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「生命=動的平衡」。 福岡伸一の本。

2009-10-04 | 読書(芸術、文学、歴史)
生物は、如何にも秩序だってその命を営んでいるように見えるが、実は体内の細胞は常に分解され、新しく取り込まれた分子やアミノ酸によって再生されており、数日もすればほとんどがその構成分子は入れ替わっているというのは、新鮮な驚きだった。 1941年に自殺してしまったシェーンハイマーという天才生物学者が、マウスにマーカーをつけた重窒素(N15)を含む食事を取らせたところ、細胞は3日もすると、N15を含む分子にほとんど入れ替わっているということを発見し、生命とは、dynamic stateであると定義した。 

つまり、生命においては、エントロピーが最大化した状態(熱力学でいうところの平衡状態)こそは「死」を意味するのであり、「生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である(P. 164)」ということを、シェーンハイマーは発見したという。

この生命の真理は、有限な時間を生きる人間の生き方にも通じるようでおもしろい。 

今、世の中は、安心、安定、安全志向である。 しかし探検家や冒険家に限らず、人間とは元々、常に移動し,時には戦争して領土を拡大したり、騎馬を駆って大陸を大移動したり、新しい行動を起こす動物でもある。 現代の企業においてもそこに通じるものがあるようで、例えばユニクロの柳井正社長はその著書(「一勝九敗」)で、「人は安定を求めると成長が止まってしまう」 「同質化=死」と述べている。 また余り関係ないかもしれないが、民主党の小沢幹事長も、ヴィスコンティの映画「山猫」で、名優バートランカスター演ずるシチリアの老貴族が吐く、「変わらないために、変り続けなければならない」という言葉が好きだということだった。

ちなみに、福岡氏の近著、「できそこないの男たち」(光文社新書)もおもしろい。 生命は元々単性生殖だったわけで、環境の変化に対応するために、あるとき女性から男性が作られ、有性生殖が始まったというわけだ。 アリマキというアブラムシのような昆虫は、普段はメスアリマキが娘を(つまり自分のクローンを)絶え間なく生み出す。 しかし、冬になる前の一時期だけ、Y染色体にあたる部分が欠損した、体も小さく弱々しいオスを生み、そのオスがメスの遺伝子を他のメスに運んで交配するそうだ。 春になれば、メスはまた娘を際限なく産み続ける生活に戻るという。 

他にも、オスは生殖管と排尿管が兼用で手抜きで作られているとか、Y染色体はX染色体に較べて随分短いとか、人間の平均寿命も男は6歳くらい短いとか、要するに「できそこないのメス=オス」である証明が色々書いてある。 今の時代の男性諸氏には、色んなところで頷いてしまう内容ではないだろうか。






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