藪医雑感

つれづれなるままに

インフォームド・コンセント

2008-03-30 | 雑感

 電子版広辞苑より

 下駄をあずける:全てを相手に頼んでその処理を一任する

 電子版 コンサイス英和辞典より

 shared responsibility : 分かちあう 責任

 「インフルエンザ・ワクチンを打たないで」

 という タイトルの本が書店に並んだそうです

 医療版「かってはいけない」 でしょうか

 内容は 人づてで 私 読んでいないので 評価はしませんが、

 ちょっと 過激なタイトルです。

 毎年のようにインフルエンザは流行し、10-11月に ワクチン接種

 1-2月に 学級閉鎖で いたちごっこが続きます。

 でも 総括して今年の流行は小規模でよかった

 私は、一昨年のシーズンから、ちっぽけな個人的な理由で、
 抗ウイルス剤「タミフル」を極力処方していませんでした。

 昨年のシーズンではタミフルを処方したのは2名。

 いずれも 高齢女性で、喫煙者で、慢性的な呼吸器疾患をお持ちの患者さんに
 処方し、他の高熱を伴う患者さんには抗インフルエンザウイルス剤「リレンザ」を
 処方していました。

 幸い タミフル処方の2名の高齢女性には異常行動は出なかったようですが、
 昨今の事情で、今年はリレンザ処方の有無に拘わらずインフルエンザ罹患中は
 異常行動が起きないか十分に検討されるべきでしょう。

 院長注:未成年者はインフルエンザ罹患後は2日間1人にしてはいけないと、
 その筋のお達しです。高校卒業後も未成年ですから要注意です。

 さて なんでもかんでも インフォームド・コンセント のご時世ですので

 インフルエンザの患者さんには「抗ウイルス剤使いますか?」 と聞きます。

 軽症の方には 「必要ないな、安静だけでいけそう」と思っていても

 そして

 頭痛発熱でつらそうな患者さんには「使った方が良さそうだな」と思いつつ

 「どうされますか」 と聞きます。

 ことし 最も注意したのは患者さんへの意思確認です。

 薬を使う気がない患者さんへの処方は、資源の無駄とお互いの意思疎通を
 欠きますから、私が最も回避したい状況です。

 でも今年は ほとんどの患者さんから抗ウイルス剤使用の意志をお伝え頂いた。

 でも、逆に あんまり質問されなかった気がする。

 「どうしたら良いでしょうか」と。

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 第19回上記AIDSシンポジウムでは 

 HIV感染者であることをカミングアウトした川田龍平参議院議員と

 元厚生官僚の郡司氏が同席しました

 10年ぶりです

 下記引用:第19回日本AIDS学会学術集会シンポジウム抄録より

 インフォームド・コンセントの危険性

 インフォームド・コンセントは治療法に対してある程度、情報が蓄積されている
 場合には大変良い手段です。
 ところが薬害AIDSのケースのように、予想外の出来事が起きてくる場合や、
 開発されたばかりの薬で効果も副作用も予測が難しい場合など、
 専門家の意見すら分かれている場合には有効とはいえません。

 なによりもBESTと考えられている治療法に問題が有りそうなことが
 次第にわかってきた時に、いつ、誰が、どのような根拠で、その治療法を中止するか。

 きっちり考えておかないと、同じ事がくりかえされます。

 そして、そのリスクを評価する立場の人は責任を免責する必要があります。

 リスクを評価する立場の人間が責任を問われる体制では
 ノンリスクにばかり走ってしまいます。これは司法の独立を同じです。

 責任の追及を厳しくすれば、規制が厳しくなります。

 被害の補償は裁判という方法しかなくなり、時間もかかり、対立のみ残り、
 真実が見えなくなります。

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 日本には 「下駄を預ける」 って言葉があります。