真昼の月

創作?現実? ちょっとHな虚実不明のお話です。
女の子の本音・・・覗いてみませんか?

運命の微笑・第二章

2005-06-10 13:37:13 | オリジナル小説
西澤は年が明け、正月休みが終わると早々に、川村直子の副社長就任と、自分との婚約を皆に告げた。
最初こそ皆驚き、特に女子社員等は蜂の巣をつついたように嬌声を上げ、大騒ぎをしていたが、川村の副社長就任は、実力・実績共に納得のいくものであったし、先進的な経営を進めている西澤が行う人事としては、さほどの意外性は無かった。
皆が意外だったのは、婚約の方である。
西澤と川村が共に肩を並べて仕事をするのは見慣れた光景だが、それはあくまでも仕事上の関係であり、まさか二人の仲が男女の関係に進展しようとは、誰も予想だにしていなかったのだ。
それ程にこの組み合わせは意外な組み合わせであった。
現在は落ち着いたとはいえ、昔は散々遊び人としてならし、今でも女性の扱いは手馴れたもので、スマートでダンディーなイメージの西澤は、さぞかし派手な女性か、それとも取引先の令嬢とでも縁組するものと思われていたし、川村は川村で、才媛で仕事も出来、実直な川村は、誰の誘いも受けなかった事もあり、独身主義者か、それとも学生時代からの恋人でもいて、私生活を明かさないだけなのではないかというのが皆の見方であったからだ。
だが、こうして二人が婚約したとなると、あの二人の”あくまでビジネス”という態度は二人の関係を隠すためのもので、川村がどんな男にもなびかなかったのは、こういう事だったのかと納得がいった。
実際、”派手な西澤”、”地味な川村”という対比さえ、正式に結婚するとなれば非常に良い組み合わせであったし、現在の西澤はイメージこそ派手であったが、実際には以前の派手さが嘘のように、すっかり落ち着いていて、それさえも川村の良い影響を受けて”夫を支える妻、誠実な夫”という理想的とも言える組み合わせの夫婦になるのではないかと思わせたし、諸々の憶測や思い込みを除けば、二人はなかなか似合いでもあった。
何より二人でいる事が極自然である。職場という構えはあるが、二人は極自然に接し、共に仕事をし、長時間を共に過ごしても全く自然体で、つまり一緒にいて疲れない相手同士なのだ。
一時の火遊びならともかく、生涯の伴侶、しかも仕事上でもパートナーとしてやっていくのであれば、これは非常に重要な事である。
家庭でも職場でも顔を付き合わせて過ごす事になるのだ。一緒にいて疲れないというのは、簡単なようで難しい。

ともかく散々騒ぎ、あれこれと二人がこうなった経緯をあーでも無い、こうでも無いと、ひとしきり噂話に花を咲かせた結果、結局二人は似合いのカップルだという事になり、祝福しようという事になったようだ。
祝福されたのは、何も社内に限らなかった。
社外には特に川村びいきの人間が多かったのだが、相手が西澤と聞いて、”それなら西澤君とは安心して取引していけるな。こんなに有能な妻君がしっかり縄をつけてくれるんだからな”というのが大方の反応であった。
中には「西澤君よりも、うちの息子との話を考え直してみんかね? 年も西澤君より若いし、将来性もあるぞ」などと未練たらたらの者もいないではなかったが。

その程度の騒ぎは二人とも予想していたが、予想外の事もあった。
二人は多忙である事もあり、あまり派手派手しい式や、ましてや新婚旅行等は先に延ばそうと考えていたのだが、周囲の猛反対にあったのだ。
それは多分に川村の人徳によるものであったが、二人だけで挙げるはずだった挙式には社内・社外の多くの者が参加を希望し譲らなかった。
披露宴もと言い募る川村シンパの社長・会長連には、なんとか簡単な立食パーティーのみで勘弁して貰い、長々とした祝辞や、ここぞとばかりに披露されかねない長唄や民謡から逃れるため、挨拶は二人からのみで、無礼講の形式ばらないものにした。
身寄りの無い二人である。二人だけでの挙式であれば、お互い同士が世界の中心であったはずだが、こうして人に囲まれての挙式やパーティーとなると、主役はやはり花嫁だ。
新郎である西澤を押し退けかねない勢いで、川村、いや西澤直子に祝いの言葉を言いに来たり、「今なら間に合う、考え直せ」と、酒に酔って言い募る者などで、なかなか二人一緒に過ごすというわけにもいかなかった。
しかし隣に寄り添うのもだが、遠くから純白のドレス姿の直子に見惚れるのもなかなか幸せな時間であった。
やっと二人きりになれたのは、皆に強行に勧められ、一泊だけという条件で不承不承行く事にした新婚旅行に向かう車の中であった。

思えばあの突然の接吻から、あっという間に婚約、挙式と、慌しい日々であり、確かに婚姻届にサインをしたのだが、未だ直子は実感が湧かなかった。
実際あれからまだ2ヶ月程しか時間は経っていなかったのだ。
未だに二人きりの時にも西澤を”社長”と呼んでしまい、そのたびに苦笑されている程である。
だが直子の左の薬指には、確かに結婚指輪がはめられ、西澤の指にも揃いの指輪が光っている。

2 コメント

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早めのアップ・・・ (arfa)
2005-06-10 18:41:38
ありがとうございました。

やはり お体は回復傾向にありそうでなによりです。
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お陰さまで(^^) (yurika)
2005-06-14 19:55:33
はい、おかげさまで順調に回復しております。

早く退院したーい! 心置きなく夜更かししたーい(笑)
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