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トヨタは、米議会の公聴会を乗り切れるか

2010-02-21 | 時事、社会
今回のトヨタの品質問題は、ついに来週23日に豊田章男社長自身が、アメリカ議会の公聴会に招致されるという事態にまで進んでしまった。 アクセルペダルが戻らない問題について、隠蔽があったのかどうか、アクセルの電子制御システムに問題はないのか、といったことが質問の中心になりそうだが、そこで事実に基づいた論理的な答弁ができなければ、議員らは納得せず、批判は更に高まるだろう。 答弁は大部分が通訳を介しての回答になるだろうが、一年前に、リーマンブラザースの元CEOや、GMのリック ワゴナー会長らがやり込められたような、経営者の責任を厳しく追及するシーンが容易に想定される。 豊田社長は、米消費者の生命を危険に陥れたことに対し、頭を下げて謝罪することになるだろうし、懲罰的な措置(罰金など)を課される可能性が高い。 あまり考えたくはないが、厳しい非難、追及の言葉が飛び交い、豊田社長が言葉に窮し、俯いて唇を噛むようなシーンが全世界に放映されるかもしれない。 

何とか社長の証人喚問だけは避けるすべはなかったのか。 米国での政治力を総動員して、それだけは避けるべきだったのでないかという気がする。NUMMIなどでアメリカでの就業経験があるといっても、日本での記者会見を見る限り、豊田社長は、アメリカ議会の猛者どもに対等に立ち向かえるような、弁論力やマナーを身につけているとは思えない。日本では頭を下げていれば何とか済んでも、言葉できちんと説明できなければ、アメリカでは通用しない。  豊田社長は、アメリカで自らが説明することで責任を果たしたいという個人的な思いを抱いているようだが、その思いがいい結果に繋がるかどうかは疑問だ。 しかし、アメリカでのこの問題に関する消費者の怒り、メディアの関心の高さを考えれば、最早、公聴会を避けては通れない事態なのだろう。

振り返るに、今回のアクセルペダルの問題に対するトヨタの対応は、常に受身で相手の出方を見てから動くという日本的な対応のマイナス面が出て、事態はどんどん悪い方に向かった。 レクサスESがサンディエゴで暴走し、乗っていた4人が200km/h近いスピードで高速道路のジャンションに突っ込んで、原型をとどめないほど破壊されて4人全員が死亡したという事故がTVで報じられたのは、昨年8月。 その後、911に録音されたこの事故の犠牲者の救命電話のテープが公開されて、問題に火がついた。 トヨタは当初、アクセルの戻りが悪い理由を、純正でない分厚いオールシーズン用フロアマットにペダルが引っかかるのが問題としたが、結局、11月にはその問題で数百万台をリコール。 しかし、フロアマットに挟まるケースだけでなく、アクセルそのものが戻らない事例が多発しているという消費者の声が日ごとに高まり、米国内で突き上げを受けているNHTSAの役人が12月にトヨタ本社を訪問、国土交通省にも赴いた。 問題の拡大は最早抑えきれず、1月中旬に、ついにアクセルがスタックする問題をCTS社製のアクセルペダルが原因として追加リコール。 合計900万台に及ぶリコールと自主回収という「実績」を作ってしまっては、その責任の追及を逃れることは不可能だ。

2008年に欧州ではアクセルペダルが結露で戻らなくなるという問題は出ていたいようだし、昨年の冬には北米でも発覚していたようだから、問題は把握されていたと考えるのが自然だ。 会社としてできれば大規模リコールを避けたい、問題を回避したいという保守的な心理が働いたのは間違いない。 長年築きあげた信頼の上に安住し、品質を厳しく精査する姿勢が緩んでいたのであろう。 しかもこれは製造品質というより、設計品質の問題だ。 プリウスのブレーキの問題についても同様である。 豊田社長が、プリウスリコール発表会見で自ら認めたように、ブレーキが明白に「抜ける」瞬間があり、ユーザーが空走感を感じるような事象を、当初「フィーリングの問題」で片付けようとしたことに、設計者としての考えの甘さ、驕りがあるといわれても仕方がない。 

今週の公聴会で、トヨタが逆転ホーマーを放って、信頼を取り戻すという事態になるとは考えにくい。 アメリカでは、トヨタの一月の販売が前年を下回ったことでも、消費者の間に、トヨタに乗ることへの躊躇、反発が出ていることがわかるし、今年の販売への影響は避けられまい。それは、日本の景気にも影響が及ぶ事態でもある。

日本人がアメリカの議会の公聴会で証言するというのは、歴史上初めではないだろうか。 
それは、望ましい形での出現ではなかった。 しかし、決まった以上、トヨタは乗り切る(耐える?)しかない。 それが今やアメリカで、世界でNO.1の自動車メーカーとなったトヨタの通らざるを得ない道だ。 豊田社長が自らの言葉で、40年以上に渡りアメリカで育てられた自らの会社とブランドについて、明確な言葉で感謝と今後の改善の決意を述べることができれば、それはそれで、アメリカ人に響くところもあろう。 総力を挙げて、この公聴会を乗り切ってもらいたいし、それが、日米両国の市民感情や政治的関係に及ぼす影響も、決して軽微ではないと思う。
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