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トーマス・マン 魔の山

2007-05-26 | 読書(芸術、文学、歴史)
生について、つまり死について考える、認識を高めていけばいくほど、人は自家撞着に陥る。 従兄弟を見舞う目的で、スイスの山中の高地療養地に来た青年ハンス・カストルプは、わずかの間の滞在を思っていた。 そこで進歩的自由主義者でこの青年の教育係りを任じるイタリア人セテムブリーニと出会い、彼と反動的イエズス会子くずれの才人ナフタの間で延々と繰り返される議論の中で、人生への最終的な認識へと到達していく。 3週間のつもりが1年が経ち、やがて平地へ戻ることが不可能になる。 完治も程遠い状況で、軍隊の職務に復帰するために平地にもどり、結局、若い命を落とした愛すべき従兄弟。 2人の教育者の偶発的な決闘とその悲劇的な結末。 自由奔放に振舞うクラウディァ・ショーシャ夫人と、気持ちを通じ合いながらも、クラウディアの連れとして療養地に来た「大人物」ペーぺルコルンの自殺で、また2人は離れ離れになる。

とことん理解し認識せずにはおれない覚醒した精神は、悟れば悟るほど「水平状態」に幽閉される。 マンが、その精神の遍歴から得たものを注ぎこんで完成させた小説は、第一次大戦後に発表されたが、それはヨーロッパの知的精神がこの時期に到達していた深みと憂鬱を教えてくれる。 真摯な試みでありながら洒脱を忘れない筆致は、20世紀屈指の大小説の名に恥じない、ドイツ最大の文学者ゲーテに比肩する豊かさを持っている。

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