藪医雑感

つれづれなるままに

医療人として

2008-11-29 | 雑感

 あまりに最近起きた痛ましい事だから、書こうか否か迷った。
 が、 思い切って書いてみる

 先般東京都で妊婦さんが脳出血でお亡くなりになった。
 謹んでご冥福をお祈りする。
 ご親族の心中は察するに余りある。

 全部を聞かせて頂いたわけではないので 軽々にお話ししてはならないのだが、
 記者会見でのご主人の発言は、押さえたト-ンで、
 医師としてではなく一人の人間として心打たれる冷静さであった。

 医療人として2つ お話ししたい。
 1.統計 
 国民衛生の動向という書籍がある。
 毎年なるべく買って読むように心がけている。
 版元は厚生労働省のたぶん下請け会社(関連企業??)でなかなか細かい数字が載っている。
 H18年は1,092,674人の子供が生まれた。
 亡くなった方は1,084,450人 居られる。
 そして 妊産婦の方がH18年は54人亡くなっている。

 数字が一人歩きしてはいけないので少々訂正を。
 双胎(双子さんです)や三つ子も生まれるから出生数=妊娠数ではないのだが、
 概算で出産10万人に対し妊婦さんが4~5人亡くなるのが 日本の現実である。

 私が生まれたのはS35年である。
 実は皇太子殿下の7日前に生まれている。
 この頃の日本の産科の現状は、
 妊産婦死亡率が出産10万に対して120前後であった。

 現在のユニセフ世界統計によると妊産婦死亡率の世界平均は
 出産10万に対し400人である。
 さらに、現在でもヨーロッパ平均では出産10万に対し24人
 アフガニスタンに至っては出産10万に対し1500以上という 
 厳しい医療情勢の国もある。

 日本はやはり安全にお産ができる国であると思う。
 産科の諸先生方、お疲れ様です。私はもう36時間の連続勤務はできません。
 僕が生まれるときに診てくださった真田先生、ありがとう。
 いままで 勤務医時代にすれ違った産婦人科の諸先輩、同僚、後輩諸兄
 胸を張って仕事をしてください。

 2.今回もマスコミには「受け入れ拒否」のお言葉が踊った。
 「拒否」 という 言葉の選択はいかがなものかと思う。
 僕は理系です。
 現代国語は必修しか勉強してません。
 古典は高3の時に授業があったか記憶がありません。
 でも 拒否 じゃないでしょ 「受け入れ不能」 なんだと思う
 文系の皆さん もう一回単語の意味をおさらいしてください。