裏やまちゃんchronicle

日常も非日常もまだまだ続きます。

鱗と眠気の関係は

2006年09月05日 | “I”novel
新宿・・・八王子・・・
甲府を通り過ぎた記憶はない。
車掌に起こされた時には、目的地に着いていた。
鱗仲間の伊藤さんも、車掌に起こされていた。
伊藤さんに、
“顔に寝ぐせが、ついています。”
と、冷静に指摘されて我にかえった。
“涼しいですね。”
“そうですね。”
伊藤さんの頭の中には、鱗の事しかないだろうから、それ以上は話かけなかった。
チェックインして、最上級の部屋に案内された。
“わー、、、凄い。
私のマンションの何倍だろう。”
“うちだって、そうですよ。”
冷蔵庫の飲み物は飲み放題、
お菓子も食べ放題らしい。
すぐに、夕飯がぞろぞろと出されてきた。
多分、現代風の懐石料理というモンなのだろう。
“すごいねー。”
“すごいよねー。”
黙々と、消化していく伊藤さんと私。
デザートを食べ終わった時、伊藤さんが、
“でも、野沢菜が一番、おいしかった。”
と、言った。
私もそう思ったけれど、私はお金を払っていないので、
“So do I”
と、控えめに、言ってみた。
“そうだ、伊藤さん。
私ね、温泉に泊まる時にはね、ラップと海苔と、お塩と梅干を、必ず持って来るんです。旅館によって様々ですが、今日みたいにごはんがお櫃に入って来る時は、大体ご飯って残るので、おにぎりを握るんです。
おにぎりを作っておきますね。”
“えー、すごいね。”
伊藤さんは、私が取り出したラップや海苔やお塩をもの珍しそうに、眺めた。
“いいえ、私は、だめだめ女です。
子供は産めないし、料理は好きではありません。
でも、おにぎりだけは自信があります。”
“冷蔵庫に、野沢菜が入っているよ。”
冷静だった伊藤さんが、ちょっと嬉しそう、よかった。
“ここにラップでくるんでおいて置きます。
温泉は、夜中から明け方前の、人が少ない時が良いと思います。”
“僕もそう、思います。
仮眠をとるのは危険だと思うので、起きて待っています。”
“はい、仮眠はだめです。”
でも、と、私は続けた。
“あずさ号であれだけ寝たから、夜中まで起きていられますよね。”

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