又も今は無き奥村書店で買った古本『謎解き問答「親鸞」』。親鸞に関する本は、もう買うまいと思っていたが、チラッと拾い読みして、150円くらいだったので、買ってしまった。
この本は、今までの親鸞本とは趣を異にして、実に面白い。今までの親鸞本は、「実証主義的歴史学」に則り、明治後期以降、親鸞の曾孫・覚如の製作した「親鸞伝絵」と親鸞の妻の手紙「覚信尼消息」がベースになっている。これは、本願寺ペースで、「東国初期教団に伝わる、親鸞の重要な史実や伝承は、明治以降の近代実証主義の圧倒的潮流の中で、歴史の片隅に追いやられ、ついに黙殺されてしまった」。そのため、この本の根拠となる『親鸞上人正明伝』(存覚著)は偽書とされてしまった。
著者は「①なぜ、20年修学に励んだ比叡山(天台宗)を捨てたのか。②なぜ、吉水の法然のもとを訪ねたのか。③なぜ、肉食妻帯といわれる結婚生活に踏み切ったのか」の「決断の経緯や動機が記されていることが、親鸞の伝記で必須の要件となってくる」と言い切る。
結論を急げば、今の本願寺派は、対立する東国高田派との関係を否定するため、親鸞の最初の妻「玉日」の存在さえ否定した。今の本願寺は東国(=茨城県笠間)の寄進によって存立したのに、そのことはすっかり忘れたかのようである。本来なら、我ふるさと茨城の笠間に本願寺があってしかるべきで、京都のど真ん中に親鸞ゆかりの寺が鎮座しているのは笑止千万である。
著者の佐々木正氏は、公務員を経て、長野県の寺の住職になった珍しい経歴の持ち主。それがゆえに、親鸞研究でタブーとされた『正明伝』を本物と断定する勇気が持てたのだろう。そんな荒唐無稽?な事実を知るだけでも痛快である。
韓国、中国との歴史認識で、たびたび、「歴史の真実」が話題になるが、歴史は所詮、その時代の権力者の都合で書かれていると言うのが事実ではないだろうか。中国の歴史なんかはその典型。韓国だって、伊藤博文の暗殺者を歴史の英雄に仕立て上げているが、事実とは違うようだし。領土問題も然り。