毎日の練習 その二(受験生諸君の参考までに)
2007年9月15日
大学全入時代を迎えようとする今、京芸を受験しようと計画してくれている人たちがいてくれること、感謝なことだと思う。
受験生諸君には、ぜひその素質を全開にして実力を100%発揮していただきたいと願うばかりだ。
その素質を花開かせるためには、やはりその人にあった最適な練習方法を知って実行する事が大切だ。方法が間違っていたり、無駄が多かったら、能率はあがらない。結果的には試験に間に合わない。
日本の大学は「入るに難く、出るに易い」とよく言われる。私もそのとおりだと思う。そして、それはよくないことだと思う。しかし、私個人の努力でその現実を改革することはできない。
難しい入試を突破しなくては、京芸で打楽器を勉強することはできない。
入試は必要悪とまでは言えないが、受験生にとって大問題であることは間違いないだろう。
とにかく全力をあげて、突破をめざすしかない。門はたたかないと開かないのだから。
しかし、京芸の打楽器専攻の入試、ちゃんと素質がある人が、きちんと努力したら、その要求するレベルにはちゃんと到達できるものだとは断言できる。決して夢物語ではないはずだ。
ぼくの場合、受験生時代、小太鼓の練習は一日1時間以内というルールを自分に課した。(土日も例外なしに一時間に限定した)それは、他の分野、ソルフェやピアノ、英語などに時間をしっかりとるためだった。
それに、土日は散歩とか読書に時間をとりたかった。灰色の受験生生活はイヤだったんだ。
さすがに今の京芸の入試を突破するには一日一時間の練習では少し足りないと思う。
しかし、入試突破のためだけにだったら、一日二時間もかければ十分なはずだ。
それで、今度の11月発表の課題曲をこなせないなら、残念ながら基礎力が足りなかったか、打楽器に向いてないかだと思う。
ところで、ぼくのケースに戻るけど、ぼくは一日一時間の練習の中で、30分は基礎練習だけに費やした。
そして、エチュードや曲には残りの30分を充てた。
実はこれが高一の11月から太鼓を始めて、けっこう短期間で入試レベルまで実力を引き上げる事ができた最大の要因だと自分では思っている。
回り道に思えるかもしれないが、基礎練習にしっかり時間をかける事が、上達の早道だ。
このことは、いくら強調してもしすぎることはないと確信する。
さて、
打楽器専攻の入試にはA,Bの二種の課題がある。どちらを選ぶかは任意だ。
昨年度まで、AもBも一日目は小太鼓のエチュードを演奏してもらってきた。次の入試でどうなるかはもちろん未定だ。発表は11月1日ごろだったと思うのでその日を楽しみにしておいてほしい。
さて、小太鼓のエチュード、どんな風にさらっているだろうか?
エチュードをさらうにあたって、浮き足立ってしまうのが一番よくないことだ。
入試ではけっこうな数の課題が出ている。これを一度に全部さらおうとすると、気持ちばかりが焦ってしまって、いい結果は出ない。
一曲にかける時間の上限をまず決めよう。
ぼく的に言えば、エチュード一曲にかける練習時間は15分以内がいいと思う。
昨年までの課題で言えば、どの曲も長くて二分くらいの曲だ。
単純計算でも15分で7回も通奏できる。
もちろん、7回連続で通すのはよい練習方法とは言えない。
まずは最初に曲の最初から終わりまで目を通そう。これで二分。
次にテンポをグッと落として、できれば二分の一くらいに落としてざっと通してみよう。
これで4分だ。合計6分。
で、難しいところ、ややこしいところを、そこだけ取り出して反復練習。
必要な箇所が5箇所あって、1分ずつかければ5分。
これで計11分。
もう一度今度はインテンポで一回通す。
これで13分だ。
残りの二分間、またディフィカルトパッセージをさらう。
というわけで15分で練習完了。
これを三日間続ける。
で、四日目にはもう次の曲に移行する。一つの曲にかける日数は三日までに押さえる。
もし、取り組む曲が10曲あるとすると、
一日目は1番、
二日目は一番と二番、
三日目は一番、二番と三番、
四日目は二番、三番と四番っていうぐあいにローテーションする。
たとえ三日間で仕上がらなかった曲でもいつまでも引きずってはならない。
そのときうまくできなかった曲でも、ローテーションが一回りしてもう一度取り組むときには、驚くほど楽になっているはずだ。
とりあえず、三日間かけて、まあまあできるようになったら、70-80点がとれたら、一応満足しておくことだ。
ぼくはこれを、「練習の8割原則」と呼んでいる。
一足飛びに100点満点を狙わない。とりあえずまあまあできるようにして、すぐに次の課題に移る。
何日後かにもう一度取り組めば今度はけっこう楽に85点に到達できる。次のサイクルでは90点だって狙えるだろう。
そんな風にして少しずつ前に進めばいいんだ。
ま、こうすれば常時3曲のエチュードをさらう事ができ、それにかける時間は一日45分だ。
15曲課題曲があっても、15日ごとに一サイクル回れるので課題曲発表から入試までの4ヶ月あまりで8サイクルできることになる。
二日目の課題曲はエチュードではなく、れっきとした独奏曲なので、これはもう少し難しいかもしれない。
しかし、二分程度の楽章が4つくらいしかないので、一日30分もかけて同じような方法で取り組んでいけば、4ヶ月で必ずマスターできる。
要はその日どんな練習をして、何をマスターすべきなのか、その目標とプロセスをしっかり把握して練習することだ。
で、あとの残った45分は、基礎練習に費やしてほしい。
二つ打ちとか、パラディドル、スティックコントロールとかを地道に練習することだ。基礎力の充実なしに実力アップは出来ない。基礎練習こそは最も大切な時間だ。
Aの課題曲で受験する人は小太鼓とマリンバの両方を練習しなければならない。
その場合は、小太鼓の練習を一日45分程度までに抑えよう。30分を基礎練習に、15分をエチュードにあてる。一日一曲ずつ、三日間かけてさらい、4日目には二曲目に移る。15日間で一サイクルだ。
そして、残りの75分をマリンバに充てる。長くても10分か20分くらいの課題曲が一曲しかない。
これを75分ずつ4ヶ月かけてさらえば、たいがいの曲はマスターできるはずだ。
もちろん、75分の内、最低30分は音階やアルペジオなどの基礎練習にあてよう。他の基礎的な曲をやってもいい。
入試というのは、定員もあるし、その日の体調とか出来も関係してきて、実力があれば確実に突破できるとは誰にも言えない。勝負には時の運もある。この点は、受験生諸君に心から同情する。もう少し定員枠があればなあ・・・と思う。
しかし、京芸の入試で要求される実力水準に到達することそれ自体はそれほど難しいことではない。
もし、ぼくのアドバイスのとおり実行してみて、それで入試の日に必要な実力がついていなければ、それははっきり言って受験する事が早過ぎたのか、素質不足だと思う。
非常に残酷な事実だけど、音楽の世界、素質がなければそれを職業にするのはやめた方がいい。
素質があっても努力なしには、この世界でメシを食うのはムツカシイ。
素質と地道な努力、どちらも必要だ。
でも、どんな分野でもそうだよね。
その仕事に向いていて、かつ真摯な努力をしなければ、なかなか快適な職業生活を送るのは難しいものだと思う。
でも、困ったことに、素質ってのはある程度努力してみなければ判断できない場合が多い。
チャレンジしてみないことには、結果は出ない。
でも、あなたが今高校1年生か二年生なら、二年くらいがんばってみたら結果はおのずと出ると思う。
18才前後で何らかの結果が出るとしたら、それはどちらにしても貴重な経験ではないだろうか?
ぜひたくさんの人にチャレンジしていただきたいと願っている。
打楽器は楽しい!オモロイ!ホンマやで!
音楽は楽しい!オモロイ!ホンマやで!
