最終章 《夏の終わり》
「行ってしまった……」
「あのお方は行ってしまったわ。
ワタシを待たずに……」
ゆず子はただ座り続けるしかなかった。
「いいえ…あのお方はきっとまた戻ってくる。
来年の夏もきっと…。」
そう思うと、また力がわいてくるのを感じるのだった。
来年。
そう、来年も必ずカレはやってくるのだ。
完
蝉です。
昼となく夜となく、ベランダにセミがやってきます。
「ジジジ!」という羽音が聞こえるやいなや、ゆずはダッシュでやってきます。
おトイレの直後でも。
砂もかけずに。
砂かけよりもセミ!なゆずなのです。