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源義経黄金伝説■第57回

2012年08月27日 | 源義経黄金伝説
源義経黄金伝説■第57回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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■ 1189年文治5年 平泉王国 
  
 平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。
源頼朝と大江広元である。

 文治五年(一一九六)八月二二日、頼朝の「奥州成敗」で、実質上日本統一がなったといえる。大和朝廷の成立後も奥州は異国であり、異国であり続けた。

 二人は、中尊寺のところに来ていた。この寺跡は焼け残っている。見上げる
頼朝は、感動していた。
「おお、広元、この平泉王国の富、さすがというべきか」
「ははっ、聞きしに勝る都城でございます」

 西行がいった通りだと頼朝は考えていた。
平泉は仏教王国だった。

なにしろ、源頼朝は、伊豆に流されて以来、毎日毎日読経ばかりだったのであ
る。心根に仏教教典が染み付いている。空で経文がいくらでもいえるのだ。
 奥州藤原氏に対するやっかみの心が、頼朝に擡げてきた。

(こやつら奥州藤原氏にだけは、負けたくない。私が日本の統一者だからだ。
私が日本一の武者の大将なのだ。それならば、私の町鎌倉にもこのような寺が
必要だ。)

「このような寺を鎌倉に作るのじゃ。鎌倉が、都や平泉に劣ることあれば、わ
れらが坂東武者、源氏の恥じぞ。この平泉におる職人共をすべて鎌倉に連れ帰
り、寺を建てるのじゃ」
「心得ました。この平泉にある寺の縁起、すべて書き出し、我が手に提出致し
ますよう命じてございます」

 頼朝の願いどおり『鎌倉には、平泉の寺院を模倣した寺が建てられた』が、
それは平泉には及ばない。所詮は、平泉の寺院のコピーでしかないのだ。コピ
ーは本物をこえることはできない。

 やがて、頼朝は、目下気になっていることを聞いた。
「泰衡が弟、忠衡、発見できぬか」
「いまだ発見できませぬ」広元は残念そうに答えた。
「ええい、忠衡がおらねば、黄金の秘密一切わからぬとは」

  古代東北の地、中でも気仙地方は、世界でも最大級の豊かな金鉱を有して
いた。今出山金山、氷上山の玉山金山、雪沢金山、馬越金山、世田米の蛭子館
金山などである』
頼朝はいらついている。
(この国を攻めたは、実は奥州黄金を手に入れることぞ。この国の王には黄金
が必要なのだ、あの京都を凋落するのは黄金が一番なのだ)
「国衡も見つからぬのか」
「いまだに姿が見えませぬ」
「ええい、国衡もいないとならば、奥州の金を手に入れたことにはならぬ。さ
れば何のための奥州征伐ぞ」

怒りの目で、頼朝はあちこちを見回している。その時、何かがキラリと光り
頼朝の目をいた。
「あれは…」
 頼朝が、小高い台地にある焼け跡に目を移した。
あきらかに何ヵ月か前の焼け跡である。

二人は高館の跡まで馬を走らす。

「この場所が、義経殿が最期を遂げた場所でございます」

 広元が冷静に告げていた。
「義経が死に場所か……よし、少しばかり見て行くとするか」
 その頼朝の目には、涙がにじんでいる。頼朝は馬を、その台地に乗り上げ、
ゆっくりと馬から降りた。その場所から崖が北上川へと急に落ち込んでいて、
東稲山も間近に見える。頼朝はその風景を見ながら思った。

「目の前のあの山が東稲山でございます。西行殿が愛でた桜山です」
(義経、なぜ私の言うことを聞かなんだ。俺は武士の世を作ろうとしたの
だ。それを後白河法皇などという京都の天狗に操られよって…。我が兄の心
根、わからなんだか。やはり母親の血は争えぬか)
頼朝は母常盤の血を引いていた、やさしい、さびしげな義経の顔を思い浮かべ
ていた。
(あのばか者めが…)

太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。

これは…。

頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。

それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。
見覚えがあった。

「大殿様、その像は…」
 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法
師の顔と話を思い起こしていた。

「西行め、こんなところに…、やはり」
 頼朝は悔しげに呟いている。
「では、その猫の像は、あのおり西行にお渡しなされたものではございます
か」
「そうだ」
「やはり、西行は後白河法皇様のために…」

「いや、違うだろう。西行は義経を愛していたのであろう。まるで自分の子供
のようにな…」
 頼朝は遠くを思いやるようにぽつり述べた。広元はその答えに首をかしげて
いた。

思い出したように源頼朝が告げた。
「平泉中尊寺の寺領を安堵せよ」源頼朝は急に大江広元に命令を下していた。

頼朝は信心深い性格だった。三二歳で伊豆で旗を揚げるまで、行っていたこ
とと言えば、源氏の祖先を祭り、お経を唱えることだけだった。
まさに、日々、お経しか許されていなかった。毎日十時間の勤行は、頼朝の
心に清冷な一瞬を与えていた。神、仏が見えたと思う一瞬があるのだった。こ
の一瞬、頼朝は思索家と思えるものになっていた。

頼朝は、自らの行っている幕府作りが日本の歴史上、大きな転換点になると
は考えてもいる。
板東の新王、ついに平将門以上の存在になった。

源氏の長者が、何世紀にもわたって成敗できなかった奥州も我が手にした。
彼の考えていたのは、武家が住みやすい世の中を作ることのみであった。
第6章  1189年(文治五年) 平泉

■7 1189年文治5年京都

 京都の後白河法皇御殿にも平泉落城の知らせが届く。

「頼朝、ついに平泉へ入りました」
関白,藤原(九条)兼実が後白河法皇に悲しげに報告した。

「そうか、しかたがないのう。平泉を第二の京都にする計画潰えたか。残念じ
ゃのう」
「せっかく夢を西行に託しましたが、無駄に終わりました」
「が、兼実、まだ方法はあろう」
後白河は、また、にやりとする。
「と、おっしゃいますと…」
 不思議そうに、兼実は問い返す。

(いやはや、この殿には…、裏には裏が、天下一の策謀家よのう。平泉を第二
の京都にできなかったは残念だが、次なる方策は)

「鎌倉を第二の京都にすることじゃ。源氏の血が絶えさえすれば、京に願いを
することは必定。まずは頼朝を籠絡させよう。さらに頼朝が言うことを聞かぬ
場合は…」
後白河の目は野望に潤んでいる。

「いかがなさいます」
「義経が子、生きていると聞くが、誠か」
「は、どうやら、西行が手筈整えましたような」

「その子を使い、頼朝を握り潰せ。また、北条の方が操りやすいやもしれぬ。
兼実、よいか鬼一法眼に、朕が意を伝えるのじゃ」
笑いながら、後白河は部屋に引き込んだ。兼実は後に残って呟く。

「恐ろしいお方じゃ」
兼実は背筋がぞくっとしている。

(続く)
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