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食・酒・旅 ネクシャリスト2

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ドン・キホーテとセルバンテス

2015年08月22日 | 本と雑誌
畑谷史代『シベリア抑留とは何だったか』の詩人・石原吉郎から偶然始まった「みちのり」は「ドン・キホーテ」に進み、京橋図書館で借りた『ドン・キホーテとセルバンテス』(会田 由・牛島信明/編著)でクライマックスを迎えている。

会田も牛島も故人のようだ。牛島は科は違うが大学の先輩にあたる。辺見じゅんの『ラーゲリから来た遺書』の山本幡男は科の先輩。他にも最近読んだ本にも先輩は登場する。

ドン・キホーテは聖書の次に読まれている世界的ベストセラーだが、きちんと読んだ人は少ないといわれている。当初岩波文庫の第一巻を買ったがストップ。多分次を買う可能性は少ない。でも、岩波少年文庫の牛島信明編訳『ドン・キホーテ』と『ドレの絵で読むドン・キホーテ』を買う。編訳者のヴィルジリ・クリスティーナ・幸子も東京外語卒で、牛島の薫陶を得ていたようだ。

会田・牛島の著の後編では、「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と呼ばれていた善人が、大往生によって「アロンソ・キハーノ」に戻る場面、証人を「シーデ・ハメーテ・ベネンヘヘーリ」(セルバンテスは『ドン・キホーテ』はこのアラビア人の手になるということにしている)依頼する行がある。そこで紹介される同郷の詩人サンソン・カラスコ碑銘がある。

        勇ましの郷士ここに眠る、
        きわまれるそれが勇気は
        死の神も君が生命を
        死をもってかち得ざりしと、
        世の人は語りつたえぬ。
        ありし日は世界を蔑(なみ)し
        世をあげて君をおそれて
        ひたぶるに怖気(おぞけ)ふるいぬ
        かくしては幸をえたりき
        狂人として世を送りしが
        正気に復してみまかれり


ここで、改めて石原吉郎に戻る。なぜ彼が「サンチョ・パンサの帰郷」を書いたのか。
ドン・キホーテの3度に亘る「帰郷」もあるだろうが、牛島が書の後半で書いている「セルバンテスの生涯」にあるのではと思わざるを得ない。1571年、トルコ艦隊とキリスト教連合艦隊が闘った世界史上3大海戦のひとつ「レバントの海戦でスペイン艦隊での一員で活躍し、片手を失い、その後帰還を目の前にして、海賊に北アフリカに連れ去られ、4度に亘る脱走にも失敗し、結局キリスト教神父に身請けされ帰国。しかし帰国後も昔の奴隷仲間達には裏切られる。そんな数奇なセルバンテスの生き様、不屈の生き方をもって、ドン・ホーテ」より「セルバンテス」その人に思いがダブったのではないだろうか。

セルバンテスは当時流行の騎士道をパロディー化することで、正義なんてない、あるのはエゴ、でも信頼できる数少ない人を信じて人生を終える。そんなことを言いたかったのではないか。

正直者が馬鹿を見るいまの世の中と闘う自分が正しいのか?戦争を生き抜き、飛行機乗りで活躍し満州から帰国した父親。その後なぜか中央に復帰せず、田舎で暮らした父親の後半生が思い浮かぶ。

これからも、しばし、セルバンテスとドン・キホーテに傾倒する日々が続く。

因みにセルバンテスは1547年生まれ。私の400年先輩だ。






石原吉郎の詩

2015年08月01日 | 本と雑誌
石原吉郎詩文集(講談社・文芸文庫)を買う。
勿論『シベリア抑留とは何だったのか』(畑谷史代著)からだ。

以下は、石原の有名な詩。ファンも多い。私も好きな詩だ。

     居直りりんご


     ひとつだけあとへ
     とりのこされ
     りんごは ちいさく
     居直ってみた
     りんごが一個で
     居直っても
     どうなるものかと
     かんがえたが
     それほどりんごは
     気がよわくて
     それほどこころ細かったから
     やっぱり居直ることにして
     あたりをぐるっと
     見まわしてから
     たたみのへりまで
     ころげて行って
     これでもかとちいさく
     居直ってやった


解説によれば、「石原吉郎の詩の特徴のひとつに、比喩の両極である隠喩(メタファー)と換喩(メトミー)のうち、換喩によって全体を比喩すというのがある」。

上記の詩のほか、「サンチョパンサの帰郷」「自転車にのるクラリモンド」もいい。

おまけだが詩文集に紹介されている,ヤセンスキイの詩もいい。

     敵を恐れるな ー やつは君を殺すのが関の山だ。
     友を恐れるな ー やつは君を裏切るのが関の山だ。
     無関心なひとびとを恐れよ ー やつは殺しも裏切りもしない。
     だが、やつの沈黙という承認があればこそ、
     この世には虐殺と裏切りが横行するのだ。





シベリヤ抑留記再び

2015年07月18日 | 本と雑誌
この時期になると、本屋は一斉に「戦争」ものを並べる。

特に今年は、「戦後70年」と「安保」のせいか、いつもより目立つ。お笑い芸人の〇〇賞受賞も騒がしい。
『日本はなぜ、、、』の本の中で、同じ敗戦国のドイツと日本の違いを見事に喝破されたのが頭に残っていた時、『日本とドイツ ふたつの「戦後」』を見つけて即買い。普段なら、多分買わないと思う。これが意外と面白い。来月来るドイツ人との話には格好のネタだが、英語で表現できるかが問題。

今日も八重洲ブックセンターに行く。テレビで見た、長田弘の詩集を買いに行ったのだが、『シベリアとは何だったのかー詩人・石原吉郎のみちのり」(畑谷史代著)を立ち読みし、即買い。

シベリア抑留の経験者という点では、『収容所から来た遺書』の山本幡男を思い出せる。山本とは違い、石原は日本に帰還するのだが、また、別の苦労に苛まれる。両氏とも今の東京外国語大学の先輩である。

一気に読み終える。

予てより、戦争の悲惨さ、スターリンによる、非人間的シベリア抑留には、どのような法的正当性があるのか思っているので、つい買って、読み終えた。

今、日本は集団的自衛権とかで騒がしいが、確かに日本は守るべきだが、誰が守るのでしょうか。増してや、アメリカのために犠牲になる日本人がいるのでしょうか。

本当に、日本は同じ敗戦国ドイツに大きく水をあけられてしまった。国連の常任理事国なんて、絶対不可能なのに、能天気。




食・酒・食のネクシャリスト推薦☆新富町『蛇の目寿司本店と松本清張

2015年06月14日 | 本と雑誌
この間テレビで『砂の器』を見た影響か思い立って何十年ぶりに松本清張を読んでいる。おかげで読みたい本が読めない。

『点と線』、『眼の壁』、『影の地帯』、『渦』、『蒼さめた礼服』と立て続けに読む。小説は基本的に買わないので、中央区図書館の新潮文庫。しばらくはお世話になるだろう。

清張の本はやはり面白く、読み出したら止まらない。しかし如何せん時代的には古いので、懐かしい反面、ちょっと戸惑いも感じる。

『渦』だったか、化粧品メーカーで「ミュゼ」とうのが出てきたが、今電車の中で宣伝している会社と同じだが、不思議な一致?。『渦』は「視聴率」の実態を暴く内容だが、今でも500軒くらいの家庭に機械を置いてやっているのだろうか?自分もかねがね疑問に感じているテーマだ。

中央区図書館は銀座のはずれ、一丁目か2丁目にあるのだが、眼と鼻の先は新富町になる。先週理由あって、夜2回ほど『蛇の目寿司 本店』というすし屋にお邪魔した。
ご夫婦でやっている老舗すし店だが、下町・地元のすし店の風情で、気楽な大将が握り、コースのつまみは女将さんが決めるという。「うちはカラオケは無いが」と言って後ろの棚から「うちはスシオケ」と言って笑うようなオヤジ。同世代かと思ったが少し年下の3代目。東京にも同じノレンが出ているが、勝手に出しているのもあるとか。(戦災で分からなくなってしまった由)。

店はいつもそれほど混んでいない。喫煙なので、隣で吸われるといやだが、その意味では混んでいないのはありがたい。

一人でたまにぶらりと立ち寄りたい店。今度はお好みでゆっくり食べたい!

昼間近くを通ると、格調高い雰囲気の構えの寿司店が最近オープンした。だれだかのブログを読むと、超高級寿司店で、ご主人は「橘町都寿司」出身と書いてある。にわかに信じがたい。

Money / The Unauthorised Biography 【21世紀の貨幣論】再読

2014年12月21日 | 本と雑誌
       【予告】大坂屋2015年1月営業再開予定

経済関係の本なのにとても面白くて再読。

なぜ面白いのか?まずは、絶妙な各章のタイトル付け(訳)、読みやすさ。

勿論内容面でも、、、。
特に読んでよかったところは、

第12章「王子のいない『ハムレット』-マネーを忘れた経済学ー」
284ページ 【女王エリザベス2世の質問】
リーマン・ブラザーズの経営破綻直後発した質問「なぜ誰も危機が来ることわ分からなかったのでしょうか」。英国学士院の答え「つまり陛下、さまざまな要因があったにせよ、国内外の多くの優秀な人々の想像力を結集させても、システム全体のリスクを理解できなかったことが・・・危機を予測できなかった主な原因です」。

288ページ サマーズが参考にした四人の経済学者。現代マクロ経済学は全く役にたたず、異端視された貨幣経済論のハイマン・ミンスキー、出来の悪い経済史家チャールズ・キンドルバーガー、経済学者から経済学者と認められなかった金融ジャーナリストのウォルター・バジョット。それぞれ19世紀、20世紀の古い時代の無名に近い思想家だったという話。偉い男だ。

よく、新聞等でよく「シニアエコノミスト」とかいう輩が出てくるが、彼らは現実に対して全く無力なのに、偉そうにして、高給を取っている。おバカさん。特に外資系は最低。

と言うわけで、『熱狂、恐慌、崩壊ー金融危機の歴史』(キンドルバーガーー、アリバー)と『ロンバード街』(バジョット)を買う。

しばらくの楽しみができた。