goo blog サービス終了のお知らせ 

遊行七恵、道を尋ねて何かに出会う

「遊行七恵の日々是遊行」の姉妹編です。
こちらもよろしくお願いします。
ツイッターのまとめもこちらに集めます。

2022.10月の東京ハイカイ録

2022-10-21 01:21:26 | 記録
十月も半ばを過ぎましたが、その真ん中の土曜15日に日帰りで東京へ。
なんでも東京は寒くて雨もパラパラというので傘も支度してちょっとばかり温かめの格好で行き、行き、行きましたら暑いやないかーーーっ
しかも雨も全然降りませんわ。なんでやねん。

とりあえず丸の内へ出る。
静嘉堂文庫美術館が世田谷の岡本から移転してお堀端の明治生命館に入ったそうな。
日時指定券は10時半なのでその間、待機所で映像見たり色々。
明治生命も今では合併しているので正式名はまた違うわけだね。
しかしここは岡田信一郎とその弟・捷五郎、塔博士の内藤多仲らの技術と知恵が結集した建物であり、戦後にはマッカーサー元帥が執務をとったことでも有名。
個人的には鏡花のファン筆頭の水上滝太郎こと阿部章蔵が丁度取締役だった頃にこの建物が、などと思うと嬉しくなる。
その建物見学はまた後に。

時間が来たので美術館入場列に並ぶ。色々と手続きがあるので結果的に10分くらいはかかる。
そして中央のロビーは撮影可能で、その周辺に四室ばかりギャラリーが広がる。ええやないですか。前とはまた違う構造で、見て回るうちに根津美術館を思い出したよ。
曜変天目もここで見るのと向こうで見るのとはまた違う感じかな。
世田谷の時は二子玉川からバス乗ってはるばる岡本へ向かい、それから徒歩で砧公園へ向かって世田谷美術館に行ったもんです。
あ、民家園についぞ入らぬままではないか。
五島美術館、静嘉堂文庫、世田谷美術館が一つのコースだったのよ。
今後は丸の内で静嘉堂文庫、三菱一号館、出光美術館コースになるかな。

噂の曜変天目ぬいぐるみは予約制。凄いなあ…いやその発想が。
買われた人はえらい。
ホンマにびっくりした。

その後はじっくりと建物見学。たくさん撮影しました。
やっぱり素晴らしいよ。絨毯なんかも柄がレトロで可愛い。
今度またまとめます。

さて例によって今回はランチを食いッぱぐれパターンに入りました。
なんかたまにこういうことが起こる。
二重橋から根津へ出て、色々ミスと当て外れでダメダメ。
途中で知ったのは、この日が根津の下町祭の最中でそれでどこも満員御礼とか開店のずれがあったみたい。
もぉいいや、仕方ない。

弥生美術館に入る。
楠本まきさんの原画展。完全に同世代なんだけど、マジで遠い存在なのよ。
わたしはマンガに対し、出来る限り良い読者でありたいと思っているけれど、彼女とその作品世界は本当に遠い存在過ぎて、今回が初めての接触になる。
ただやはり同じ時代を生きているから、合う・遭う・会うことは全くなくとも、時代の空気感はわかる。絵を見ていても「ああ」と納得も行く。
しかしそれであってもとても遠く離れていて、逆に近年の作品に惹かれたりもする。
これは変なたとえだけど、小泉今日子がキョンキョンとしてアイドルまっしぐらの頃は、全く関心がなかった。
ところが彼女が永瀬と離婚して「陰陽師」で久しぶりに登場してきたとき、ものすごく応援したくなった。同世代がぐったりしているのが嫌だったんだな。
それで今は却ってファンになり、彼女の発言とか応援したり同意したり。
それと似たような作用があって、名作と名高い「KISSxxxx」には関心が向かないのだが、近年の「赤白つるばみ・裏」の数ページをみて、同意するしかないやんという気持ちになったのよな。
いやほんとに。

夢二の方はお付き合いのあった人々の紹介で、仲良しの人が多かったのもよい感じなんだけど、谷崎との関係をみて上村一夫「菊坂ホテル」を思い出して笑い出しそうになった。
いやいやあれはフィクション…と思いつつも、あかんあかん笑うわ。
またこれらは別稿で書けたら書きます。

ハヤシライス食べてちょっと元気になってから渋谷へ。
警察署の所から地上に出て國學院大學へ向かう。前まではわんこのバスに乗ってたけど、時間が合わないので歩くわけだよ。
それで途中で金王八幡宮の方へ出たら面白いものをみつけた。
昔の地名表示札「澁谷區金王町」…よいなあ。ところで金王は渋谷金王丸からだそうだけど、何故かこんのうと打っても字が出ない。今は読み方が違うのか。この近くの白根記念澁谷郷土博物館で以前展覧会を見たのだ。
当時の感想はこちらね。
伝説のツワモノ渋谷金王丸展
2007年か…早いものよ喃。

その國學院大學博物館に行きまして、金子コレクションの物凄い寄木細工を見たわけだよ。
これがまたまさかの撮影可能。それでしかもこの金子さんが実は國學院大學の先生だということを今回初めて知った。とにかく撮りまくりました。
これもいつかまとめます。


出てから南青山へ向かう。常陸宮邸の横を通るとスクラッチタイルが素敵だなとか、雑草の凄いところをみてマムシくらい出てきそうな深さだなとか思ったり。
そしてビリケンギャラリーに到着。
今回は近藤ようこさんの個展「つれづれに」を拝見。

なんだが、先客のご年配のダンディな男性になにやら見覚えが。
宇野亜喜良御大ではないですか――――っっっっナマの宇野亜喜良みたぞーーーっ
ヒャッハー!
いやごめん、近藤さん、主役のあなたに会いに来たのにこっちにコーフンしてしもた。
88歳だけど、とても素敵な方でしたわ…どきどき。

今回わたくしは近藤さんの描いた巨大猫に凭れてお昼寝の女の人の絵の袋物を購入。
好きなんよ、袋物って。
ビリケンギャラリーの方、近藤さんと世間話などするが、ふと気づけば去年の10/16にわたしはここへ来ていたのよな。そうかそうか…似たようなコースを組んでるわけさ。で、去年は埼玉近美で「美男」展みてるわけだよ。
一年があまりに早すぎる。

ところでわたしはビリケン商会さんを知ったのは「こち亀」で見たからなんだが、その「こち亀」に掲載されてたのは1985年のことらしい。あー、「キャプテン翼」「北斗の拳」「銀牙」「ジョジョ」連載の頃だな。
そりゃ完全に読んでる頃だもの。「星矢」はまだ始まる前か。
・・・37年てか。しかし今挙げた作品のうち「翼」も「ジョジョ」も「銀牙」も形を変えながらも連載が続いているのは驚異だな。「北斗の拳」もパロディマンガが連載中だし「星矢」も確か…

それはおいて近藤さんの新作展は色々な方向のものが並んでいて、「稚児灌頂」二点はわたしの好みでしたな。
美童の静かな風情がよかった。
とはいえ近藤さんにはフジョシの傾向はないのでこの作品自体にそうした意味でのエロティシズムはない。
絵そのものには艶があるのに、これは面白いことだと思う。
「二人」はジョグジャカルタやシーギリヤ・ロックの美女のようにも思える妖艶さがある。
アジアの魅力が横溢しておりました。
前掲のDMの女性はゴジラですな。顔立ちはむしろ初期の頃の作品の「逆髪」とかそんな女に近いようにも思える。
手が朱に染まるのがまた不穏でよいですが、それを言うと「いや実は」と意図したものではないことを教わる。
「家守綺譚」のネームもあった。ええやないですか。
思えば現存作家の作品のコミカライズは久しぶりですね。
他にもエッセイコミックの連載も抱えて、色々と大変でしょうがファンとしてはお身体をいたわりつつがんばってーーーっと応援するしかない。
私欲が前面に出ると、ぐふふ働け働けになるところだけど、まずはお身体大事に。

ここでタイムアウト。日本橋へ出て東京駅へ。
アブラボウズとやらの麴漬けの焼き魚の入ったお弁当を購入して帰阪。
なんだかんだとやっぱり東京ハイカイは楽しいよ。

次は横浜鎌倉をメインにするか…まだめどは立たない。

2022.9月の東京ハイカイ録

2022-09-19 20:12:55 | 記録
7月に東京行って以来二か月ぶりに出向くことにしたその前々日、まさかのカード紛失で焦るの何の。
そのカードがEXICと連携しているからカード会社から停止する前にそっちと連絡とれと言われ、その後に警察へ出向く。あーーもう本当に疲れる。
殆ど寝られぬまま出社。ロッカー開けたらカードが「おはよう!」とばかりに落ちてきた。
そうか、そういえば。
ほっとして脱力したので己をビンタ二発。

さて土日に行くかと支度してたのだが台風情報。まあ仕方ない、ギリギリ何とかなるだろうと予定を変えずにいたら、金曜の夜の残業が堪えた。さらに事故渋滞でバスがまさかの一時間半かかるという…
帰宅してから今度は例によって何をしてるのかわからない状況になり、殆ど寝ないまま時計が鳴る。
自転車の荷台にキャリー乗せて置き場の建物の中に停車。
万一の防風に備えたのでした。

今回は阪急からJRでなく南方から地下鉄乗換にしたが、これまた慣れていないので間違えてなかもず方面に出てダッシュで千中行きに。やべーやべー。
なんしかこっちの方が時短なんよ。
新幹線に乗りまして2時間半ばかり食べたりぐったりしたり。

東京に着くとまさかの大晴天。ええんかいな。
時間の都合で先にホテルに行く方が合理的なのでメトロリンクを待つ。
助かるよなあ。
チェックインしてたら、声が聞こえたと奥から馴染みのフロントさんが登場。
いやいやお久しぶり。お元気?
などと「久闊を叙する」というやつだよ。
互いに季節性鬱があるので「がんばろう」と声を掛け合って出かける。

久しぶりに本所吾妻橋へ。暑いなあ…真夏のままだよ。
親水公園なんかでも子供らは夏のままの遊び方してたな。
さてたばこと塩の博物館。ライターの展示。これがやっぱり面白かった。
わたしは吸わないけど、人間の嗜好品への執着と少しでも楽したいという気持ちとかが、進化や美意識とからみあうと、こういうものを拵えるわけだなと。
またパチパチ撮ったものを集めてアーカイヴ化しますわ。
それにしても塩コーナーがリニューアルしてたか、面白かった。

しかし暑いというても季節はやっぱり進んでいる。
彼岸花が咲いていた。


今度は押上から千駄木へ。
地上へ出たがまた暑い暑い。
それで前に気に行ってたお店に向かうと…無くなってたな。
ああ…これで萎えてしまい、まあいいやと入ったのがハズレで反省。
アカン喃。

まあでも気を取り直して団子坂を上る。大した坂ではないが足の悪くなったわたしにはここまでかもな。
鷗外記念館へ。
東京の住まいと言うから建築関係の展覧会かと思ったのでちょっと予想外れたか。
わるくはないんだが。そう言えば今年は文学者関係で誰それの没後何十年とか生誕何十年と言うアニバーサリー年らしい。
さっきのつまらぬランチよりここでお茶した方がよかったかもなあ。

弥生美術館へ。今季二度目。村上もとか展。カラー原画などの展示替え。
わたしは「赤いペガサス」以来のファンなの。特に「龍 RON」は何十何百何千と読んでも読んでも決して飽きることはない。ラストで90歳の龍にまだ京都弁が活きていることが、より胸を衝くのだろうなあ。
これも展覧会が終わってからパチパチ撮ったのを集めます。

市ヶ谷から本八幡へ。そこから京成に乗り換えるのにちょっとトラブるが仕方ない。
津田沼で乗り換えて千葉中央へ。おお、すっかり駅ストアが変わったな。
ここから千葉市美術館へ。
…いやわかってたよ、ここのコレクションの恐ろしさは。
でもついうっかりしたんよな…
六時を少し過ぎたので600円で入館。ありがとう。
もう必死で見て回ったけど、新版画どこまで持ってんねん…
1999年に「日本の版画」展が始まった時から千葉市美術館に行くようになったが、本当に参った。
なんせこの膨大な展示の後に「ヘレン・ハイドとバーサ・ラム」まで特集展示してるもん。
そしてリニューアルしたからと5階にも展示スペースが広がり、これがまたよかった。
いやはや疲れ果てました。
いいものを見過ぎた。

駅に戻るが行こうと思ってた店が閉まってた。
で、某チェーン店に入り、反省。
昼も夜もろくでもないな、思想を持てよ、わたし。
ぐったりしながらホテルへ。

だいぶ街並みも変わってる。店も色々閉店してたり建物が壊されてたり。
早く寝ればいいのに色々ごたごたしてやっぱり寝るのは遅かった。

起きると打って変わって大雨の東京。
朝食ではちょっとニガテなものが集まっていて、今回は食に恵まれていないなと思ったり。
送迎バスで東京駅に着くといつものロッカーにキャリー入れて、まだ24時間チケ有効なのでそれで渋谷までゆく。
しかしあまりに大雨なので、國學院大學博物館は来月に回し、松涛美術館へ。
あっしまった、予約うっかり…でもこの雨のせいでか、入れました。
面白い展覧会だったよ。ヤマトタケル、神功皇后の昔からの紹介にはじまっている。
しかし実をいうと最古の男装者は天照大神なのだよな。
弟のスサノオが来ると聞いて武装して待ち構えるわけで。
「卽解御髮、纒御美豆羅而、乃於左右御美豆羅、亦於御𦆅、亦於左右御手、各纒持八尺勾璁之五百津之美須麻流之珠而」
これだよな。
それにしても展示の中で国立劇場所蔵の孫治郎の面があまりに綺麗で、どこから見ても綺麗で、遠くからでも近くからでも綺麗で、今回一番撃たれたな。
またいずれ別稿にて。

出てもまだ大雨。寒くなってきたのでガレットの店にと思ったらこの大雨でも行列。えらい。
止めて駅まで向かうが今度は鯨屋が無くなっていた。
後で知ったがビルの三階に移転してたんだな。
つまりそれだけ行ってないわけか。

で、今回もまたそれならと渋谷でなく六本木一丁目に行くという選択がミスだったんだな。
思ってたところが休みで、仕方なくカフェに入るが、悪くないがこれかという感じは否めない。
ただアボカドのディップにはケチャップとマスタードが合うなと知ったよ。

大雨の中を久しぶりに大倉集古館へ。ホテルオークラの改修と言うか建て直しの始まる前に行ってそれから間が空いてたな。大倉集古館はわたしに古美術を楽しむ目を養ってくれた修行場でもあるので、今回もちょっとばかりまじめに向かったのでした。
すると予想外なものをみてウワハハハハになったよ。
今の伊東忠太のこしらえた建物の前の、震災で壊れた初代の写真とかまさかそんなのが見れるとは思いもせなんだ。
ラッキー。しかも忠太の描いた建築パースまであるやん。
ほくほく、ほくほく。

唐代の初期のフィギュアもたくさんあったし、大倉喜七郎と張作霖の仲良し話もあったりと見どころたくさんの展示でしたわ。

そこからリニューアルした泉屋博古館分館へ。
…え、20年てか。ほんで泉屋博古館東京と名乗りを変えたのか。さうかさうか。
うーーーーん、なんてこったい、そんなにも歳月が経っていたとは。
ビックリしすぎたよ。
今回の展示は京都のが主か。鹿ケ谷の本館の60周年展のと大体同じですな。
それにしても展示室も広がり、ロッカーや手洗いもよくなってよかったよかった。
こんどまたカフェにも行きますわ。

そこで切り上げて六本木一丁目から溜池山王経由で赤坂見附で丸ノ内線に乗り換えて東京。
もうこれで濡れなくて済んだけど、濡れ過ぎたわ。
着替えようと思いながらこまごまと買い物してる間に乾いてた。

早い時間のに変更した新幹線に乗ると、隣BとCに幼い姉弟が座る。後ろに家族ね。
ちびっ子とご年配の婦人には親切なわたくし、いろいろとお節介を。
挙句にはシンカンセンスゴイカタイアイスをもらった幼女にその食べ方をレクチャーする動画を見せるなど。

7時過ぎにに新大阪につき、電車の乗継がうまくいき、阪急に乗ったのは7:25だから優秀だわ。
帰宅するや猫どもの熱烈歓迎。昨夜は隣家の叔母にごはんたのんだけど、やっぱり私がいないと淋しいんだな。
可愛い喃。
で、ごたごたしてて結局寝たのが四時と言うのは阿呆ですな。

来月にはまた行けたら行きたいものです。

「隔週刊 古寺行こう」の面白さ

2022-07-28 00:46:40 | 記録
今春から発刊された小学館の新しい雑誌「古寺行こう」も夏を迎え、創刊号から見てきた者として、どこが好きだとか、ここがいいなとか思ったところをまとめてみたい。

こちらは最新刊の11号「南禅寺・建仁寺・東福寺」号

水野克比古さんの写真。京都の風景を撮る第一人者。
この暑いさなかに見る新緑の南禅寺山門の清々しさよ。
鏡花の「高野聖」にある「天狗道にも三熱の苦悩」のその三熱も、この清々しさの前ではたちまちに消え失せるよ。
ほんと、気持ちいい。

五月に出た「薬師寺」号は大池越しの早朝の姿。

なんともいえない美しい配置の伽藍。
その中心に白文字で「よみがえる白鳳伽藍」とあるのがまたもう、素晴らしくいい。
写真は牧野貞之さん。入江泰吉先生に師事して大和路を、万葉の道を写す写真家。

三好和義さん、矢野建彦さんの写真もあれば、大正以来の飛鳥園の写真もあり、寺院から提供された写真が表紙の時もある。
それぞれとても魅力的な選択だと思う。
ジャケ買いしたくなる、そんな表紙。
自分たちの知るそれぞれのお寺のいちばんいいショットを選んでおられるのが、いい。
それは風景であったり、そのお寺を象徴する仏像であったり様々だが、いずれも印象深い。

何故素晴らしいのか、そのことを少しばかり考える。
表紙写真は、優れたプロの眼と手で風景が再構築されたもので、わたしたちの記憶の中にあるお寺の姿と合わさることで、更に綺麗に見える。
写真と言うものは面白いもので、カメラの技能が向上することで素人でもスマホで実にいい写真を撮ることが出来る。
しかし構図や光加減の選択や「何をどう撮るか・どう撮りたいか」確固たる意志がないと、漫然とした風景になる。
素人とプロの写真家の違いはそこだと思う。
そしてこの「古寺行こう」を構成するいずれの写真にも、はっきりとした意思がある。

改めてこの本について。
これは「古寺行こう」というタイトルのムックで、古寺を紹介し、アクセスを記し、わかりやすい地図を載せ、近辺のおいしいお店なども教えてくれる。
そう、実際にそのお寺にこの「古寺行こう」を持って行けばいいように出来ているのだ。
予習にもなり、ガイドブックにもなり、行かれない人には見るだけでも楽しめる作りになっている。
コロナの時代になり、面白くない日々が続く中、古いお寺にでも行こうかと思うひとは少なくない。
往時に比べれば寺域は小さくなったとはいえ、広い境内と美しい庭園、豊かな借景を逍遥するのも楽しい。
お堂に鎮座まします仏像を拝み、その美をめでるか、なにかしらの願いを心の中で打ち明けるか、畏れ敬うか、ひとそれぞれ。
このムックがその時のお供になってくれるだろう。


今、世に出ている「古寺行こう」は
創刊号 法隆寺 2022年 3/8発売
2 東寺 3/8発売
3 東大寺 3/29発売
4 興福寺 4/12発売
5 薬師寺 4/26発売
6 金閣寺・銀閣寺 5/10発売
7 蓮華王院三十三間堂 5/24発売
8 長谷寺・室生寺 6/7発売
9 平等院と宇治の名刹 6/21発売
10 唐招提寺 7/5発売
11 南禅寺・建仁寺・東福寺 7/19発売
と五カ月で11冊。
奈良と京都のお寺がのしている。
全40冊の内他県は高野山の和歌山、比叡山の滋賀県、永平寺の福井県などなど。
やっばり奈良と京都は別格。
観光では目立たないが、大阪も実にお寺が多いが、今回は河内のお寺のみラインナップに上がっている。

この「古寺行こう」での読み物も面白い。
メイン記事のお寺についてのあれこれだけでなく、連載がとてもいい。
ページ順に
・古寺人物往来…その号のお寺に関わる人物の評伝
・仏像のフシギ…仏像イラストレーター田中ひろみさんのやさしい仏像入門
・寺院建築の見方…橋本麻里さんの仏教建築案内
・古寺+1…西山厚さんの仏像紹介などなど…
ほかにも古寺逍遥として、近辺のお寺の案内もあり、これがけっこうそそります。

これらを読み終えて最後のページに来ると、大きい地図が出てくる。
お寺の周辺地図。それがただの地図ではなくて、実はスマホと連携しているのだな。
これがやっぱり凄いことだと思う。
だって、行ったはいいが地図を見てもわからないこともあるだろうし、そういう時にスマホと連携してくれているのなら、わからない場所もなんとかわかるようになるのではないかな。
「ホントかな~」と思う人はこのムックを持って行って、実際に歩きながら試してみなはれ。
…「出た―」くらいはたぶん言うはず。
声に出さずとも思うのは確か。
やってみてね。




そしてこのムックのスゴイ付録について。
毎号必ず大判ピンナップがついている。
それが本当にびっくりする。広げると実に大きい。
リアルサイズのものもあるし、巧いトリミングもある。
吉祥天女像、平等院の雲中供養菩薩たち、三十三間堂の仏たちをそれぞれの方向から捉えたパノラマビュー―――――!
なんかもう、本当に毎号毎号凄いものを見たよ。
縦はこうだ。

いろいろ毎号工夫してて、本当に感心するよ。


最後にごく個人的なことを書くと、平等院号のこの表紙、すごく心に来た。

なんというか、癒されたのね。
観光だけでなく、やっぱり癒しがあるのがお寺のいいところなのだと思う。
いいものを手元に置けて良かった…

2022.5月の東京ハイカイ録

2022-05-16 02:45:23 | 記録
久しぶりに東京へ出ました。
とにかく今の状況ではほぼどこへも行けない。
今回は弥生美術館の指定を取ったので出かけたわけだが、そのわりには予定をきちんと立てられなくなっている。
それはまあGWも働きづめ、それからもずーっと連日まさかの残業でくたくたになり、アタマも身体もダメダメ状態だからだわな。
まあそれはいいとして(よくない)、EXICのポイントも6月末までに使わないとなので、帰りはグリーン車を取って、とにかく出かけました。

朝はもともと弱いから駅構内のコンビニでパンなどを買う。
車内で食べたうちの一つが、ホイップとアンとがマッチしてて美味しかったなあ。
近年はもう完全にアン派。生クリームよりこっち。

ほぼ寝ていたのだが、さすが五月だけに車窓の向こうでは水を張った田んぼがたくさん見えた。
同じ車両にオバサンの団体が乗り、凄まじくしゃべり倒していたので、危険な車両だったと思う。
とかなんとかいう内に品川が近づくと、線路に向いて立つ大きな鳥居が見えた。
それからやはり古い建物が色々と目についた。これまで気づかなかったなあ。
以前の定宿は大井町だった。その頃はゼームス坂界隈をうろうろもしたが、離れてから随分経つなあ。

四月からずーっと左足がわるくてまともに歩けなくなっているが、カロナールとロイヒ膏とロキソシップとでなんとかだましだまし歩く。今回は東京都現代美術館から行くことにしたのだが、いつもは菊川から歩くが、この足だし雨だしということでバスを考えた。しかし東京駅からでは1時間かかるので時間がもったいない。
ということで総武線快速で錦糸町に出て13系統のバスに乗り石島で下車したが、これが結局はぐるりと歩くことになった。
↑こう歩き、←こういってということ。長方形の底辺右下から上辺の対角線の地点へむかうのだが、斜めに突っ切れないからそう歩くしかなかった。
ちょっと不条理ではある。

10時半に到着し、二つの展覧会を見るので割り引いてもらう。
まずは特撮美術監督井上泰幸展から。

これはもう本当にコーフンしたなあ。面白かった。
そういえば「特撮博物館」展から10年なんだそうだが、やっぱり特撮系の展覧会は技術や発想を楽しめる側面もあるので、二重三重に楽しい。

地下レストラン「100本のスプーン」に入り、エビのドリアを。

池の見えるソファでよばれるが、目の前にアメンボが行き来するのがなんとものどか。
デザートはティラミスだが、添えのラム酒は蛇足かもしれない。
これはこれで既に完成されているから。


次は建築家の吉阪隆正展。
こちらは撮影可能。色々面白いし、経歴も興味深かった。特に母方が箕作家の子孫で、この辺りをちょっと調べたらかなり興味深い事実が続々と。
ご本人で面白いのは髭を生やした理由がゲバラとカストロに会いたかったからと言うもの。
後こういう言葉がありました。

なるほどなあ。

ところでこちらは現美でみたタイル



いい感じだな。

天井には宇宙人


地下鉄には干支のどうぶつの挟まれるのがある。今年の虎は今回が初見


菊川から市ヶ谷経由で東大前へ。おや今日は東大祭か。
弥生美術館「くらもふさこ」展。

申し訳ないくらい読んでいないので、絵の良さだけを堪能する。どうもわたしは少女マンガの学校が舞台の少年と少女の恋愛ものに関心が昔からないのよ…

夢二の方では三階の華宵コーナーまでがあり、こちらももう三階閉鎖するのかな…




撮影コーナーでは大野らふさんコーディネートの大正ロマンな着物が。








かっこいいよねえ。可愛いし。
ところで夢二は銘仙が好きではなかったそうな。
いろんな意見があるのもいい。

ここでもうタイムアウト。
他にも行きたいところがあるがあきらめる。

新幹線に乗る。ポイントがたまってるのでグリーン車。
シンカンセンスゴイカタイアイスを食す。


夕日を見る。すぐに日が沈む。


月が出た。

田毎の月を捉えようとしたが難しかった。

東寺とその隣


近いうちにまた出向きたい。



2021年11月の東京ハイカイ録

2021-12-01 03:09:56 | 記録
久しぶりに東京へ行った。
実はこの人形の目に惹かれたのだ。

そう、わたしにとっては古代最大の推し・ヤマトタケル、ヲウスノミコ。熊襲の前で女装し踊る美少年。熊襲を襲撃し、その名を贈られヤマトタケルと名乗る美少年。
ときめくなあ。
大体人形でも芝居でも女装する美少年と言うものほどときめくものは他にない。
ドキドキ…

それでこの展覧会を行こうと予定組んだとたん、「ちょっと待て」とわんこの登場。

即ち府中市美術館「動物の絵」展の応挙・蘆雪師弟のわんころども。
こんなやつらにかかっちゃ予定変更するしかないがなーっ
そもそも港区郷土歴史館に今も未踏ということもあり、時間がかかりすぎるのは目に見えている。
で、これは後日ギリギリまで待って出かけることにした。
最近は日帰りしかできないので不経済だが仕方ない。

ああ晴天の富士山


EXIC使用者特典の東京subwayチケットが丸ノ内線の東京駅改札近くにオープンしたサービスセンターで購入可能になったので、そこから淡路町、小川町経由で東府中へ。
いいお天気だし紅葉も見たいので東府中で下車さ。
風は強いが歩くには丁度いい感じ。ところで駅の外に出るといつも品川街道が目に入るのだが、これはあの品川からの道なのかと色々不思議に思ったので、今回初めて調べてみた。
ああ、そうなのかとなんとなく納得がゆく。ここらが西の端らしい。

いつの間にやら韓国製品を扱うコンビニならぬ韓ビニというショップも出来ている。
ドラッグストアではピングーのトレぺもある。近いと買うんだがなあ。
東府中もわたしが初めて来た頃に比べると駅舎をはじめ色々変わったよなあ。スーパーのライフも出来たし。

自衛隊の横を通り紅葉の綺麗な公園内へ。
秋に東京の公園に行くと必ず二つのことが同時に思い出される。
・代々木公園のベンチでもらったばかりの手作りマフィンを食べたが、その時目の前で小さな木枯らしが銀杏を巻き上げて、あたり一面に散らばったこと。
黄金の木枯らし。
・因幡晃「あの唄」の二番の歌詞。ただしこちらは池とボートが必要。
ボートが一艘浮いていた 波が白く光っていた 
晩秋になると色々とノスタルジックになる。
もう長いこと変らない。去年の今頃もたぶんそんなことを書いている。

綺麗な紅葉を少しばかりパチリ。


「どうぶつの絵」展をみる。
詳しくはまたいつかまとめるけど、日本の三大春祭りの一つ・春の江戸絵画祭りの他にもこの秋の時期にこんな魅力的なんやられると、遠隔地にいるわたしは困るやないの。
以前ほど東京ハイカイも出来ひんのに。
やっぱり江戸時代のどうぶつが可愛いてしゃあないのでした。

すっかり予定時間を越えてしまい、色々と困る事態になったが、どうしようもない。
駅近くのスンガリー飯店に入る。昔は素通りしてたけどある時入ったら、入りやすいし食べやすいしで、今ではよくお邪魔いたします。
店主さんが「62年になるよ」と話しかけてこられた。けっこうなことです。
また東府中に来るときは必ず訪ねます。
ちょっと味は濃い目だけど、丁度いい感じなのよ。
ところでスンガリーと言えばロシア側の呼び名で中国側では松花江だったか、
檀一雄、夢野久作の世界へゆくね。安彦良和もいるだろう。

次に予約している弥生美術館に遅刻の電話を入れる。いつもごめんなさい。
でも一本早く乗り換えれた。市ヶ谷での早足が功を奏したのだ。
というわけで言問通りを行くと、都のマークの銀杏のロードガードと東大の銀杏とが綺麗にコラボしていた。

ここでは谷崎作品に出てくる着物のイメージの再現を愉しむ。都内にいる頃の谷崎はアヴァンギャルドなセンスだったんだよなあ。
で、関東大震災で逃げた先で松子夫人。大阪の船場の御寮人さんの優雅な様子にシビレ、京都の楽しみを知り、とうとう作風まで変わった。
尤もここで終わらず、松子さんの息子の嫁さんにも懸想してるよね。
中河与一「探美の夜」が谷崎とその周辺をモデルにした小説で、田代光のリアルな挿絵がまたすごい。
なかなか現代の挿絵画家の展覧会が開催されないけど、こうした形で田代光の作品を楽しめて嬉しいわ。
それにしても中河与一といえば「天の夕顔」しか知らんけど、つい近年までご存命だったんだなあ。
川内康範がかれの弟子筋だというのは久世光彦の本から知った。
華宵コーナーでは大正オトメ御伽話とコラボ展。これは全然知らんので申し訳ない。
夢二はやはり美人画より童画やグラフィックアートが好き。

さてそこから溜池山王まで出て乗り換えて新橋へ。この地下もだいぶ変わったよね。
四時少しに汐留美術館到着。
ハンガリーのジョルナイ工房の作品が見たくて飛んでいったわけです。
思い起こせば1996年に京近美で見た「ドナウの夢と追憶」展、これだよなあ。
ここからジョルナイ工房に夢中になったよ。
今回もドキドキしたわ。この玉虫色が最高なのよ。

よいものを見たな。というところでタイムアップ。
新橋から日本橋へ向かう。
丸善でダヤンの絵葉書貰う。
新幹線で帰宅よ。ああ東京は面白い。
お弁当も美味しかった。
グジ(アマダイ)、キンメダイ、アナゴの食べ比べ。よろしいな。
以前のようにはゆかないが、また出向きたい。

とはいうものの、年末にかけてなにやら新しい変異株が出てきてるらしいね…