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ロボットカーレース観戦記 Urban Challenge 2007 (その2)

2007-11-16 | クルマ
さて、一夜明けてレース本番は未だ空けぬ早朝4時45分にホテルを出発。6時からDARPAのプレスブリーフィングがありコースの説明などが行われた。 7時半からフットボールスタジアム風にBleacherが組まれたスタート地点での開会式。11台のファイナリストとなったロボットカー達が、一列にスタートラインに並ぶ。 登って間もない太陽のオレンジ色の光が会場に浅く差し込む中、5分おきに一台ずつスタートする。 その前に、オフィシャルカーとしてコースに放たれるフォードトーラス80台がパレードしながらコースに入っていく。 どのクルマもレースカーさながらロールバーで補強され、ドライバーはヘルメットをかぶっている。ロボットカーの中には、OshKosheチームのトラックのように何トンもあるものも含まれるから、その巨体が万一制御不能になって突っ込んできても安全なように、ということだろう。 


(左からMITのTalos,スタンフードのJunior, カーネギーメロン大のBossと、アメリカの頭脳がスターティンググリッドに揃い踏み)


レース開始は午前8時。一番スタートは、Virginia Tech Univ.のVictor Tangoで、車両はフォードエスケープだ。 ルーフに装着した「Lider」という最新鋭のレーザーレーダー(一台1000万円近くする)が1秒間に360度回転し、ブザー音と黄色いランプを点滅させながら、場内を横切りコースに出て行った。 次にスタートしたのはJunior。3番手予定のカーネギーメロン大のBossは、リアサイドに大きく「GM」のロゴが入った目立つカラーリングだが、GPSが会場のプラズマピジョンの信号と干渉したらしく中々スタートできない。 こうして、次々と自動運転車が仮想の市街地に放たれていった。

観戦の最初は、一番スタート地点から距離も近く、車も至近で見られるトラフィックサークルで始めた。楕円形を描く道を一周するのだが、楕円の先端のほうは車幅が狭くなっており、レーンの中心を正確に割り出す能力が要求される、さもないとフェンスや路肩の壁に衝突してしまう。


(幅6フィートの道でのすれ違いは高度な技術を要する。写真はバージニアテック大のVictor Tango)

次に見に行ったのは、校舎のような建物の前に駐車する課題をこなす広々とした炉ころ。 ここで面白いものを見た。 黄色にカラーリングされ、唯一のトラック参加車としてスタートで歓声をあびていたOshKoshトラックの様子がどうもおかしい。 所定の駐車スペースをうまく認識できないのか、縁石に片側両輪を乗り上げのろのろ進むと思ったら、そのまま建物玄関の柱に頭をぶつけて動かなくなってしまった。 100メートルくらい離れた金網フェンスのこちらで観戦していた我々もあっけにとられてこれを見守っていたが、やはりロボットか、と思わされる。 こうしてユーモラスな巨体は、しばらくしてオフィシャルが到着しリタイアしてしまった。


(OshKoshのトラックは予選では駐車場の課題をこなしたが、決勝では写真背後の建物の柱に衝突しリタイア)

次に最も興味深いと思われるポイントである4本の道が交わる交差点の観戦ポイントに移動。 前後左右から車が交差点に接近し一時停止をする。 ほぼ同時に交差点に到達した場合は、交通ルールに従って右側優先で交差点に入っていかなければならない。しかし、例えば2台がほぼ同時に到来した場合、どちらのクルマも自分が2番目に交差点に入っていくと判断したら問題が起こる。 お見合いして双方動かない状況が発生する。 膠着したらそこから次の判断をしないといけない。 そのあたりのdecisionの能力がキーとなるのだ。 ここでも見ものがあった。 交差点に東から入ってくるカーブした道で、どうしたわけか方向を失った一台(レガシイだった)は、そのまま路肩を超え傍の家の玄関に突進していった。動けなくなったクルマの屋根とボディサイドのレーダーは、虚しく回転を続けていたが、これもリタイア。


(交差点で遭遇するJunior とVictor Tango。まるで人間が運転していうように右側優先で難なく通行するが、ドライバーシートに人の姿はない。)


(Central Florida大のレガシーは、道を誤って住宅に衝突し動かなくなった)

その交差点近くの三つ角では、Bossと同型のシボレーSUVが、頭が混乱してしまったのか停止線から右折することができなくなり、立ち往生してしまった。 動き出したと思ったら、20センチ前進してはまた停止。 その繰り返しを15分も続けたから、後ろには他のロボットカーやオフィシャルカーの渋滞が100mも連なってしまった。 結局、このクルマもイエローフラッグが入りチームが来てシステムを再起動。 リタイアにはならなかったが大幅に遅れ、完走した6台のしんがりとなった。



(T字路をV8のサウンドを残して快調に加速するBoss. 最もダイナミックな走りだった。 しかし同型のシボレータホで参戦したコーネル大のクルマはここで立ち往生し渋滞を引き起こした。)


(ハイウェイセクションは時速30マイルで巡航)


レースは、6つないし7つの課題を持つ3種類の異なったミッションを、合計6時間以内で走ることが条件で、約60マイルを走破することになる。 メモリースティックに書き込まれたミッションは、出発のわずか5分前にチームに渡される。 1つのミッションを完遂してゴールラインに帰ってきたらロボットカーは停止するようにプログラムされている。 チームのメンバーが乗り込み、人間がスタート位置にクルマを戻し、新しいミッションをインプットしたらスタートボタンを押す。レース終盤にはトップ争いは、ディフェンディングチャンピオンのスタンフォード・VWのJunior, GMとカーネギーメロン大のBoss, Virginia Tech大のVictor Tangoの3台に絞られてきた。 この3台は、先の2つのミッションを間違いを犯さず拮抗したタイムで遂行しており、最後のミッションでも大接戦を演じていた。 テント内の巨大なスクリーンにヘリからの映像を交えて実況がマラソン中継のように放映される。 午後2時前、一番先にゴールに戻ってきたのはJuniorだった。大歓声の中、Juniorはチェッカーを受けゴールラインを超えたところで停止し、フロントタイヤを左に切ってポーズをとる。まるで人間が運転しているかのように拍手を送る観衆。 前週のQualifying で一時予選通過車36台が11台まで絞り込まれた決勝レースで、結局完走できたのは6台のみだった。


(最初にチェッカーを受けてゴールしたJunior。しかし最終結果は、、。)

レースは、午後3時頃には修了したが、DARPAは各所で撮影した映像と伴走のオフィシャルカーの持ち帰った情報を分析し、夜中まで及ぶ作業の末、順位を決める。 結果発表はレース翌日の午前10時からとなった。 Stanford大チームの「Junior」は惜しくも優勝を逃し第2位となった。 正確なタイムはまだ発表されず、致命的なミスもなかったと思われる中で何が順位を分けたのかは正直明らかにされていない。 Juniorの走りは最も安全で「クリーン」であるとの評価を受けていただけに、そこにはアメリカ製のクルマを勝たせるという政治的な判断が介入したのではないかと勘ぐる人も少なくなかった。 しかし、優勝したCarnegie Melon大チームのBossも、2005年のレースで2位の実績を持ち、今回もV8の排気音をとどろかせてJuniorより鋭い発進加速をしており、十分に尊敬に値する走りを見せていた。3位のVirginia Tech.のVictor Tango を含め、上位の3台は僅差だったといえそうだ。


(2位100万ドルの賞金のチェックを受けるThrun教授。その横はDARPAの長官)

Sebastian Thrun教授も、今回のJuniorの走りには大変満足しており、優勝は逃しても前回から大変にレベルの上がった各チームのレースぶりはすばらしいと賞賛した。 同教授の次の目標は、サンフランシスコとロサンゼルス間約500キロをJuniorで完走することで、1-2年のうちにこれを実現したいとのこと。 意外なことに、同方向に何本もレーンが走り、並走車との距離も余裕があるフリーウェイ走行は、30マイルで走行するクルマ同士が対面で(合算すると60マイルの速度で)すれ違う今回のような市街地走行よりずっと易しいそうだ。  

日中は30度を越す暑さの中で、広大な敷地内を移動しながらの観戦、撮影でメディアの方も日焼けしたが、今年一番興味深いイベントだった。 地元のアメリカの取材陣も多く、海外からもドイツ、イギリス、フランス、スペインなど多くのジャーナリストが参加しており、大変盛況だった。

2004年から始まったこのロボットカーのレースは、短期間で驚くほど高いレベルまで技術を高めたようで、DARPAの責任者も大変満足そうであった。 DARPAの直接の目的は、軍事利用だ。 そのホームページでは、たとえばイラクの砂漠地帯での補給や、バグダットの市内での危険なミッションに無人走行車を使って兵士の命を守るのが目的だと言及している。 しかし、一方で、トゥーン教授のように、年間4万人の命を奪っている交通事故を少しでも減らすという目的でこの技術に取り組んでいる人もいる。 同教授の夢は、疲れたときはAuto pilotのスイッチを入れて自宅に到着したら車に起こしてもらうことだ。 単調になりやすい長時間の高速道路走行、ストップ&ゴーの多い渋滞の通勤路、シニアドライバーの安全運転のアシストなどに、こうした自動運転の技術が将来生かされることだろう。  
(完)


(アクセスはできなかったがこんなオフロードセクションもあった)

(DARPAのプレスリリースと最終エントリーの11台を紹介したブロシュアなどは、DARPAのサイトからダウンロードできる(http://www.darpa.mil/grandchallenge/

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