最初は小さなルビーのネックレスだった。
そこから始まって、エメラルドのリング、ダイヤのピアス、サファイアのペンダント・・・どんどんn際限無く、彼女のコレクションは増えていった。
色褪せる事なく輝く宝石を見ていると、それだけで彼女の心は安らぎ満足するのだった。
そう、今の彼女はジュエリーを買うために働いていると言っても過言では無い。
風俗という、肉体的にも精神的にもハードな世界に身を置きながら、日々男達の欲望に応え、得た対価を惜し気も無く宝石達に注ぎ込む。そんな生活をもう2年もつづけていた。
彼女がそもそも風俗の世界に足を踏み入れたのは、付き合っていた恋人のためだった。
保険の切れた自動車で人身事故を起こし、多額の借金を背負った恋人。
ただ泣き言を言うしか脳の無い情けない男だったが、情けないからこそ、彼女は彼を愛していた。
自分にその弱さを露呈する姿を、愛情故と錯覚してしまったのだ。
最初は・・・恋人には秘密の仕事だった。
本屋で高額収入の求人誌を買い、そこにある風俗店に半ば混乱したまま連絡をし、そしてさしたる心の準備も無いままに仕事を始めてしまった。
恋人にその事を話すつもりは無かった。
だが、そんな事はすぐにバレてしまう。
帰宅時間の遅くなった彼女を怪しんだ恋人が、密かに後を尾けたのだ。
バレた当初は酷く怒られ、頬をはたかれ、泣かれもした。
しかし彼は卑怯でズルい男であり、所詮金の魔力には適いはしなかった。
いや、あらがう気があったのかさえ怪しい。
次第に彼女の金をアテにするようになり、金遣いも荒くなり、いつの間にか仕事も辞め、揚句の果てには別の女に貢ぐまでに成り下がっていったのだ。
別れは突然で、唾棄すべき結末だった。
事実を知った時、誤解しようの無い現場を目の当たりにして、彼女は崩れ落ちた。。。
半裸の見苦しい姿のままで苦しい言い訳を繰り返す男、その横で開き直る女 そんな二人を前に言葉も出ない彼女
現場を目撃されながら狼狽し、見苦しい言い訳を繰り返し、果ては逆切れする男を前に、彼女の中の何かが崩れた。
そう、崩れたのは二人の関係だけでは無かった。
愚かしくもまだ自分に付き纏おうとする男を醜いと思った。
いっそ開き直る女の姿の方が心地良かった。
自分でも驚くほど冷静に、彼女は二人を部屋から追い出すと、男に別れを突きつけた。
そして誓った。 もう恋なんてしないと───
そんな自分を月並みだと思いながらも、彼女はその後本当に恋をしなかった。 いや、恋ができない女になっていた。
凍えた心を抱えたまま、彼女は仕事をし続けた。
そんな必要など無くなったのだが、仕事を辞める気にはならなかった。
ひとつには考える時間が欲しく無かったからというのもある。そして自虐的な気持ちも・・・
汚れてしまった自分。裏切った恋人。
それならとことん汚れきってしまおう。
使い道の無い金は、どんどん貯まる一方だった。
そして金が貯まれば貯まる程に、彼女の心を虚無の風が吹き抜けていくのだった。
金なんて欲しく無かった。
自分に金を払ってまで会いに来る客がいる事に、なけなしの自分の存在意義を見出しているのに、矛盾した感情。
金を払ってまで会いに来る客。金を与えても裏切った恋人。
彼女には”金”という物が、これ以上無い汚れたものに感じられた。
「ぱぁーっと使ってすまおうか」ふと、そんな考えが浮かんだ。
汚い金を持っていたく無かった。
しかし使おうというものの、その方法が分からなかった。
不動産・・・には金額が足りない。
ホストクラブ・・・楽しいとは思えなかった。
美味しい料理、旅行・・・どちらも一人じゃつまらない。
そんな事を考えながら、店への道を歩いていると、ふとロードサイドにある宝飾店のショーウインドーに目が留まった。
鮮やかな赤い石のネックレス。
それは彼女の誕生石だった。
恋人が、いつか彼女の指にはめてくれると約束していた石。忌まわしい赤い色。
特に気に入ったわけでも無いのに、どうしてもそのネックレスが欲しくなった。
そのまま店内に入ると、今の彼女にとってははした金程度のそのネックレスを買い求め、身に付けもせずにバッグにしまう。
仕事がはね、帰宅すると、早速バッグからネックレスを取り出し、鏡の前で胸にかざして見る。
小さな赤い石は、汚れなく、そして今完全に彼女だけの物だ。色褪せもしなければ裏切りもしはしない。
不思議な安堵感と満足感に満たされ、その夜彼女は久々に幸せな眠りに就いた。
そしてその日から、彼女の宝石狂いが始まったのだ。
金は稼ぐ先から新しい宝石へと姿を変えていく。
身に纏うでもなく、自慢するでも無い。かといって資産と考えているわけでも無かった。
ただ、それはそこにありさえすれば良かったのだ。
そこにあるという、その事だけで、彼女は満たされ、幸福だった。
宝石達に囲まれ眠るのが、彼女の日課であり、至福の時間なのだ。
彼女は今日も男達を楽しませる。
その身を汚し、そして彼女の愛する汚れなき宝石達と共に眠るのだ。
そこから始まって、エメラルドのリング、ダイヤのピアス、サファイアのペンダント・・・どんどんn際限無く、彼女のコレクションは増えていった。
色褪せる事なく輝く宝石を見ていると、それだけで彼女の心は安らぎ満足するのだった。
そう、今の彼女はジュエリーを買うために働いていると言っても過言では無い。
風俗という、肉体的にも精神的にもハードな世界に身を置きながら、日々男達の欲望に応え、得た対価を惜し気も無く宝石達に注ぎ込む。そんな生活をもう2年もつづけていた。
彼女がそもそも風俗の世界に足を踏み入れたのは、付き合っていた恋人のためだった。
保険の切れた自動車で人身事故を起こし、多額の借金を背負った恋人。
ただ泣き言を言うしか脳の無い情けない男だったが、情けないからこそ、彼女は彼を愛していた。
自分にその弱さを露呈する姿を、愛情故と錯覚してしまったのだ。
最初は・・・恋人には秘密の仕事だった。
本屋で高額収入の求人誌を買い、そこにある風俗店に半ば混乱したまま連絡をし、そしてさしたる心の準備も無いままに仕事を始めてしまった。
恋人にその事を話すつもりは無かった。
だが、そんな事はすぐにバレてしまう。
帰宅時間の遅くなった彼女を怪しんだ恋人が、密かに後を尾けたのだ。
バレた当初は酷く怒られ、頬をはたかれ、泣かれもした。
しかし彼は卑怯でズルい男であり、所詮金の魔力には適いはしなかった。
いや、あらがう気があったのかさえ怪しい。
次第に彼女の金をアテにするようになり、金遣いも荒くなり、いつの間にか仕事も辞め、揚句の果てには別の女に貢ぐまでに成り下がっていったのだ。
別れは突然で、唾棄すべき結末だった。
事実を知った時、誤解しようの無い現場を目の当たりにして、彼女は崩れ落ちた。。。
半裸の見苦しい姿のままで苦しい言い訳を繰り返す男、その横で開き直る女 そんな二人を前に言葉も出ない彼女
現場を目撃されながら狼狽し、見苦しい言い訳を繰り返し、果ては逆切れする男を前に、彼女の中の何かが崩れた。
そう、崩れたのは二人の関係だけでは無かった。
愚かしくもまだ自分に付き纏おうとする男を醜いと思った。
いっそ開き直る女の姿の方が心地良かった。
自分でも驚くほど冷静に、彼女は二人を部屋から追い出すと、男に別れを突きつけた。
そして誓った。 もう恋なんてしないと───
そんな自分を月並みだと思いながらも、彼女はその後本当に恋をしなかった。 いや、恋ができない女になっていた。
凍えた心を抱えたまま、彼女は仕事をし続けた。
そんな必要など無くなったのだが、仕事を辞める気にはならなかった。
ひとつには考える時間が欲しく無かったからというのもある。そして自虐的な気持ちも・・・
汚れてしまった自分。裏切った恋人。
それならとことん汚れきってしまおう。
使い道の無い金は、どんどん貯まる一方だった。
そして金が貯まれば貯まる程に、彼女の心を虚無の風が吹き抜けていくのだった。
金なんて欲しく無かった。
自分に金を払ってまで会いに来る客がいる事に、なけなしの自分の存在意義を見出しているのに、矛盾した感情。
金を払ってまで会いに来る客。金を与えても裏切った恋人。
彼女には”金”という物が、これ以上無い汚れたものに感じられた。
「ぱぁーっと使ってすまおうか」ふと、そんな考えが浮かんだ。
汚い金を持っていたく無かった。
しかし使おうというものの、その方法が分からなかった。
不動産・・・には金額が足りない。
ホストクラブ・・・楽しいとは思えなかった。
美味しい料理、旅行・・・どちらも一人じゃつまらない。
そんな事を考えながら、店への道を歩いていると、ふとロードサイドにある宝飾店のショーウインドーに目が留まった。
鮮やかな赤い石のネックレス。
それは彼女の誕生石だった。
恋人が、いつか彼女の指にはめてくれると約束していた石。忌まわしい赤い色。
特に気に入ったわけでも無いのに、どうしてもそのネックレスが欲しくなった。
そのまま店内に入ると、今の彼女にとってははした金程度のそのネックレスを買い求め、身に付けもせずにバッグにしまう。
仕事がはね、帰宅すると、早速バッグからネックレスを取り出し、鏡の前で胸にかざして見る。
小さな赤い石は、汚れなく、そして今完全に彼女だけの物だ。色褪せもしなければ裏切りもしはしない。
不思議な安堵感と満足感に満たされ、その夜彼女は久々に幸せな眠りに就いた。
そしてその日から、彼女の宝石狂いが始まったのだ。
金は稼ぐ先から新しい宝石へと姿を変えていく。
身に纏うでもなく、自慢するでも無い。かといって資産と考えているわけでも無かった。
ただ、それはそこにありさえすれば良かったのだ。
そこにあるという、その事だけで、彼女は満たされ、幸福だった。
宝石達に囲まれ眠るのが、彼女の日課であり、至福の時間なのだ。
彼女は今日も男達を楽しませる。
その身を汚し、そして彼女の愛する汚れなき宝石達と共に眠るのだ。