水木しげる先生追悼特番。
2010年度上半期朝ドラ『ゲゲゲの女房』の総集編の感想です。
感想と言うか、まず思ったのは…
この作品をリアルタイムで観ていなかったことを悔やみました。
「今のBSの『どんど晴れ』が終わったら、ゲゲゲを再放送してくれるかな」
と淡い期待を抱いたのですが…。
5年前の作品ですが、BSでの再放送、CSでの再放送もすべて終わっているとのこと。
「どの局でもよーい!全編再々放送をしてくれーい!!」
と信西入道よろしく叫びたくなるくらい、『本編を観たくなる総集編』でした。
朝ドラ感想記事のまとめ。
・『あさが来た』10週その2.姉妹の最後の夜、はつの問いかけ、新次郎覚醒!
・『あさが来た』10週その1.惣兵衛の和歌山プレゼン、五代さんの脳内祝言、NHKの本気お披露目会。
・一覧はこちら→朝ドラ感想記事のまとめ。
■何かおる
舞台は島根県東部の安来は大塚。
1939年(昭和14年)、飯田布美枝(子役:菊池和澄、佐藤未来)という少女が主人公の作品です。


「どげした?」
「何かおる」
「えっ」
「後ろから追ってくるよ」
「ははん。おまえ『べとべとさん』につけられちょ~な?」
「『べとべとさん』?」
足音にびびる子役布美枝ちゃんがかわいいです。
こんな感じでやけに暗がりがあって、やけに冷えて、「何か」がいそうな森あったなあ…と懐かしく思いました。

アニメーション合成のベトベトさん。
普通に「森の中で何かが後ろからついてきてる」だと、「変質者か」となりそうなご時世なだけに。
アニメーションで入ると、ファンタジー独特の安心感がありました。

オープニングでも使用されていますが、「水木しげるとその奥さんの話」って感じがして。
それを鬼太郎やネズミ小僧、猫娘たちが観てるってのはなんだか心が温まります。
■ご縁の糸
時代は変わり
成人した布美枝(松下奈緒)。
縁談があるも、背の高さがネックになり破談になってしまいます。
そのことを布美枝本人に伝えようというするとき
「背が高くて断られたとは言うなよ!おい!ミヤコ!」
「決まった相手がおったと言うんだぞ」
「布美枝がくよくよするけんな」
と源兵衛(大杉漣)が、向こうに見えている背中に向かって話しかけるのですが

もうこの表情。
源兵衛が話しかけていたのは妻のミヤコではなく、フラれた本人の布美枝。
布美江の「辛い、でもわかってた」というような自虐的な僅かな微笑み。
この時点で結構グッと引き込まれました。
そんな布美枝を励ましたのは祖母の登志(野際陽子)。

「何言っちょ~ね?私断られたんだよ」
「今回はご縁がなかった。それだけのことだが」
「一緒になる人とはきっとご縁の糸で結ばれとるよ」
「見えんでもある」
布美江が幼いころに見たベトベトさん、「見えんでもおる」ものたちのように。
誰かとつながったご縁の糸は「見えんでもある」。
周りが結婚し母親となり、焦りも感じる中、この言葉は暖かっただろうなあ。
余談ですが、布美枝の洋裁学校の友人たちのこの言葉。
「そげなこと言っちょったら、すぐおばさんになるよ!」
「婚期を逃して売れ残~よ!」
「いかず後家だわ!」
結構えぐいなww
■スピード婚
1961年(昭和36年)、そんな布美枝に縁談がやってきました。
漫画家・村井茂(ペンネーム、水木しげる)の登場です。

「ふ~ん、えらいクラシックな家だなあ」
「『座敷童子』か『あずきはかり』でも住み着いとりそうだ」
独特の雰囲気。
なんだろう、高等遊民とはまた違うんだけど、なんだろう……マニア?そんな感じ?
ていうか向井理ってこんなだったっけ…?(いい意味で。放送当時ほんっとに観てなかった)
見合いの次第は進みますが、源兵衛がストーブをつけようとしたとき。


「はっ!」
「布美枝…座れ」
思わず立ち上がってしまった布美枝。
背の高さがあらわになり、源兵衛からも「座れ」の一言。
でも茂は気にせず、そのまま片腕で器用にストーブをつけて、何事もなかったように見合いは進みました。
そしたら
「よーしじゃあ結婚しよう!」と。
ふぁっ?!早くね?!

「世はまさにスピード時代ですけん」
だとしても早ぇ!

「5日後の1月30日でお願いできんでしょうか」
「はあ?」
「『善は急げ』と申しますけん」
急!善めっちゃ急!!
いやあ朝ドラでいろんな結婚観てきたけど。
出会って5日、交際期間なしに婚約っていう超スピード婚があったとは。
唐突っていうよりも、村井家的に早く決めちゃいたかったのかなあ、と思います。
あと布美枝自身も了承するけど「これがご縁の糸」と、一瞬で察知した女のカンなのでしょうか。
(うーん、本編で描かれていたことが気になる)
■ふるさと
結婚式は5日後。ばたばたと準備が進められる飯田家ですが、旅立ちのシーンもしっかりと。


「近くにおったらしてやれることも、東京に行ったら何もしてやれん。そげ思ったらもう情けなくて」
「そげだよ。青海波の波の模様には日々の暮らしが静かな海のようにいつまでも続くという意味があるんだよ」

「ありがとう」
子どもに戻ったように涙をこぼすの布美枝に思わずホロリ。
松下さんの少しかすれた「ありがとう」の声に、また鼻の奥がツンとなる。
「いつ縫ったの?夜なべしたの?」
「無理したらまたリューマチ出るよ」
「痛くなってももうお灸据えにあげには来られんよ」
と母のミヤコを気遣う言葉に、育ちのいい子なんだなあと。

「どげだ…ピカピカの特級酒だ」
父・源兵衛は明日の婚礼に控えた酒を選んでました。
特級酒を差し出す父。
それは自慢の娘を嫁に出すような胸を張っている強さでもあり、でも娘と離れなくてはならない切なさでもあり。
茂さんは左腕が不自由、しかも安来から遠い東京の地。
苦労があるかもしれない、それでもなおこの言葉。
「だども人生はその先が大事だけんな。40年50年一緒に生きた果てに、これでよかったと思えたらそれでええんだ」
ここまでフィクションなのかどうかはわかりませんが。
水木さんと布枝さんお二人もそう思ってらっしゃるのかもしれません。

「長い間…お世話になりました」
先ほど母に見せた表情とはまた違う涙の表情。
堪えるように、でも父の姿を目にしっかりと焼き付けるように。


「何言うちょ~だ。もう寝れ。明日の朝は…早いぞ。ぐずぐずせんと…もう寝れ」
そんな布美枝には背を向けたまま、源兵衛。
『もう寝れ』、とても短い言葉の中に源兵衛の気持ちがぎゅっと凝縮されてるんじゃないかなあと思います。
まだ子供だと思っていた、まだ子供でいてほしかった、でも旅立ちは明日。
気が付いたら、内気で長身の娘は、しっかりと「ありがとう」を言える大人になっていた。
それが嬉しくもあり、悲しくもあり。
頬に伝う涙が、店内の照明とマッチして美しいなと思いました。
■結婚式


あら、神前式!
実は見たことがないので、「ほう!」と。
……いや待てよ、ここ島根じゃん。
めっちゃおひざ元じゃん。
個人的に面白かったのがこのシーン。

お酒を薦められた茂が飲んでしまうのですが、その視線の先でわっかりやすいジェスチャーをしているイカルこと絹代お母さん(竹下景子)。
このあとイトツこと修平お父さんが小声で「ダメ」と言うんですが、2人のキャラクター性をもろにあらわしていて面白かったです。
さて新婦父のスピーチ、もとい安来節。
「聞いておかえり安来節」
「めでためでたの若松様よ」
「枝も栄えて葉もしげる」
唄っているお父さんも美しかったのですが、目を奪われたのがこれ。


昨日のお母さんの前の涙、お父さんとの涙(きっと他にもいろいろあっただろうけど)
そういうのが全部入り混じって、大粒の涙がぽろっぽろと。
松下奈緒の涙演技に、思わず「わお」と。
「枝も栄えて葉もしげる」
布美枝の「枝」と茂の「しげる」で、つないでるんですね…
これは泣く。
(テレビのこっち側で泣いた)
■旅立ちの日に
そして迎えた6日目の朝。


「ああ…そろそろ汽車が出るころだな」
「村井布美枝の前途を祝して…万歳~!」
仏壇に手を合わせながら源兵衛さん。
そのころ駅(境港?)では。

「村井茂、布美枝夫婦の前途を祝して…万歳~!」
飯田家では。

お父ちゃん、めっちゃ布美枝のこと大好きじゃん!!(涙
万歳三唱ってどうも戦時中に戦地に向かうときのイメージが強い(朝ドラのアレコレで)んだけど、
この作品途中で太平洋戦争を挟んでいる分もあり、「戦地に行く覚悟で頑張ってこい」という意味なんだろうか。
ああああもう、本編観たい!!


「布美枝~!元気でね!」
「体に気ぃつけんだよ~!」
ミヤコお母さんのお見送りもよかったです。
東京は近くない、なかなか会いに行ける場所ではない。
だからこそ、どうか身体だけは、元気でいてほしい。
そんなお母さんの気持ちなんだろうな…。
時代がさほど離れていないとはいえ、昭和の田舎のよさというものを感じます。
現代モノほど近くはなく、時代物ほど遠くもなく。
祖母の話を聞いているような、ほっとする1時間でした。
続きます~~~。
録画した #ゲゲゲの女房 総集編を観た。前半の嫁入りまでの流れでもらい泣きして、東京での布美枝さんの反応に爆笑、布美枝さんがんばれって思いながら、あっ馬介さん!あっ宮部さん!!いいなあ、深大寺デート。いいなあ、ノスタルジックな昭和。
— ゆずず (@yuzu0905) 2015, 12月 8
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