生まれ変わったら秋風に

西へ。


繰り返すだけだよ。
右、左、右、左、右、左・・・・・・
進んでいく。
立ち止まって振り返って、立ち止まって振り返って・・・
大切なものに気づく。
吸って吐いて、吸って吐いて・・・・・・
息をする。
生きて死んで、生きて死んで・・・
地球は廻ってく。

小１時間弱。やってきました、鷲宮コスモスロード。
満開！！
我ながらグッドタイミング。

桜好きよ。
学校には必ず桜がある。
ドッシリと存在感たっぷりで根を下ろしている。
やってくる新参者に教えている。
新たな組織の掟を教え込んでいる。
示されたレール。
「今日からここを歩んでいくんだよ」
望んだ道であれそうでもない道であれ、続いてる道。
ほら、ボーッとしてていいの。
勧誘してるよ。ちょっと聞いてけば。
どうせ授業の組み方なんかわかんないんでしょ。
部活も覗いてみれば。ほら──。
桜はいつも急かしていた。
春にぼんやりしていることは許されなかった。
何かしなければ、自分から動かなければ。
桜が散る前に、自分の身の振り方を決めなければ。
来年の桜はまた私を急かすんだろうか。
20歳の春。
一体私はどんなレールを見出すんだろうか。


秋桜は急かしはしない。
サワサワと風に揺れていて、虫と一緒に秋の音楽を奏でている。
喧騒の春。
かけぬける夏。
ズブズブと沈み込む長雨。
やがて映え渡るは青い空と白い雲。
夏という祭りが終わり、季節はしばしの休息を迎える。
実りの秋。
私という種に何が実ったかな。
そんな物思いに耽る。

自転車を降りて、道を歩く。
家族連れ。
犬。
カップル。
子供。
自分。
20年前両親から分岐したこの道。
たくさんの道と交差してきた。
わずかに並行する道もあった。
逆方向にＵターンしていった道もあった。
同じ方向を向いている道は何一つなかった。
私と同じ生き方をしている人は誰一人いなかった。
きっとこれからもそうだろう。
そんな物思いに耽る。

サワサワサワサワ。
風がなでていく。
世界をなでていく。
目を閉じれば風になる。
やっぱり生まれ変わったら風になりたい。
自由気ままに日本中、世界中を飛び回るの。
鳥や雲を乗せてさ。
世界を見てまわるんだ。
暖かい風がいいな──
そんな物思いに耽る。