【ツカナ制作所】きまぐれ日誌

ガラス・金工・樹脂アクセサリー作家です。絵も描いております。制作過程や日常の話、イベント告知等。

【自作台本】夢の中事件(後半)

2018-07-13 07:24:03 | 自作台本
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現場にて

友永「清君はここに、どんなふうに倒れてたんだ?」
警官「倒れてた、といいますか・・・正確には、机にうつ伏せになっていました。頸動脈をこう、ナイフで後ろから・・・おえっ」
友永「・・・これは?」
警官「うーん、コーヒーカップですね。刺された時に被害者が床に落として割っちゃったんじゃないかな」
友永「いや、違うな」
警官「えっ?」
友永「カップの破片に血が付着していない。刺されて、血が凝固した後でカップが割れたんだ」
警官「た、確かに!えーっと・・・誰が?」
友永「カップに恐らく睡眠薬でも入ってたんだろう。頸動脈を一刺しで殺すなら、相手が寝ていれば確実だ。彼は成人男性。抵抗されれば、失敗する確率はとても高い。」
警官「なるほど。じゃあ証拠を隠滅するために・・・」
友永「そうなるね。まぁ、憶測に過ぎないが」
警官「じゃあカップを割ったのは・・・犯人!」
友永「いや、そうじゃないと思うね。殺人を犯した人間が、用事も無いのに血が凝固するまでここに居座ってから、証拠隠滅のためにカップを割ったと?」
警官「・・・変ですなあ」
友永「僕ならとっとと出ていくよ・・・なんだい白樺君」
白樺「いえ別に」
警官「指紋を調べれば、割った犯人が分かりますね!」
友永「君は鑑識じゃないんだろう?」
警官「はい!しかし本官、カガクソーサに憧れてまして・・・この通り、指紋採取セットを常備しているんです!他にもルミノール反応セット、硝煙反応検査セット・・・なんですか白樺さん」
白樺「いえ別に」
警官「ちょちょいのちょい・・・と。うーん、指紋は二人分ですね。後で皆さんから指紋を取らせてもらいます!」
白樺「あの、先生」
友永「なんだね」
白樺「これ、スタンガンですよね」
友永「そのようだな。どこにあったんだい」
白樺「ゴミ箱の中に」
友永「君は本当に優秀だな。」
警官「ほい!指紋採取は本官が!・・・あるぇ?指紋がついてない・・・」
友永「なるほどな・・・」

遠くから富士見の悲鳴。叫びながら部屋の中に突入してくる

富士見「きゃーっ!きゃーっ!」
白樺「(無言ビンタ)」
富士見「ひぅっ・・・あ・・・ありがとう?」
白樺「取りあえず座って、落ち着いて何があったか話して下さい」
富士見「あの・・・私、北条さんの部屋を見てたんだけど・・・マットレスの間からこれが」

富士見、右手に持っていた血の付いたナイフをつまみ上げる

警官「きゃーっ!」
白樺「(無言ビンタ)」
警官「いたいっ!」
友永「今のところ、これが凶器の可能性が一番高いな」
警官「でしょうよ!」

部屋に全員が集まる

柴田「な、なんだどうした」
山田「どうしたんですか、今悲鳴が」
北条「・・・。」
御影「どうかなさったの?・・・きゃー」
警官「(叫びかけた御影と、右手を上げた白樺の間に割ってはいる)はいはいはい、大丈夫です落ち着いて。ただ北条さんの部屋のマットレスの間から、血の付いたナイフが出てきただけですから」
北条「・・・うふふ・・・アハハハハハハハハ!やっぱりそうだった!」
警官「ひっ・・・北条さん」
北条「私がやったんだ!一年生の時、学校で人の物を盗んでいるところを仙台先生は録画してた!それからずっと私は先生に・・・あいつに金を払い続けてきた!バイトしてバイトしてバイトして寝ないで食べないで・・・こんな目にあって当然だったんだ!アハハハハハハハハ!」
白樺「北条さん・・・(北条にビンタを食らわせる)」
北条「ふぐっ・・・うう・・・」
警官「や、やれやれやれ、今のは自供ってことでいいのかな。いかんマニュアル、マニュアルどこいった」
友永「ちょっといいかね」
警官「あ、どーぞ」
友永「まず皆の指紋を採取してくれ」
警官「はいはい失礼しますー(手早く全員から指紋採取)」
友永「カップの指紋と照合してくれ」
警官「出ましたー・・・あら?これ、ふつーに御影さん、奥さんと、被害者の指紋じゃないですか」
御影「そのコーヒーを淹れたのは私よ?」
警官「なら着いてて不思議は無いわけだ。北条さんの指紋は無いじゃないですか。」
友永「凶器はどうなんだい」
警官「はいはいただいまー・・・あらら、これにはハッキリ北条さんの指紋、あと柄の下のとこに富士見さんの指紋・・・」
富士見「わ、私はやってないわ!」
柴田「んなこと分かってんだから『いかにも怪しい女』の演技なんかしなくていいんだよ」
友永「カップには指紋が付いてなかった。拭かれた跡も無かった。つまりカップを割ったのが北条君なら、彼女はその時手袋をしていたわけだな」
警官「そうなりますね」
友永「しかし凶器のナイフには、北条君の指紋がハッキリついている。なぜだろう。人を殺す時、入念に手袋と凶器を準備していたにも関わらず、手袋をせずに証拠を残すなんてことがあり得るのだろうか」
警官「北条さんはとんでもないウッカリさんだったんじゃないですかね」
友永「凶器には指紋を残したままなのに、コーヒーカップは割っておいたというのかい?」
警官「うーん・・・おかしいですね。どうなんですか北条さん」
北条「え?」
警官「なんで手袋持ってたのに、それをせずにナイフで先生を刺し、それから手袋をしてコーヒーカップを割ったんですか?」
北条「・・・私は・・・。分からない」
警官「分からないなんておかしいですねえ。だってあなたがやったんでしょう?」
北条「そうなんだけど、何も思い出せない・・・」
友永「そう・・・あなたは最初からそう言うべきだった。『何も思い出せない』・・・と」
警官「ど、どういう意味ですか。」
友永「彼女が犯人じゃないんですよ」
警官「・・・へっ?」
友永「実際何があったか、ちゃんと話してください」
北条「私は・・・あの時、先生の部屋に言って、私が泥棒してたって証拠を消してくださいって言いにいったんです。そしたら先生は寝てて・・・その後の記憶が・・・」
友永「無いなら話さなくていいんだ。原因は分かっている。その後は?」
北条「気付いたら、私は血の付いたナイフを持って床に倒れていました。私がやったんだと思って動揺して・・・逃げました」
友永「ナイフは」
北条「覚えてない・・・動揺してて・・・」
警官「カップは?」
北条「床で割れてました」
警官「ほんとに?自信ありげですね」
北条「あの部屋の光景、網膜に焼き付いてしまったかんじなんです。恐い・・・」
友永「マットレスの間にナイフを隠したのは君なのか」
北条「・・・そのはずですけど」
友永「君は馬鹿なのかな。もう一回聞く。ナイフをマットレスに隠したのは君か」
北条「・・・違います。記憶に無い。でも!私以外に誰がそんなことできたんですか。部屋にはいつも鍵をかけてたのに」
友永「いるだろう一人。君の部屋の・・・いや、この家の鍵を全部開けられる人間が。」
御影「あたしっ!?」
友永「しかしまだ不完全な部分がある」
御影「ちょっと待ちなさいよ!あたしを犯人呼ばわりしておいて・・・」
友永「いや、あなたはカップを割ってナイフを隠しただけだ。」
御影「え・・・そ・・・割ってないわよっ!隠してないわよ!」
友永「割っていようが隠していまいが、今は関係ない。」
御影「そう・・・割ってないですからねっ!?隠してもないですからね!?」
友永「問題は誰が清君を殺したか。北条君の記憶に穴があるのには、ちゃんと理由がある。スタンガンが見つかったんだ。おそらくそれで数分間気絶させられていたのだろう。犯人はスタンガンで北条君を気絶させた後、手袋をして清君を殺し、凶器を北条君に握らせた。北条君、君はさっき、清君に窃盗がバレて脅迫されてたと言ったね?」
北条「はい・・・」
友永「詳しく話してくれ。メールか?手紙か?」
北条「手紙、です」
友永「署名があったのか?つまり、君は脅迫者が清君であると知ってたのか?」
北条「いえ・・・誰かは分かりませんでした。手紙で指定された口座に、毎月口止め料を払っていました。懇親会の案内が届いたとき、その筆跡が脅迫者の手紙とそっくりで・・・それで、私を脅迫してたのは仙台先生だったんだなって・・・」
友永「(指パッチン)白樺君」
白樺「はい」
友永「僕のところに来た清君からの案内状をくれ」
白樺「はい。」
友永「これを見てくれ。これは間違いなく清君直筆だ。」
北条「これ・・・違います。あの字じゃない」
友永「そうだ。仙台清は教え子を脅迫するタイプの人間ではない」
警官「あのぅ、本官には何のことやらサッパリ・・・」
友永「君の窃盗を目撃、記録して君を脅迫したのは清君ではなかった。君への案内状を書いたのも清君ではない。案内状を書いたとなると一番可能性があるのは御影さんだ」
御影「あたし知らないわよっ!」
友永「だが彼女は大学関係者ではない。僕が犯人だと思っているのは・・・いや、確実しているのは、彼女の同期である山田君、君なんだがね」
山田「え?・・・い、いやだなあ急に・・・何言ってるんですか」
友永「北条君には、清君を殺す動機がある。それを知ってる可能性がある人間は・・・つまり、北条君が窃盗するところを目撃できた可能性がある人間は、この家では清君と山田君だけだ。富士見さんと柴田君は、すでに卒業生だからね」
山田「発想がさっきから飛躍しすぎなんですよ!なぜ俺が仙台先生を殺さなきゃいけないんですか!」
友永「そう、君には動機無い」
山田「当たり前だ!」
友永「だが君が犯人なんだよ。柴田君、さっきの部屋の捜査の時頼んだもの、あったかね」
柴田「あ、あぁ・・・これか」
山田「俺の大学ノート!」
友永「この字、見覚えありますか」
北条「これ・・・あの字だ・・・山田ァ!(掴みかかる北条を富士見が後ろから捕まえる)離してください!」
富士見「だめ!だめだよ!」
白樺「大人しくしてください」
北条「・・・。」
友永「これではっきりしたことがあります。脅迫者の正体は山田君。カップを割ったのとナイフを隠したのは御影さん」
御影「やってないって言ってるでしょ!」
友永「じゃあ誰がなぜ清君を殺したのか。・・・柴田君、山田君の部屋からもう一つ持ってきてもらったものがあるはずだが」
柴田「あぁ。これか」
山田「俺の預金通帳!」
友永「毎月十万円が振り込まれているのは北条さんからでしょう。」
北条「・・・っ」
友永「そして最近、三十万円が振り込まれている。これは依頼金だと、僕は考えているんですよ」
警官「依頼?まさか、殺人!」
友永「そうだ。振り込んだのは恐らく御影さん。山田君と御影さんはどこかで繋がってたんだ。それで今回共謀してこんなことをやった。」
御影「知らないわ!そんな・・・そんな・・・」
山田「こんな早くバレるなんてザマ無ェな」
御影「和樹!」
山田「そう、俺がやった。このばーさんに金もらってな」
御影「あなた・・・私のこと愛してるって言ったじゃない!」
山田「金をくれるからな。あんた本気で、先生殺した俺と結婚するつもりだったの?引くわー」
御影「・・・あんたなんか嫌いよっ!」
山田「俺もあんたが嫌いだったよ」
警官「あ、今のは全部自供ってことでいいんですよね!逮捕する!犯人は山田だ!」
柴田「知っとるわ」

暗転
柴田と友永

友永「飯田君は合格なんですか」
柴田「ありゃ駄目だ。俺が元上司なことにすら気がつきゃしねぇ。注意力散漫なスットコドッコイだ。熱意は買うが向いてない。」
友永「彼は科学捜査に興味があると言ってたね。指紋の採取も早かった。彼は鑑識のほうが向いてるんじゃないかね」
柴田「俺もそう思うよ。奴に試験を受けてみないか声を掛けてやるとするか」
友永「血は苦手だそうだがね」
柴田「なんだそりゃ」



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