『あさが来た』最終週26週「やらかい力」の長文ネタバレ感想まとめ、その1
フィナーレへ向けて。
その2はこちら。
→『あさが来た』最終週、その2.凸凹夫婦のやらかい力
関連リンク
・『あさが来た』25週 惣兵衛、誇り高き人生
・『あさが来た』24週、みんなの大仕事、みんなの笑顔、みんなの幸せ
・『あさが来た』23週、大きな手のひらに包まれて、時代が変わる
『真田丸』『精霊の守り人』『ちかえもん』『映像の世紀』他、大河、Nスペ、BSプレミアムのまとめ。
・少々真面目で結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ<NHK系>
朝ドラ「あさが来た」「ゲゲゲの女房総集編」「あまちゃん」こちら。
・朝ドラ感想記事のまとめ
『ダメな私に恋してください』『新釣りバカ日誌』など民放ドラマ、映画などなどのまとめ
・テレビっ子の備忘録まとめ。<民放系>
■ぽっくりぽん
「ぽっくりぽん」
出てくるだろうなと思ってた言葉。
でもシャレになんないから、言っちゃいけないだろうなとも思ってた言葉。
新次郎の話す軽快な響き思わず笑ってしまうのと同時に、「いよいよだな」と。
あさと一緒に覚悟を決めさせられる。
■藍之助、養之助
「うれしいわ。いつか手ぇ組んで手広うやろうな!」
藍之助はお商売の面から『おみかんの山王寺屋』を支えていくと。
はつと惣兵衛パートはフィクションだけど、こういう形でよかったなと思う。
山王寺屋のファーストペンギン・惣兵衛が『後世に残したもの』は、大事な大事なおみかんの子どもたち。
ところで、前々から養之助がやたらハマってるなあ、かっちゃんとかぶらんなあ、と思っていたのですが。
その理由はもしかして、このヒゲかなあって。
ジャニーズ枠でなかなか新鮮な気がする、ヒゲ。
ところであさちゃんは、東京の宜ちゃんから届いたお手紙におこ。
どうやらクソリプを飛ばしている学生がいるらしい。
「いっそ目の前で言うてほしいわなぁ」
そんなあさの喜怒哀楽を眺めながら、はつさんも喜怒哀楽を取り戻していく。
それを見守る息子たちの温かい視線もよかったなあ。
■薬の紙袋
新次郎がはつに語るのはあさの話。
「それでいて女子供の武器使うて甘えて楽したらええような所でも決してそないな武器使わへん。真っ直ぐしか進まれへん。」
いつものノロケと見せかけて、『惣兵衛はんもそうだったんじゃないか』っていうメッセージが込められているような気がした。
穏やかに聞いていたはつさんの表情が、それを物語っているような。
そのはつさんの目線の先にあったのは、薬の紙袋。
複合健胃薬。
映った薬袋には複合健胃薬、いわゆる胃薬。
その後ろにいくつか薬が並んでるので、新次郎は他にも鎮痛剤を処方されているのかもしれません。
■見送った人、見送る人
惣兵衛の死から半年がたっていることがわかりました。
「まだなぁ常みたいにいてはる思て『旦那様』て声かけてしもたりしてしまいますのや」
はつはもう見送った人、あさはこれから見送る人。
辛いなあ、この姉妹の対比。
もっともっと時間は掛かるかもしれません。
惣兵衛が2年間失踪しても待ち続けていたはつ。
深い深い絆でつながっていた惣兵衛とはつ。
惣兵衛の死後、大きな喪失感と慟哭に涙を流したはつ。
もしかしたらその寂しさは、はつと惣兵衛があの世で再会するまで続くのかもしれない。
きっとそれまでは「笑うて」生きていくんだろうなと。
それがはつの生き方なのかなと。
それにしても、ドラマの中だけでも、惣兵衛とはつが幸せに描かれてくれてよかったなあと思う。
■病名は明らかにされない
最終週のキャストに医師役で、数々のドラマで医師役を演じてきた渡辺いっけいさん。
このキャスティングもNHKさすがだなと。
新次郎の症状はこれまでも味覚障害、食欲不振、「なんとなくけったいな感じ」としか描かれていません。
あさに連れられて受けた検査。
その結果がよくないものであったと物語る厳しい表情。
このとき、音が消えました。
『マッサン』でエリーの病状を告げられる政春のシーンを思い出します。
そして夕焼けに染まる生け花のカット。
長い時間をかけて作られた朝ドラだと、病名が明らかに告知される場面よりも、こうした演出のほうがしっくりきます。
それに病名を明らかに言わないのは、高齢者や病院で視聴してる方々への配慮でしょう。
あさに顔を向ける直前、大塚医師は何を思いながら新次郎の立てた茶を味わっていたんでしょう。
「力を尽くしてもお金があってもどうにもできないもんがあります。それは決められた命、寿命です」
少なくない数の人を見送ってきて、自身も生死の境目をさまよったあさ。
医師の言葉を必死で受け入れようとする大きな目が辛い。
でもそれは受け入れなければいけないこと。
■死を受け入れる
新次郎は受け入れる人。
自分の覚悟はとっくに出来ている。
あさに看取りを受け入れる覚悟をさせるために病院行ったんだ。
西日の差す、風通しの良い加野屋から、新次郎が今にも飛び立ってしまいそうで。
「あさ、おおきにな」
新次郎はあと何回この言葉を言えるんだろう。
何度も何度も言ってきた「あさ、おおきに」の言葉にも、いつか聞けなくなる日が来ると。
気付いたらあさと同じ視点にいる。
ここで嘘をつくことが出来ず泣いてしまうあさも、その涙を拭う新次郎と。
あさらしく、新次郎らしい。
この凸凹が白岡夫婦なんだ、と。
それにしても、新次郎の老け込み方に思わず息をのむ。
皺やシミ、白髪などメイク技術的なことはもちろんなんだけれども、佇まいっていうのかな。
背中の曲がり方が「いわゆる爺さん」の曲がり方。
そしてこの何かに躓いたのではなく、立ちくらんで足腰もすぐには動かないようなよろめき方。
と、このときに気づいたのは新次郎の洋装は見せないんじゃない、もう見せられないんだ、見られないんだ、と。
幕末から始まっただけあって、最初は五代さん以外みんな和装だったようなものですが。
例を挙げるなら忠政じいちゃん、晩年の正吉さんやよのさん。
腰が曲がろうとも、背骨が歪もうとも、少しやせてしまっても。
「和装ならではの美しさ」は画面に表れていました。
しかし洋装はそうもいかない。
五代さんやあさのように背筋を伸ばし、胸を張るような姿勢でないと「洋装の美しさ」は様にならない。
新次郎の洋装は見せないんじゃない、もう見せられない。
それでも着物を美しく着こなす。
いろんな人が演じた「和装の美しさ」を新次郎が集大成しているのかな。
おかしいな、幕末明治を生き抜いた女傑が大阪経済を立て直していくビジネス成分多めの話だったのに。
気付いたらラブストーリー。
いや……
最初からそうだったか。
そうだったね。
あさはずっと新次郎のことが大好きだったし、新次郎もあさを信じていた。
まだあさから新次郎を奪わないで、まだふたりの時間は続いて。
■写真屋さん
こちらの写真屋さん、心の目で見てみましょう。
だんだん、はるか師匠に見えてきます
はるか師匠の再登場を期待したものの。
いやさすがに物語中ではもう亡くなっているとも思うし。
てかここで師匠出てきたら色々とかっさらてしまいそうな気がするwww
■植木屋さん
あっ、ぐっさん!!
朝ドラ結構出てるぐっさん!!
「とと姉ちゃん」にも出演予定のぐっさん!!
「わてらなぁ、夫婦になってじき40年になりますのやで」
「ほんでなぁ、記念に木ぃでも植えとこか思てな」
新次郎からあさへのプレゼントは記念植樹。
「育ち続ける贈り物」って素敵だし、新次郎らしいなあって。
「木が倒れんとしっかり育つように、このあとな添え竹しますねん」
ぐっさんの言葉。
あさと新次郎、あさとはつを象徴しているようでグッときた。
この人もまた粋な植木職人。
■巾着の中身
「寒いさかいな、外出んのがおっくうなだけいうのにこない心配してもろて。いっそな病気にならなあかんくらいだすわ」
人前では病んだ姿を見せない。
冗談飛ばして安心させる新次郎の粋な優しさ。
けれど外を歩くことはできない。
もう巾着を回せない。
序盤からずっと繰り返されたコミカルな描写、巾着ブンブン。
大げさに言えば「新次郎の象徴」。
その動きが出来なくなることが、新次郎の体力の低下を実感させるとともに、できない姿を見せたくないっていう新次郎の心意気になってるのかな。
■青春との再会
親分きた!!
黒田屋さん、加野屋を乗っ取りにきた!!(違う)
「あの山は今風に言うたらうちの青春だしたんやなあ」
炭坑編好きだったな。
みんながみんな生きてるって感じがして。
「これからの日本はどげんなりますとなろなあ?」
五代くんと大久保さんが話していたことを、宮部さんの口から聞くとは何とも感慨深い。
炭坑に駕籠で降り立った新次郎を、宮部さんたちが思い出しておりますが……
この回、長い間行方不明だった惣兵衛とはつたちが感動の再会を果たしており、ラスト30秒でこのボンボンが乗っかってきたという以下略
■あさの引退
日露戦争……あっそうだ明治の話だった
たまに挟まる池井戸ドラマも好きだったなあ。
今改めて初回からの流れを振り返ると、ラブストーリー、コメディ、重厚な歴史もの、経済ものがうまくバランスとれていたような気がします。
しっかし榮三郎もすっかり威厳たっぷり
中の人が歌って踊れるジャニーズだって忘れそうになる。
「さあ、うるさいおばさんが意見するのはここまでだす。今日限りで商いから手ぇ引かせてもらいます」
あさの引退宣言。
「旦那様のそばにいときたい」、と。
この言葉が出た回に親分たちが登場したのは、炭坑の懐かしさもあるけども。
炭坑生活で離れて暮らして寂しい思いをしていたあのころを思い出させる部分があるのかもわからんな。
「わかりました。加野屋のことはもう何も心配せんとくなはれ」
榮三郎もまた、あさたちと荒波を乗り切ってきた人物の一人。
お兄ちゃん思いの三男坊がしっかり成長した姿が凛々しく見える。
■亀助さんの寂しさ
「新次郎さんも奥さんもいてはらへんようになって、わてこれからどないしたら…」
あさの引退は新次郎に付き添いたいから。
ずっとあさと新次郎のそばで2人を見てきた亀助さんだから、その気持ちはよくわかっているはず。
でも寂しいね、亀助さん。
寂しい。
亀助さんが気持ちを代弁してくれてよかった。
この人がこういう気持ちを持つようになってしまったと、時の流れを痛感する。
■平塚らいてうが来た
クソリプ飛ばしてたという噂の平塚はるさん。
加野屋までやってきました。
「ふんまんやるかたない心持ちで大阪まで参りました」
「いけすかない傲慢おばさん」に引き続き「憤懣やるかたない」。
これは日常生活で使ってみたいぞ。
「平塚明さん。あんさんなんやひとかどのおなごはんになりはるかもしれまへんなあ」
「どうぞ存分に学んでください」
褒め返しっていう必殺技( ゜д゜)
「どこがですの?!あ~腹が立つ。本当、傲慢な女」
「私あの方を超える新しい女になってみせます」
このタイミングで大島優子さん演じる平塚らいてうの投入は賛否両論あったものの。
これじゃただの青臭い女学生だ、と感じなくもないものの。
この作品における平塚サンダーバードとあさの関係性はこれ、ということだと思っております。
官有物払い下げ事件みたいに、「いろんなとらえ方があるけど、これ」っていう。
いやクソ生意気ながら、「あさ先生万歳!あさ先生かこいい!」ではない新しい女性。
対等のライバルとして目標にしたいっていうグイグイくる力を感じました。
先週の舌打ちといい「ただもんじゃねえな感」。
先達への感謝と敬意は大切であることに間違いはないんだけど。
感謝だけではなく「それを越えていく」という気概。
それがたとえ青臭い形で描かれたとしても、先達は「それは楽しみだなあ」と笑いながら観ているというように見えました。
実際の平塚さんもそうとう口が悪かったという記録もあるから、
「なにこの青臭いのは」っていう女性の登場が、いよいよ『女傑』としてのあさに引導を渡したのかなとも。
あくまでこのドラマの中の、『あさや成澤たちの奮闘が明治大正昭和に残したもの』としての平塚らいてう。
ていうかヴォーリズもそうだけど、平塚らいてうまで触れたらマジで尺も予算も足りない。
そんな平塚サンダーバードにお千代が声をかける。
「まあ傲慢ゆうか大ざっぱいうか…けどそないな人が道なき道を切り開いてくれたからこそ、
今こうやって女も自由にものが言えてるのかもわからしまへんな」
大ざっぱ、それだwww
「江戸の昔なんて知らんこっちゃですわ」
あさと喧嘩ばかりしていた頃、「徳川様ってどなた様?」と言っていたお千代と。
平塚サンダーバードはどこか通じる部分がありそう。
■お父ちゃん以外に好かれても
「お父ちゃん以外の誰に好かれてもしょうがあれへん」
五代くん、死してなお不憫www
■後世に残されたもの。
「うちはみんなを信用してますさかいな。これからもみんなで仲よう気張ってな」
思い出すのは七代目の突然の引退宣言。(9週の話)
下の者たちが十分に育っているから安心して任すことができるって。
相談は受けるけれども、判断するのは若い者たち。
あさの中の正吉さんがいる。そんなことを思った。
「しっかり加野屋ののれん、守ってな」
正吉さんだけじゃない。
忠興パパ、もしかしたら菊さんもいるのかもしれない。
死にざまがあっさり目に描かれても親世代の心意気は、後に残されていくんだなあって。
「胸張って堂々としてはったらよろし」
千代の中によのさんとはつさん、惣兵衛、梨江さんがいる。
みんな、後世にきちんと生きている。
■美和さんへえさん
ところで、ずっと気になる動きをチラチラ見せていたこの2人。
「もういい加減美和言うとくれやす」
「それ取ってくれやす」
美和さんとへえさん。
「さんづけで呼ばないで」
「みんなと同じ返答のしかたはしないで」
と。
突然攻めてきたwwww
この2人、いつのまに……
へえさんから「へえ」が奪われたらどうすればいいのか、というへえさん(何これ)
「『何やお前』言わはったらよろしいねん」
「あ…何やお前」
「へぇほな行きましょ。お前様」
うわああ魔性!魔性の女だ!!
ここまでいろんな女性出てきて、美和さん職業婦人としての矜持を持って、ファーストペンギンとして晴花亭で歴史を見守りながら、ここにきて美魔女。
お、おう……
まあ美和さんが幸せならいいってことよ。
へぇさん、うしろうしろー!!
■重なる描写
へえさんを覗き見してる新次郎。
幼いあさがはしゃぐ姿を覗く若い頃の新次郎にかけてるんだろうな。
「なんやちょっと遊びたいなぁ」
パチパチはんを贈った時「思う存分遊んで」と願いを込めたこととかけてるのかな。
もうあの頃とは違う。
あさも新次郎も、時間が経ちすぎた。
■雁助さんも来た
雁助さんのこんな冗談が懐かしいなあ。
陰で人の心配ばかりしてきた新次郎だから、心配させてくれって。
「…てあんたらふたり時々つるんではりますのやな」
ちょっとうらやましそうな新次郎。
気持ちが完全に老いたわけではなかった、よかった。
雁助さんはもう隠居したとのこと。
亀助さんは…というと。
「わてな今月限りで辞めさしてもらお思てますのや」
↓
「新次郎さんも奥さんも辞めてしまいはったらわて…」
↓
「亀ちゃん!辞めないで!」
↓
「もう~しょうがあらしまへんなあ」
隠居宣言、からの慰留、からの復帰の流れが早いwww
雁助さんが「引き留めてほしかったんか」とつっこんでますが、それもまた亀助さんらしいというか。
■時が解決したこと
雁助さんが、加野屋を去る直前の17週。
まだ幼い千代に残した言葉。
「お母様の背中よう見ときなはれや」
千代も成長し、妻となり母親となりその言葉を思い出す。
時だけが解決できること。
時が経ったからこそ解決したこと。
てかもうこのロングパスの伏線回収。
長い期間見てきた身としてはご褒美でございます。
■時が変えたこと
「うめの生きているうちはどない世の中が変わろうとも、おあさ様と新次郎様の楽しい夫婦だけはずっと変われへん思てましたさかいな」
年取った雁助さんとの再会で改めて感じる、うめさんの寂しさ。
時が変えてしまうもの。
「こないしてお互い生きてるかどうかくらい時々文でも書いて確かめ合おうな」
雁助さんとうめのこの距離感が素敵です。
文を出し合いお互いが生きていることを知る。
普段は何も思うことはなくても、その文字を見るだけで相手を思う気持ちになれる。
生きているということに希望を持てる。
正直なところ「雁助さんうめさん引っ張るなあ!公式大好きだな」と思っていましたが。
シェッハン&ハグのエンド(23週)に、さらにこの結末にたどり着くというのが、『熟年たちのイノセントな恋』の成就としてとてもよかった。
■ワカメの4番
成澤先生のツギハギスーツ、一周回ってオシャレだね!
あのふやけたワカメの4番が、こんなに立派になった。
あさが刺されたとき、少しわだかまりがあったけど。
でもこのふたりの和解をきちんと描いてくれたのありがたいなあ。
シェッハンにはしゃぐ亀助さん。
亀助さんはひとりじゃない。
寂しがらないで。みんないるから。
まさかワカメのトンチキが、そんなことを感じさせてくれるなんてな。
■本物の勇者
「新次郎さんもきっとそれを誇りに思ってるはずよ」
千代や新次郎に辛い思いをさせながらも、あさが道を切り拓いた、と綾子夫人。
喜ぶでもなく涙こらえるでもなく、「複雑な表情」をしているのがまさにあさの本心なのかなと。
「あなたこそ、戦場における本物の勇者です」
幕末から明治。変わっていく社会という戦場で、時代の荒波を乗り切る勇者。
最初に海に飛び込むファーストペンギン。
あさだけじゃなくそんな人物を描いてきたこの作品が好きだなって。
■続きは…
その2はこちら。
→『あさが来た』最終週、その2.凸凹夫婦のやらかい力。
フィナーレへ向けて。
その2はこちら。
→『あさが来た』最終週、その2.凸凹夫婦のやらかい力
関連リンク
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・『あさが来た』24週、みんなの大仕事、みんなの笑顔、みんなの幸せ
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■ぽっくりぽん
「ぽっくりぽん」
出てくるだろうなと思ってた言葉。
でもシャレになんないから、言っちゃいけないだろうなとも思ってた言葉。
新次郎の話す軽快な響き思わず笑ってしまうのと同時に、「いよいよだな」と。
あさと一緒に覚悟を決めさせられる。
■藍之助、養之助
「うれしいわ。いつか手ぇ組んで手広うやろうな!」
藍之助はお商売の面から『おみかんの山王寺屋』を支えていくと。
はつと惣兵衛パートはフィクションだけど、こういう形でよかったなと思う。
山王寺屋のファーストペンギン・惣兵衛が『後世に残したもの』は、大事な大事なおみかんの子どもたち。
ところで、前々から養之助がやたらハマってるなあ、かっちゃんとかぶらんなあ、と思っていたのですが。
その理由はもしかして、このヒゲかなあって。
ジャニーズ枠でなかなか新鮮な気がする、ヒゲ。
ところであさちゃんは、東京の宜ちゃんから届いたお手紙におこ。
どうやらクソリプを飛ばしている学生がいるらしい。
「いっそ目の前で言うてほしいわなぁ」
そんなあさの喜怒哀楽を眺めながら、はつさんも喜怒哀楽を取り戻していく。
それを見守る息子たちの温かい視線もよかったなあ。
■薬の紙袋
新次郎がはつに語るのはあさの話。
「それでいて女子供の武器使うて甘えて楽したらええような所でも決してそないな武器使わへん。真っ直ぐしか進まれへん。」
いつものノロケと見せかけて、『惣兵衛はんもそうだったんじゃないか』っていうメッセージが込められているような気がした。
穏やかに聞いていたはつさんの表情が、それを物語っているような。
そのはつさんの目線の先にあったのは、薬の紙袋。
複合健胃薬。
映った薬袋には複合健胃薬、いわゆる胃薬。
その後ろにいくつか薬が並んでるので、新次郎は他にも鎮痛剤を処方されているのかもしれません。
■見送った人、見送る人
惣兵衛の死から半年がたっていることがわかりました。
「まだなぁ常みたいにいてはる思て『旦那様』て声かけてしもたりしてしまいますのや」
はつはもう見送った人、あさはこれから見送る人。
辛いなあ、この姉妹の対比。
もっともっと時間は掛かるかもしれません。
惣兵衛が2年間失踪しても待ち続けていたはつ。
深い深い絆でつながっていた惣兵衛とはつ。
惣兵衛の死後、大きな喪失感と慟哭に涙を流したはつ。
もしかしたらその寂しさは、はつと惣兵衛があの世で再会するまで続くのかもしれない。
きっとそれまでは「笑うて」生きていくんだろうなと。
それがはつの生き方なのかなと。
それにしても、ドラマの中だけでも、惣兵衛とはつが幸せに描かれてくれてよかったなあと思う。
■病名は明らかにされない
最終週のキャストに医師役で、数々のドラマで医師役を演じてきた渡辺いっけいさん。
このキャスティングもNHKさすがだなと。
新次郎の症状はこれまでも味覚障害、食欲不振、「なんとなくけったいな感じ」としか描かれていません。
あさに連れられて受けた検査。
その結果がよくないものであったと物語る厳しい表情。
このとき、音が消えました。
『マッサン』でエリーの病状を告げられる政春のシーンを思い出します。
そして夕焼けに染まる生け花のカット。
長い時間をかけて作られた朝ドラだと、病名が明らかに告知される場面よりも、こうした演出のほうがしっくりきます。
それに病名を明らかに言わないのは、高齢者や病院で視聴してる方々への配慮でしょう。
あさに顔を向ける直前、大塚医師は何を思いながら新次郎の立てた茶を味わっていたんでしょう。
「力を尽くしてもお金があってもどうにもできないもんがあります。それは決められた命、寿命です」
少なくない数の人を見送ってきて、自身も生死の境目をさまよったあさ。
医師の言葉を必死で受け入れようとする大きな目が辛い。
でもそれは受け入れなければいけないこと。
■死を受け入れる
新次郎は受け入れる人。
自分の覚悟はとっくに出来ている。
あさに看取りを受け入れる覚悟をさせるために病院行ったんだ。
西日の差す、風通しの良い加野屋から、新次郎が今にも飛び立ってしまいそうで。
「あさ、おおきにな」
新次郎はあと何回この言葉を言えるんだろう。
何度も何度も言ってきた「あさ、おおきに」の言葉にも、いつか聞けなくなる日が来ると。
気付いたらあさと同じ視点にいる。
ここで嘘をつくことが出来ず泣いてしまうあさも、その涙を拭う新次郎と。
あさらしく、新次郎らしい。
この凸凹が白岡夫婦なんだ、と。
それにしても、新次郎の老け込み方に思わず息をのむ。
皺やシミ、白髪などメイク技術的なことはもちろんなんだけれども、佇まいっていうのかな。
背中の曲がり方が「いわゆる爺さん」の曲がり方。
そしてこの何かに躓いたのではなく、立ちくらんで足腰もすぐには動かないようなよろめき方。
と、このときに気づいたのは新次郎の洋装は見せないんじゃない、もう見せられないんだ、見られないんだ、と。
幕末から始まっただけあって、最初は五代さん以外みんな和装だったようなものですが。
例を挙げるなら忠政じいちゃん、晩年の正吉さんやよのさん。
腰が曲がろうとも、背骨が歪もうとも、少しやせてしまっても。
「和装ならではの美しさ」は画面に表れていました。
しかし洋装はそうもいかない。
五代さんやあさのように背筋を伸ばし、胸を張るような姿勢でないと「洋装の美しさ」は様にならない。
新次郎の洋装は見せないんじゃない、もう見せられない。
それでも着物を美しく着こなす。
いろんな人が演じた「和装の美しさ」を新次郎が集大成しているのかな。
おかしいな、幕末明治を生き抜いた女傑が大阪経済を立て直していくビジネス成分多めの話だったのに。
気付いたらラブストーリー。
いや……
最初からそうだったか。
そうだったね。
あさはずっと新次郎のことが大好きだったし、新次郎もあさを信じていた。
まだあさから新次郎を奪わないで、まだふたりの時間は続いて。
■写真屋さん
こちらの写真屋さん、心の目で見てみましょう。
だんだん、はるか師匠に見えてきます
はるか師匠の再登場を期待したものの。
いやさすがに物語中ではもう亡くなっているとも思うし。
てかここで師匠出てきたら色々とかっさらてしまいそうな気がするwww
■植木屋さん
あっ、ぐっさん!!
朝ドラ結構出てるぐっさん!!
「とと姉ちゃん」にも出演予定のぐっさん!!
「わてらなぁ、夫婦になってじき40年になりますのやで」
「ほんでなぁ、記念に木ぃでも植えとこか思てな」
新次郎からあさへのプレゼントは記念植樹。
「育ち続ける贈り物」って素敵だし、新次郎らしいなあって。
「木が倒れんとしっかり育つように、このあとな添え竹しますねん」
ぐっさんの言葉。
あさと新次郎、あさとはつを象徴しているようでグッときた。
この人もまた粋な植木職人。
■巾着の中身
「寒いさかいな、外出んのがおっくうなだけいうのにこない心配してもろて。いっそな病気にならなあかんくらいだすわ」
人前では病んだ姿を見せない。
冗談飛ばして安心させる新次郎の粋な優しさ。
けれど外を歩くことはできない。
もう巾着を回せない。
序盤からずっと繰り返されたコミカルな描写、巾着ブンブン。
大げさに言えば「新次郎の象徴」。
その動きが出来なくなることが、新次郎の体力の低下を実感させるとともに、できない姿を見せたくないっていう新次郎の心意気になってるのかな。
■青春との再会
親分きた!!
黒田屋さん、加野屋を乗っ取りにきた!!(違う)
「あの山は今風に言うたらうちの青春だしたんやなあ」
炭坑編好きだったな。
みんながみんな生きてるって感じがして。
「これからの日本はどげんなりますとなろなあ?」
五代くんと大久保さんが話していたことを、宮部さんの口から聞くとは何とも感慨深い。
炭坑に駕籠で降り立った新次郎を、宮部さんたちが思い出しておりますが……
この回、長い間行方不明だった惣兵衛とはつたちが感動の再会を果たしており、ラスト30秒でこのボンボンが乗っかってきたという以下略
■あさの引退
日露戦争……あっそうだ明治の話だった
たまに挟まる池井戸ドラマも好きだったなあ。
今改めて初回からの流れを振り返ると、ラブストーリー、コメディ、重厚な歴史もの、経済ものがうまくバランスとれていたような気がします。
しっかし榮三郎もすっかり威厳たっぷり
中の人が歌って踊れるジャニーズだって忘れそうになる。
「さあ、うるさいおばさんが意見するのはここまでだす。今日限りで商いから手ぇ引かせてもらいます」
あさの引退宣言。
「旦那様のそばにいときたい」、と。
この言葉が出た回に親分たちが登場したのは、炭坑の懐かしさもあるけども。
炭坑生活で離れて暮らして寂しい思いをしていたあのころを思い出させる部分があるのかもわからんな。
「わかりました。加野屋のことはもう何も心配せんとくなはれ」
榮三郎もまた、あさたちと荒波を乗り切ってきた人物の一人。
お兄ちゃん思いの三男坊がしっかり成長した姿が凛々しく見える。
■亀助さんの寂しさ
「新次郎さんも奥さんもいてはらへんようになって、わてこれからどないしたら…」
あさの引退は新次郎に付き添いたいから。
ずっとあさと新次郎のそばで2人を見てきた亀助さんだから、その気持ちはよくわかっているはず。
でも寂しいね、亀助さん。
寂しい。
亀助さんが気持ちを代弁してくれてよかった。
この人がこういう気持ちを持つようになってしまったと、時の流れを痛感する。
■平塚らいてうが来た
クソリプ飛ばしてたという噂の平塚はるさん。
加野屋までやってきました。
「ふんまんやるかたない心持ちで大阪まで参りました」
「いけすかない傲慢おばさん」に引き続き「憤懣やるかたない」。
これは日常生活で使ってみたいぞ。
「平塚明さん。あんさんなんやひとかどのおなごはんになりはるかもしれまへんなあ」
「どうぞ存分に学んでください」
褒め返しっていう必殺技( ゜д゜)
「どこがですの?!あ~腹が立つ。本当、傲慢な女」
「私あの方を超える新しい女になってみせます」
このタイミングで大島優子さん演じる平塚らいてうの投入は賛否両論あったものの。
これじゃただの青臭い女学生だ、と感じなくもないものの。
この作品における平塚サンダーバードとあさの関係性はこれ、ということだと思っております。
官有物払い下げ事件みたいに、「いろんなとらえ方があるけど、これ」っていう。
いやクソ生意気ながら、「あさ先生万歳!あさ先生かこいい!」ではない新しい女性。
対等のライバルとして目標にしたいっていうグイグイくる力を感じました。
先週の舌打ちといい「ただもんじゃねえな感」。
先達への感謝と敬意は大切であることに間違いはないんだけど。
感謝だけではなく「それを越えていく」という気概。
それがたとえ青臭い形で描かれたとしても、先達は「それは楽しみだなあ」と笑いながら観ているというように見えました。
実際の平塚さんもそうとう口が悪かったという記録もあるから、
「なにこの青臭いのは」っていう女性の登場が、いよいよ『女傑』としてのあさに引導を渡したのかなとも。
あくまでこのドラマの中の、『あさや成澤たちの奮闘が明治大正昭和に残したもの』としての平塚らいてう。
ていうかヴォーリズもそうだけど、平塚らいてうまで触れたらマジで尺も予算も足りない。
そんな平塚サンダーバードにお千代が声をかける。
「まあ傲慢ゆうか大ざっぱいうか…けどそないな人が道なき道を切り開いてくれたからこそ、
今こうやって女も自由にものが言えてるのかもわからしまへんな」
大ざっぱ、それだwww
「江戸の昔なんて知らんこっちゃですわ」
あさと喧嘩ばかりしていた頃、「徳川様ってどなた様?」と言っていたお千代と。
平塚サンダーバードはどこか通じる部分がありそう。
■お父ちゃん以外に好かれても
「お父ちゃん以外の誰に好かれてもしょうがあれへん」
五代くん、死してなお不憫www
■後世に残されたもの。
「うちはみんなを信用してますさかいな。これからもみんなで仲よう気張ってな」
思い出すのは七代目の突然の引退宣言。(9週の話)
下の者たちが十分に育っているから安心して任すことができるって。
相談は受けるけれども、判断するのは若い者たち。
あさの中の正吉さんがいる。そんなことを思った。
「しっかり加野屋ののれん、守ってな」
正吉さんだけじゃない。
忠興パパ、もしかしたら菊さんもいるのかもしれない。
死にざまがあっさり目に描かれても親世代の心意気は、後に残されていくんだなあって。
「胸張って堂々としてはったらよろし」
千代の中によのさんとはつさん、惣兵衛、梨江さんがいる。
みんな、後世にきちんと生きている。
■美和さんへえさん
ところで、ずっと気になる動きをチラチラ見せていたこの2人。
「もういい加減美和言うとくれやす」
「それ取ってくれやす」
美和さんとへえさん。
「さんづけで呼ばないで」
「みんなと同じ返答のしかたはしないで」
と。
突然攻めてきたwwww
この2人、いつのまに……
へえさんから「へえ」が奪われたらどうすればいいのか、というへえさん(何これ)
「『何やお前』言わはったらよろしいねん」
「あ…何やお前」
「へぇほな行きましょ。お前様」
うわああ魔性!魔性の女だ!!
ここまでいろんな女性出てきて、美和さん職業婦人としての矜持を持って、ファーストペンギンとして晴花亭で歴史を見守りながら、ここにきて美魔女。
お、おう……
まあ美和さんが幸せならいいってことよ。
へぇさん、うしろうしろー!!
■重なる描写
へえさんを覗き見してる新次郎。
幼いあさがはしゃぐ姿を覗く若い頃の新次郎にかけてるんだろうな。
「なんやちょっと遊びたいなぁ」
パチパチはんを贈った時「思う存分遊んで」と願いを込めたこととかけてるのかな。
もうあの頃とは違う。
あさも新次郎も、時間が経ちすぎた。
■雁助さんも来た
雁助さんのこんな冗談が懐かしいなあ。
陰で人の心配ばかりしてきた新次郎だから、心配させてくれって。
「…てあんたらふたり時々つるんではりますのやな」
ちょっとうらやましそうな新次郎。
気持ちが完全に老いたわけではなかった、よかった。
雁助さんはもう隠居したとのこと。
亀助さんは…というと。
「わてな今月限りで辞めさしてもらお思てますのや」
↓
「新次郎さんも奥さんも辞めてしまいはったらわて…」
↓
「亀ちゃん!辞めないで!」
↓
「もう~しょうがあらしまへんなあ」
隠居宣言、からの慰留、からの復帰の流れが早いwww
雁助さんが「引き留めてほしかったんか」とつっこんでますが、それもまた亀助さんらしいというか。
■時が解決したこと
雁助さんが、加野屋を去る直前の17週。
まだ幼い千代に残した言葉。
「お母様の背中よう見ときなはれや」
千代も成長し、妻となり母親となりその言葉を思い出す。
時だけが解決できること。
時が経ったからこそ解決したこと。
てかもうこのロングパスの伏線回収。
長い期間見てきた身としてはご褒美でございます。
■時が変えたこと
「うめの生きているうちはどない世の中が変わろうとも、おあさ様と新次郎様の楽しい夫婦だけはずっと変われへん思てましたさかいな」
年取った雁助さんとの再会で改めて感じる、うめさんの寂しさ。
時が変えてしまうもの。
「こないしてお互い生きてるかどうかくらい時々文でも書いて確かめ合おうな」
雁助さんとうめのこの距離感が素敵です。
文を出し合いお互いが生きていることを知る。
普段は何も思うことはなくても、その文字を見るだけで相手を思う気持ちになれる。
生きているということに希望を持てる。
正直なところ「雁助さんうめさん引っ張るなあ!公式大好きだな」と思っていましたが。
シェッハン&ハグのエンド(23週)に、さらにこの結末にたどり着くというのが、『熟年たちのイノセントな恋』の成就としてとてもよかった。
■ワカメの4番
成澤先生のツギハギスーツ、一周回ってオシャレだね!
あのふやけたワカメの4番が、こんなに立派になった。
あさが刺されたとき、少しわだかまりがあったけど。
でもこのふたりの和解をきちんと描いてくれたのありがたいなあ。
シェッハンにはしゃぐ亀助さん。
亀助さんはひとりじゃない。
寂しがらないで。みんないるから。
まさかワカメのトンチキが、そんなことを感じさせてくれるなんてな。
■本物の勇者
「新次郎さんもきっとそれを誇りに思ってるはずよ」
千代や新次郎に辛い思いをさせながらも、あさが道を切り拓いた、と綾子夫人。
喜ぶでもなく涙こらえるでもなく、「複雑な表情」をしているのがまさにあさの本心なのかなと。
「あなたこそ、戦場における本物の勇者です」
幕末から明治。変わっていく社会という戦場で、時代の荒波を乗り切る勇者。
最初に海に飛び込むファーストペンギン。
あさだけじゃなくそんな人物を描いてきたこの作品が好きだなって。
■続きは…
その2はこちら。
→『あさが来た』最終週、その2.凸凹夫婦のやらかい力。
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