワクチン接種後の心筋炎が若年層、特に男性に多いと示唆する、米国やイスラエルにおける複数の症例報告とも一致していると、CDCの新型コロナワクチンタスクフォースのメンバー、マシュー・オスター氏は述べる。
氏はアトランタの小児医療センター「チルドレンズ・ヘルスケア・オブ・アトランタ」の小児心臓専門医で疫学者でもある。これらの報告によると、症状は一般に軽い。回復も比較的早く、通常の心筋炎では6日かかるところ、2~4日で退院する傾向にある。
「典型的な心筋炎よりも早く治るようです」と、オスター氏はACIPの会議で述べた。「これについて、私は楽観的です」
今回のデータは、これまでに得られているCDCの証拠と矛盾しない。シマブクロ氏によると、6月11日までに確認された323人の心筋炎および心膜炎の患者のうち、309人が入院した。そのうち295人が退院し、218人がすべての症状から回復した。同日時点では9人がまだ入院中で、2人は集中治療室(ICU)に入っていた。症例の多くはワクチン接種後数日以内に報告され、特に2回目の接種後に多い。年齢別では10代後半から20代前半にピークがあり、50歳を過ぎると少ない。
CDCの数字は、現場の医師たちの実感とも一致している。コネチカット州ニューヘイブンにあるアズネス氏の病院では、ワクチン接種後に心筋炎を発症した21歳未満の患者を10人、21歳以上もほぼ同数、治療したという。シカゴにある米ノースウェスタン大学ファインバーグ医科大学院の小児心臓専門医スチュアート・バーガー氏のグループでは6例の心筋炎を診察し、ほとんどが16歳以上の男性だった。いずれも軽症で、胸の痛みはすぐに治まった。
「これはCDCの説明通りです」と、米小児科学会の広報担当でもあるバーガー氏は言う。「また、他の医師や医療機関からも同様の報告が上がっています」
まれな副反応を見つける
ACIPのチームは、12~39歳でmRNAワクチンの2回目の接種後21日以内に心筋炎または心膜炎を発症する割合を、100万人あたり12.6件と算出した。計算に用いたのは、ワクチンに関連する問題を誰でも報告できる「ワクチン有害事象報告システム(VAERS)」と、米国内の9つの医療機関の電子医療データを利用した「ワクチン安全性データリンク(VSD)」のデータだ。CDCはVAERSに寄せられた報告を引き続き調査しており、シマブクロ氏はこの推定発症率について、意思決定の指針として臨床現場で重視しすぎないように注意を促している。しかし取材した専門家らは、ワクチン接種の実施回数に比べてリスクは低いようだと話す。
6月27日までに、米国では16~17歳の320万人以上、12~15歳の450万人以上が少なくとも1回のワクチン接種を受けた。グスマン・コトリル氏の16歳と13歳の子ども(うち1人は自己免疫疾患をもっている)も、すでにワクチン接種を受けた。「接種済みの人が増えているのは、非常に心強いことです」
接種を受けた人の数が増えても、心筋炎の発症率が爆発的に増加しているわけではないと氏は付け加える。「胸の痛みを訴える10代の子たちで救急外来がいっぱいになったりはしていません」
ワクチンと心筋炎の関連性
ワクチンがどのように心筋炎を引き起こすのか、科学者にもまだわかっていない。オスター氏によると、有力な説の1つはサイトカイン反応(免疫細胞を戦闘態勢にする分子の分泌)が関係するというものだ。これにより、ワクチン接種後すぐに心筋炎の症状が現れる理由が説明できる。臨床試験では、発熱、筋肉痛、悪寒、倦怠感などの副反応の発生率が、高齢者に比べて若年層で高いことがわかっているが、これらの症状は炎症が原因だとグスマン・コトリル氏は言う。そのため、心筋炎もまた最も深刻な炎症反応だと考えると納得がいく。
ワクチン接種後に心筋炎が発症するメカニズムは、手足口病などのエンテロウイルスに対する反応とは異なるとアズネス氏は付け加える。ウイルスが心臓組織に直接侵入するのではなく、ワクチン接種後、免疫系そのものが心臓に影響を与えるのだ。
「一部の患者では、ワクチンに対する免疫反応と心筋との間に何らかの交差反応が生じているに違いありません」とアズネス氏は言う。
ワクチン接種後の心筋炎の治療については、市販の解熱鎮痛剤の服用から点滴治療やステロイド剤の投与まで、病院ごとに異なる方法がとられている。メカニズムをさらに解明するとともに、長期的な追跡調査を行うことで、最適な治療戦略が明らかになるはずだ。
また、なぜ男性に多いのか、どのくらいの期間で回復するのかについても、さらなる研究によってわかってくるだろう。グスマン・コトリル氏は7人の患者について、最初の診断から3カ月後にあたる8月に再検査する予定だ。
今回の調査結果と、新型コロナにかかると多臓器不全症候群などの重篤な合併症のリスクがあることを踏まえ、専門家は引き続き10代の若者にワクチンを接種することを推奨している。
「この年齢層の新型コロナ患者の中には非常に重篤なケースもあったので、やはりワクチン接種は適切だと思います」とアズネス氏は述べる。「他の新しい治療法に対してと同様に、私たちは常に注意を払わなければなりません。それが今、私たちがやっていることです」
編注:日本循環器学会は「急性心筋炎・心膜炎が新型コロナワクチン接種後に発症する頻度は極めて稀」「新型コロナワクチン接種により感染・重症化予防を図るメリットの方が、新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎・心膜炎に対する懸念よりも圧倒的に大きい」とする資料を6月23日の厚労省の検討会に提出しています。資料はこちら(https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796566.pdf:PDFが開きます)。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bec10de43f9ac4c93e3ed8fa6a04b63e20b73aad?page=1
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■ 2009年7月9日
「我が郷は足日木の垂水のほとり」 はじめました。
本稿はその保管用記事です。
■ 2010年3月2日 人気blogランキング(政治)にエントリーしました。