国産を中心に数台のクルマを乗り継いできたわけだが、今回のような「いいクルマ」は初めてだ、 このクルマは「とても優しい」 「ソフト」 「気持ちいい」という言葉を、何度も何度も繰り返した。ドイツ車は、ボディやサスペンションが頑丈で、特に新車のうちは硬さがあるはずなので、「優しい」と感じていることは新鮮だった。 金属や機械としての大きさや存在を感じない、自然に反応してくれるVW車の本質を、外車を運転したことがほとんどない地方の一主婦がこうも強烈に感じたことは、一種感慨深い。
ところで、モーターショーが開幕した先週は、新製品の発表会、イヤーカーの受賞、そして本社の研究者を招いての初めてのシンポジウムと慌しく過ぎた。 シンポジウムの企画を通して、宇宙物理学者で、現在は鈴鹿短期大学学長の佐治晴夫先生にお会いする機会を得た。 佐治先生は、「1/f ゆらぎ」理論で知られ、NASAの宇宙探索船Voyagerの打ち上げにも関わった方だが、最近は教育や講演で活躍されている。 ピアノ、オルガンの名手でもあり、詩や文学への造詣も深い。 またクルマ好きでも知られ、今は911ターボを愛用されている。
1977年に打ち上げられたボイジャーには、宇宙人と遭遇した際に地球を知ってもらうために「Sounds of the Earth」という一枚のゴールドディスクが搭載されているそうだが、そこには何十カ国の世界の言語による挨拶などとともに、先生の提案でバッハの平均律クラヴィア集第一巻第一番のあの有名なプレリュードが入っているという。 人間は、視覚よりも聴覚の方が発達している生物だそうで、平均律は、言うまでもなく周波数を数学的に分割して倍音から作られたもので、人間という生命体の特徴を伝えるのに、最も適しているからだそうだ。
先生が今回講演で見せられた写真の1つは、1992年だったかしら、ボイジャーが太陽系を出る際に130億キロの彼方から母なる地球を振り返って撮った写真だった。 もちろん雑音を排除した上のものらしいが、ぼんやりした小さな光やチリの空間の中に、地球が鉛筆の先ほどの一点のほのかな光として写っている。この写真を受け取ったとき、同じく宇宙物理学者で「コンタクト」などの著作でも知られ、NASAでボイジャープロジェクトのリーダーをしていたカール・セーガンが、「諸君、この小さな点の中に、あなたも私も、私達の友人も敵も皆な一緒にいるのだ。 だが、この星が破滅しそうになっても、どこから誰かが助けに来る気配はない」と言ったそうだ。
130億年前に、1つの光の小さなゆらぎから生まれた宇宙は膨張を続け、今や人間の想像もできないほどの広さでさらに膨張を続けている。 太陽系1つとってみても、その遠大さは想像を絶する。 太陽を1つの黄色い夏みかんとすると、地球はそこから10メートル離れたところにある直径1ミリの砂粒、木星はそこから70メートル離れたところにあるさくらんぼの種。 太陽系最後の惑星 冥王星にいたっては、数百メートル離れたところにあり、地球より小さい塩の粒に過ぎないという(「からだは星から出来ている」(P156)。 太陽から一番近い別の夏みかん(恒星)であるケンタウルス座のアルファ星は、なんと3000キロメートル、4光年の彼方にあるというのだ。(この宇宙の尺図では、光も毎秒2センチのかたつむりのようなスピードに過ぎない。)
佐治先生やNASAの研究員にとって、ボイジャーは機械でなく、自分の身体感覚の延長であり、「カレ」とか「あの子」と呼んでいたそうだ。 ボイジャーは、既に太陽系を離れ、耳は聞こえるが目は見えないそうだ。いつも温厚な先生の話を聞いていると、人間が宇宙に較べてあまりに小さな存在であるとともに、宇宙の作ったもののうち、最も精巧にできたミクロコスモスでもある人間の素晴らしさも感じられるから不思議だ。興味をもたれた方は、是非、先生の著作に触れられるといいと思う。
「女性を宇宙は最初に作った。」(2009)
「からだは星からできている」(2007)
「『わかる』ことは『かわる』こと」(養老孟との対談)(2004)
「ゆらぎの不思議な物語」(1994)
ところで、モーターショーが開幕した先週は、新製品の発表会、イヤーカーの受賞、そして本社の研究者を招いての初めてのシンポジウムと慌しく過ぎた。 シンポジウムの企画を通して、宇宙物理学者で、現在は鈴鹿短期大学学長の佐治晴夫先生にお会いする機会を得た。 佐治先生は、「1/f ゆらぎ」理論で知られ、NASAの宇宙探索船Voyagerの打ち上げにも関わった方だが、最近は教育や講演で活躍されている。 ピアノ、オルガンの名手でもあり、詩や文学への造詣も深い。 またクルマ好きでも知られ、今は911ターボを愛用されている。
1977年に打ち上げられたボイジャーには、宇宙人と遭遇した際に地球を知ってもらうために「Sounds of the Earth」という一枚のゴールドディスクが搭載されているそうだが、そこには何十カ国の世界の言語による挨拶などとともに、先生の提案でバッハの平均律クラヴィア集第一巻第一番のあの有名なプレリュードが入っているという。 人間は、視覚よりも聴覚の方が発達している生物だそうで、平均律は、言うまでもなく周波数を数学的に分割して倍音から作られたもので、人間という生命体の特徴を伝えるのに、最も適しているからだそうだ。
先生が今回講演で見せられた写真の1つは、1992年だったかしら、ボイジャーが太陽系を出る際に130億キロの彼方から母なる地球を振り返って撮った写真だった。 もちろん雑音を排除した上のものらしいが、ぼんやりした小さな光やチリの空間の中に、地球が鉛筆の先ほどの一点のほのかな光として写っている。この写真を受け取ったとき、同じく宇宙物理学者で「コンタクト」などの著作でも知られ、NASAでボイジャープロジェクトのリーダーをしていたカール・セーガンが、「諸君、この小さな点の中に、あなたも私も、私達の友人も敵も皆な一緒にいるのだ。 だが、この星が破滅しそうになっても、どこから誰かが助けに来る気配はない」と言ったそうだ。
130億年前に、1つの光の小さなゆらぎから生まれた宇宙は膨張を続け、今や人間の想像もできないほどの広さでさらに膨張を続けている。 太陽系1つとってみても、その遠大さは想像を絶する。 太陽を1つの黄色い夏みかんとすると、地球はそこから10メートル離れたところにある直径1ミリの砂粒、木星はそこから70メートル離れたところにあるさくらんぼの種。 太陽系最後の惑星 冥王星にいたっては、数百メートル離れたところにあり、地球より小さい塩の粒に過ぎないという(「からだは星から出来ている」(P156)。 太陽から一番近い別の夏みかん(恒星)であるケンタウルス座のアルファ星は、なんと3000キロメートル、4光年の彼方にあるというのだ。(この宇宙の尺図では、光も毎秒2センチのかたつむりのようなスピードに過ぎない。)
佐治先生やNASAの研究員にとって、ボイジャーは機械でなく、自分の身体感覚の延長であり、「カレ」とか「あの子」と呼んでいたそうだ。 ボイジャーは、既に太陽系を離れ、耳は聞こえるが目は見えないそうだ。いつも温厚な先生の話を聞いていると、人間が宇宙に較べてあまりに小さな存在であるとともに、宇宙の作ったもののうち、最も精巧にできたミクロコスモスでもある人間の素晴らしさも感じられるから不思議だ。興味をもたれた方は、是非、先生の著作に触れられるといいと思う。
「女性を宇宙は最初に作った。」(2009)
「からだは星からできている」(2007)
「『わかる』ことは『かわる』こと」(養老孟との対談)(2004)
「ゆらぎの不思議な物語」(1994)